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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 切手の帝国:黒海沿岸にあった“英領”
2014-03-06 Thu 11:46
 ご報告が遅くなりましたが、大修館書店の雑誌『英語教育』2014年3月号が発売になりました。僕の連載「切手の帝国:ブリタニアは世界を駆けめぐる」は今回が最終回。雑誌はソチ五輪開催中の発売でしたので、ソチからも近いバトゥミを取り上げました。その中から、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

       バトゥミ加刷

 これは、1919年、英軍占領下のバトゥミで帝政ロシアの切手に加刷して発行された切手です。

 ソチから南へ370キロ南にあるグルジアの港湾都市バトゥミは、もともと、ギリシャ人の入植地でしたが、後にイスラム系の諸王朝が征服し、17世紀以降はオスマン帝国の支配下で黒海東南を代表する港湾都市として成長しました。

 19世紀、不凍港を求めて南下政策を進めた帝政ロシアはカフカース(コーカサス)を併呑し、1878年にはバトゥミを併合。しかし、第一次大戦中の1917年にロシア革命でロマノフ王朝が崩壊すると、1918年4月、バトゥミは失地の回復を目指すオスマン帝国によって占領されました。

 その後、同年10月30日にオスマン帝国が協商側に降伏し、バトゥミから撤退すると、12月、英国がバトゥミを占領します。バクー(アゼルバイジャンの首都)を含むカスピ海西岸は世界有数の油田地帯であり、黒海に面したバトゥミはヨーロッパ向けの石油の重要な積出港になっていたため、英国は権力の空白の隙をついて確保しようとしたためです。

 さて、英国の主導の下、1919年1月、現地の親英勢力を擁立して、傀儡政権のバトゥミ共和国が建国されると、これにあわせて、新生バトゥミ共和国は独自の正刷切手を発行し、自分たちがロシアのボリシェヴィキ政権やグルジアから自立した存在であることを内外に示そうとしました。

 しかし、実際には、バトゥミ共和国政府には行政実務を担当するだけの準備も能力もなかったことから、1919年4月、英国は再びバトゥミを直接占領下に置き、軍政を施行。これに伴い、発行されたばかりの正刷切手や帝政ロシア時代の切手に“BRITISH OCCUPATION”の文字を加刷した切手が新たに発行されています。ちなみに、今回ご紹介の切手のキリル文字は“バトゥミ郵便”の意味です。

 1920年4月、英国はバトゥミを自由港とすることを宣言し、国際連盟の下で英仏伊三国がバトゥミを共同管理することが決められましたが、7月にはグルジア民主共和国(帝政ロシアの解体に伴い独立)がこの地を占領。英国はバトゥミから撤退を余儀なくされます。

 さらに、英国撤退後の1921年3月、バトゥミを併合したグルジアではソヴィエト政権が成立。1922年にソヴィエト社会主義共和国連邦(ソ連)が発足すると、バトゥミを含むグルジアは連邦を構成するザカフカース・ソビエト連邦社会主義共和国の一部となり、1936年にグルジア・ソヴィエト社会主義共和国として連邦構成共和国に昇格しました。なお、1991年にグルジアはソ連から独立し、バトゥミは同国最大の港湾都市になっています。

 さて、冒頭にも申し上げました通り、2013年4月から1年にわたって続けてきた「切手の帝国」も、今回が最終回となりました。お付き合いいただきました読者の皆様には、この場をお借りして、あらためてお礼申し上げます。


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