内藤陽介 Yosuke NAITO
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 平等院で落慶法要
2014-04-02 Wed 15:07
 一昨年(2012年)9月から行われていた平等院鳳凰堂の大修理がほぼ終わり、けさ(2日午前)、本尊・阿弥陀如来坐像と堂内の壁に52体ある雲中供養菩薩像に魂を戻す開眼式と落慶法要が、創建者の藤原頼通(992-1074)の940年御遠忌と併せて、営まれました。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

       鳳凰堂小型シート

 これは、1951年11月に発行された平等院鳳凰堂を描く24円切手の小型シートです。

 1949年6月1日、外国郵便料金の改正があり、船便書状の基本料金は16円から24円に値上げされました。しかし、新料金・24円の切手に関しては、題材の選定が難航したことや、当時の記念・特殊切手乱発の中で作業上の調整が困難であったことなどから、なかなか発行の目途が立ちませんでした。このため、郵政省は、とりあえず、同年8月の「富士箱根国立公園」の24円切手を500万枚発行し、新通常切手発行までの間、これを暫定的に用いるという処置を講じていました。

 一方、1949年6月に開かれた第1回の郵便切手図案審査委員会の席上、出席者の中から当時の現行切手であった「産業シリーズ(産業図案切手)」に関する不満が出され、これに代わるものとして「国宝切手」の発行が急浮上することになります。

 「国宝切手」のアイディアは、占領軍の将校(少佐)として対日経験があり、日本切手を収集していたコンデ(Bruce Conde)が、1949年春頃、総理大臣・吉田茂と逓信大臣・小沢佐重喜に提案していたもので、当初は、現実的なプランとは考えられていませんでした。

 その後、新通常切手のテーマとして、コンデの提案が脚光を浴びるようになると、郵政省は題材選定作業に取り掛かり、著名なもの、日本の美を世界に知らしめるようなもの、各種条件から支障の少ないもの、これまで切手に取り上げられていないもの、などの条件から、平等院鳳凰堂が「国宝切手」の第一段として取り上げられることになりました。

 鳳凰堂は、1053年、藤原頼道が父の道長から譲られた別荘(宇治院)に建立した阿弥陀堂で、定朝作の阿弥陀如来像を本尊としています。正式名称は阿弥陀堂ですが、江戸時代以降、鳳凰堂と呼ばれるようになりました。名前の由来は、建物の棟上両端に金銅の鳳凰が置かれているためとも、阿弥陀堂が鳳凰が翼を伸ばした姿をかたどった,鳳凰造りと呼ばれる形だったからともいわれています。

 題材の決定を受け、郵政省では東京・上野の国立博物館所蔵の写真や各種の絵葉書などをもとに、加曾利鼎造がデザインを担当。1950年9月4日に原画を最終決定しています。

 その後、印刷庁で栗原七三による原版彫刻が行われ、10月2日に初校が完成。同月5日から凹版速刷機による印刷作業が開始され、発行日翌日の11月2日までに初回注文分の100万枚が郵政省にすべて納品されました。

 こうした経緯で企画・制作された鳳凰堂の24円切手は、11月1日から始まる切手趣味週間にあわせて発行されることになり、あわせて、今回ご紹介の小型シートも同日付で発行されました。

 切手と小型シートの発行に先立ち、10月25日付で郵政省が発表した新聞原稿には、この小型シートが、1950年の「切手趣味週間」を記念する意図をもって発行されたものであることが明言されています。以下、その関連部分を引用してみましょう。

 切手趣味週間の開催について
 文化的な趣味として世界的に流行を見ている切手趣味は、吾國でも年を追うて盛んとなり、郵政省では今年も切手趣味界の待望に應えて、愈々十一月一日から七日迄「切手趣味週間」を催すことゝなった
 この週間に華を添えるため、國宝宇治平等院切手の小型シートが別紙発表 の通り十一月一日から全國発賣されるし、又全國主要都市の郵便局では、この週間を記念して切手整理の有樣を図案とした特別のスタンプを使用することゝ成つた

 このように、鳳凰堂切手の小型シートは、実質的には、1950年の切手趣味週間の記念切手として発行されたものでした。おそらく、郵政省としては、前年前々年と続いてきた大型浮世絵切手の発行が中断することになったため、なんとか、これに代わるものを発行したいと考えていたものと思われます。

 しかし、10月27日付で出された発行告示において同年の切手趣味週間についての言及がなかったこと、小型シート上に記念銘がなかったこと、さらに、この小型シートを前例として、以後、国宝図案の普通切手の小型シートの発行が相次いだことなどから、いつしか、鳳凰堂の小型シートが実質的には1950年の切手趣味週間の記念切手であったことは忘れられていきました。

 現在、日本切手のカタログでは、鳳凰堂の小型シートは、同時期の国宝図案の普通切手の小型シート同様、「普通切手の小型シート」に分類されており、記念切手として扱われてはいません。しかし、この小型シートは、その性格からして、やはり記念切手の部にも採録すべきものであると僕自身は考えています。


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