内藤陽介 Yosuke NAITO
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 郵政博物館オープン
2014-03-01 Sat 11:28
 昨年8月に閉館した逓信総合博物館(ていぱーく)の所蔵品を引き継ぎ、世界の切手33万種や、郵便・通信に関する歴史的資料を集めた郵政博物館が、きょう(1日)、東京都墨田区の東京スカイツリータウン9階にオープンします。こけら落としの特別展示は「―少女たちの憧れ―蕗谷虹児展」で、その目玉は、1997年のふるさと切手(新潟県)に取り上げられた「花嫁」の原画の展示ということなので、きょうはストレートにこの切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

       花嫁・ふるさと切手

 これは、1997年6月18日にふるさと切手(新潟県)として発行された「花嫁」の切手です。

 蕗谷虹児は、1898年、新潟県新発田町(現新発田市)生まれ。母親は新聞記者と駆け落ちし、虹児(本名・一男)を産みましたが、貧困の末、虹児が12歳の時に27歳で亡くなりました。この体験から来る母への追慕の情が、後の後の作風に影響を与えたと言われています。

 その後、新潟市の印刷会社に丁稚奉公をし、絵の勉強をしながら夜学に通っていましたが、1912年、その画才が新潟市長に注目され、上京して日本画家・尾竹竹坡に弟子入りしました。竹坡の下で内弟子修業は5年ほど続きましたが、父親の仕事の関係で樺太へ渡る事になり、それを機に放浪画家の生活を送るようになりました。

 1919年、竹坡門下の兄弟子、戸田海笛を頼って上京。戸田の紹介で日米図案社に入社し、翌1920年、竹久夢二の紹介で、“蕗谷紅児”の筆名で雑誌『少女画報』へ最初の挿絵を掲載します。ちなみに、“虹児”に改名したのは翌1921年のことで、同年、『朝日新聞』に連載の吉屋信子の長編小説『海の極みまで』の挿絵を担当したことで、全国に名を知られるようになりました。以後、『少女画報』『令女界』『少女倶楽部』などの雑誌の表紙絵や挿絵などにより、竹久夢二とともに、大正ロマンを代表する画家としての地位を確立しました。

 代表作とされる「花嫁人形」は、1924年2月、『令女界』に発表した詩画で、後に杉山長谷夫の作曲で童謡にもなりました。

 1925年、挿絵画家としての生活に満足できなくなった蕗谷は、パリへ留学し、苦心の末、サロンへの入選を果たしたものの、1929年の大恐慌の影響で東京の留守宅が経済的に困窮に陥ったため、急遽帰国。借金返済のため、ふたたび挿絵を手掛けるようになり、パリ風のモダンな画風とシャープな画線で人気を集めました。

 その代表的な作品の一つとして、1935年に発表された詩画集『花嫁人形』の「花嫁人形」の部分は、昨日(28日)、郵政博物館のオープンに先立ち行われた内覧会(僕もご招待を受けて、参加してきました)で、非売品として配られた絵葉書にも取り上げられていますので、下にその画像を貼っておきます。

       花嫁人形・絵葉書

 その後、戦時色が強くなると蕗谷の作品は時勢に合わないとして、制作の中止を余儀なくされますが、戦後、制作活動を再開。絵本やアニメーション映画の分野で活躍しました。

 昨日の内覧会では、蕗谷のご子息・龍生氏のご挨拶があり、蕗谷には挿絵画家から“芸術画家”への脱皮を目指したものの経済的理由で挫折したという意識が強くあり、ながらく、自分が「花嫁人形」のイメージで語られることに強い抵抗感を持っていたそうです。ところが、あるとき、酒席でサトウハチローから「詩人たる者、誰もが口ずさめる詩を一つで良いから書きたいと心から願って仕事をしている。君の『花嫁人形』はその一つじゃないか。それが嫌だとはなんという勿体ないことを言うのだ。もっと『花嫁人形』の作者であることに誇りを持たねばならない」と叱責されたことで、「花嫁人形」に対するこだわりもなくなったそうです。

 切手に取り上げられた「花嫁」は、そうした経験を経て1968年に発表された作品です。本来、郵政博物館の展示では撮影は禁止なのですが、昨日は、内覧会ということで特別に許可を得て、その実物の写真を撮影することができましたので、その画像を下に貼っておきます。額装された作品の脇には黒台紙にマウントされた切手が並べられていますので、およその大きさがお分かりいただけると思います。

       花嫁・ふるさと切手(実物)

 ちなみに、「花嫁人形」の歌詞は、幸せなはずの結婚式で花嫁が「なぜ泣くのだろ」というのが作品の肝となっていますが、「花嫁」の実物では、その世界観を表現するため、花嫁の右目から涙がうっすらと一筋こぼれています。(下の画像。クリックで拡大していただくと、なんとか“涙”が見えると思います)

       花嫁・ふるさと切手(部分拡大)

 この涙は、切手の小さな印面では再現できていないので、蕗谷の作品世界を味わうためには、やはり、実際に、5月25日まで郵政博物館開催の「―少女たちの憧れ―蕗谷虹児展」で実物をご覧になることを強くお勧めしたいと思います。


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