内藤陽介 Yosuke NAITO
http://yosukenaito.blog40.fc2.com/
World Wide Weblog
 クリミアでの住民投票
2014-03-16 Sun 17:28
 ロシアが実効支配しているウクライナ南部クリミア半島(ウクライナ領クリミア自治共和国およびセヴァストーポリ特別市)で、予定通り、現地時間の16日午前8時(日本時間午後3時)、ロシア編入の是非を問う住民投票が始まりました。ウクライナ政府と米欧は住民投票を「ウクライナ憲法に反する」としてこれを認めないとしています。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

       ウクライナ憲法1周年

 これは、1997年6月28日、ウクライナで発行された1996年憲法1周年の記念切手です。ウクライナでは、オレンジ革命最中の2004年12月、それまでの1996年憲法に規定されていた大統領権限を制限するなどの変更を加えた改正憲法(2004年憲法)が作られ、2006年1月からに施行されていましたが、ヤヌコーヴィチ政権下の2010年10月、憲法裁判所が2004年憲法を無効としたため、1996年の憲法が復活。その後、昨年来の混乱の中で、ことし2月21日、ヤヌコーヴィチ大統領が2004年憲法を復活させることで野党勢力との妥協を図ろうとしたものの、政変に倒れて失敗に終わり、現在に至っています。したがって、現時点では、今回ご紹介の切手に取り上げられた1996年憲法が、現行憲法ということになります。

 今回の住民投票で問われているのは、①クリミアをロシア連邦へ編入させることの是非、②ウクライナへの帰属を決定した1992年憲法の是非、の2点です。ただし、②の設問に関しても、1992年憲法ではクリミアの分離独立に関する手続きが詳細に定められているため、クリミアは合法的にウクライナから分離独立し、そのうえでロシアとの“併合”を目指すというシナリオが想定されているのは誰の目にも明らかで、クリミアの現状維持のためには、①と②の両方の設問に対する反対票がともに多数を占める必要があります。ただし、現実の問題として、クリミアの住民の約6割はロシア系のため、今回の提案が有効投票の過半数の賛成を得て承認されるのはほぼ確実です。

 これに対して、ウクライナの1996年憲法には「ウクライナ領土の変更問題は国民投票のみで議決できる」(第73条)、「クリミア自治共和国は、ウクライナを構成する不可分の領土であるのと同時に、ウクライナ憲法が定める範囲内で自治を行う」(第134条)などの規定があるため、地元住民のみでクリミアの分離独立やロシアへの編入を決めることは“憲法違反”というのが、キエフのウクライナ暫定政府や国連、西側諸国の主張です。

 ただし、現実の問題として、すでに3月11日、クリミア最高会議とセヴァストポリ特別市はウクライナからの独立を宣言。きょうの住民投票で上記の①の設問が賛成多数を得た場合、クリミア自治共和国とセヴァストポリ特別市が即時にウクライナから分離独立したうえで、国際条約に照らしロシアに対して編入を提案するとの決議を出席議員81人中78人の賛成で採択しており、少なくともクリミアの分離独立は既成事実化されつつあります。

 これに対して、ウクライナの国会はクリミア自治共和国最高評議会の全権を緊急的に停止し、クリミア議会を解散。クリミア議会議員選挙の実施を決定することで対抗しようとしていますが、再選挙が行われても、クリミア議会でキエフの暫定政権を支持する勢力が多数派を占めるのは事実上不可能であり、手詰まりの状況といえましょう。

 今後は、ウクライナからの分離独立したクリミアをロシアがどのように処遇するかということが焦点になるわけですが、少なくとも数日間(場合によっては数時間?)は、独立国家としての“クリミア”が存在することになるわけで、そうした過渡期の郵便がどうなるのか、僕としては大いに関心のあるところです。


 ★★★ よみうりカルチャー荻窪の講座のご案内 ★★★   

 4月から、毎月1回(第1火曜日:4月1日、6月3日、7月1日、8月5日、9月2日)、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で下記の一般向けの教養講座を担当します。(詳細はそれぞれ講座名をクリックしてください)

 ・朝鮮半島のことを学ぼう 時間は13:00-14:30です。

 ・イスラムを学ぶ 時間は15:50-17:00です。

 初回開催は4月1日で、講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。


 ★★★ 講座「世界紀行~月一回の諸国漫郵」のご案内 ★★★ 

亀戸講座(2014前期)・広告

 東京・江東区亀戸文化センターで、5月から毎月1回、世界旅行の気分で楽しく受講できる紀行講座がスタートします。美しい風景写真とともに、郵便資料や切手から歴史・政治背景を簡単に解説します。受講のお楽しみに、毎回、おすすめの写真からお好きなものを絵葉書にしてプレゼントします!

 詳細は、こちらをご覧ください。


 ★★★ 文京生涯カレッジ(第13期)のご案内 ★★★

 文京学院大学が一般向け(=どなたでも受講できます)にさまざまな講師を招いて行う通年の教養講座「文京生涯カレッジ」の第13期が4月15日から始まります。僕も、7月15・22日に「バスコ・ダ・ガマのインドを歩く」、9月9日に「ドバイ歴史紀行」のお題で登場します。詳細はこちらですので、よろしかったら、ぜひご覧ください。


 ★★★ 内藤陽介の最新作 『蘭印戦跡紀行』 好評発売中! ★★★

 『蘭印戦跡紀行』広告

 日本の兵隊さん、本当にいい仕事をしてくれたよ。
 彼女はしわくちゃの手で、給水塔の脚をペチャペチャ叩きながら、そんな風に説明してくれた。(本文より)

 南方占領時代の郵便資料から、蘭印の戦跡が残る都市をめぐる異色の紀行。
 日本との深いつながりを紹介しながら、意外な「日本」を見つける旅。

 出版元特設ページはこちらです。また、10月17日、東京・新宿の紀伊國屋書店新宿南店で行われた『蘭印戦跡紀行』の刊行記念トークの模様が、YouTubeにアップされました。よろしかったら、こちらをクリックしてご覧ください。


 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★

 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。
スポンサーサイト

別窓 | ウクライナ | コメント:0 | トラックバック:0 | top↑
<< WAR TAX | 郵便学者・内藤陽介のブログ |  ドネツィクで大規模騒擾事件>>
この記事のコメント
コメントの投稿
 

管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック
| 郵便学者・内藤陽介のブログ |
copyright © 2006 郵便学者・内藤陽介のブログ all rights reserved. template by [ALT-DESIGN@clip].
/