内藤陽介 Yosuke NAITO
http://yosukenaito.blog40.fc2.com/
World Wide Weblog
 アクト・オブ・キリングの発端
2014-04-12 Sat 21:19
 1960年代のインドネシアで、いわゆる“9・30事件”後の大量虐殺を題材にしたドキュメント映画「アクト・オブ・キリング」の日本での公開が、きょう(12日)から、東京・渋谷のシアター・イメージフォーラム等で始まりました。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

       アフマド・ヤニ

 これは、“9・30事件”で殺害されたインドネシア陸軍司令官アフマド・ヤニの追悼切手です。

 ヤニは1922年、中部ジャワのプルウォレジョ生まれ。1940年に高校を卒業後、兵役に就き、東ジャワのマランで訓練を受けているときに日蘭開戦となり、次いで、日本の占領下で結成されたペタ(郷土防衛義勇軍)で訓練を受け、終戦時には中部ジャワのマゲランでペタの教官を務めていました。

 インドネシア独立戦争ではマゲランを中心に活躍し、戦後は米国フォート・レブンワースの陸軍指揮幕僚大学に留学。帰国後は軍内での昇進を重ね、1958年8月には西スマトラで発生した反乱事件を鎮圧したことで、軍の重鎮としての地位を確立します。

 しかし、思想的には強固な反共主義者であったため、独立後の経済建設に失敗したスカルノが左傾化・先鋭化し、国際的な孤立(たとえば、インドネシアは1961年のマレーシア独立を非難して国軍部隊を派遣。軍事衝突を繰り返した末に、1965年にマレーシアが安保理の非常任理事国に当選すると国連を脱退しました)を深めると、スカルノとの関係も微妙なものとなっていきます。

 こうした中で、1965年9月30日深夜、首都ジャカルタで大統領親衛隊第一大隊長のウントゥン・ビン・シャムスリ中佐がクーデターを起こし、ヤニを含む陸軍の高級将校6名を殺害し、国営ラジオ局(RII)を占拠。“9月30日運動司令部”と名乗ってインドネシア革命評議会の設置を宣言しました。

 これが、インドネシア現代史の転機として知られる“9月30日事件”です。

 なお、事件当日、ヤニはスマトラ島パレンバンで完成したブン・カルノ橋(現アンペラ橋)の開通記念式典に参加した後、ジャカルタに帰着したところを凶刃に斃れました。

 さて、革命評議会は、ヤニらはスカルノ政権転覆のクーデターを計画しており、それを未然に防ぐために蹶起したと説明しましたが、戦略予備軍司令官だったスハルト(当時の階級は少将)が直ちに部隊を展開して首都の要所を制圧。ウントゥンらのクーデターは失敗に終わります。

 事件への関与を疑われたスカルノは、スハルトに対して、治安秩序の回復に必要なすべての権限をスハルトに委譲せざるを得なくなり、スハルトは事件に関与したとされる共産主義者や華人の大規模な虐殺(少なく見積もっても50万人、最大で300万人が犠牲になったといわれています)を行いました。そのうえで、1966年3月11日、政府の実権を掌握したスハルトはスカルノにも大統領権限を委譲する命令書に署名させ、さらに1年間の冷却期間の後、1967年3月12日に大統領に就任。以後1998年まで30年余に及ぶ長期独裁政権がスタートすることになります。

 なお、“9・30事件”を含むインドネシア現代史については、拙著『蘭印戦跡紀行』でもいろいろとご説明しておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。


 ★★★ ポスタル・メディアと朝鮮戦争 ★★★

 4月19日(土)14:00から、東京・水道橋の日本大学法学部三崎町キャンパス本館2階 第2会議室(以前ご案内していた会場から変更になりました)にて開催のメディア史研究会月例会にて、昨年(2013年)夏、バンコクで開催された世界切手展<Thailand 2013>に出品した“Korea and the Cold War 1945-1953”の内容を中心に、切手や郵便物などによって朝鮮戦争とその時代を再構成しようとする試みについてお話しします。

 なお、メディア史研究会はまったく自由な研究会で、会員以外の方でも気楽にご参加いただけますので(もちろん、無料)、よろしかったら、ぜひ、遊びに来てください。


 ★★★ 講座「世界紀行~月一回の諸国漫郵」のご案内 ★★★ 

亀戸講座(2014前期)・広告

 東京・江東区亀戸文化センターで、5月から毎月1回、世界旅行の気分で楽しく受講できる紀行講座がスタートします。美しい風景写真とともに、郵便資料や切手から歴史・政治背景を簡単に解説します。受講のお楽しみに、毎回、おすすめの写真からお好きなものを絵葉書にしてプレゼントします!

 詳細は、こちらをご覧ください。


 ★★★ 内藤陽介の最新作 『蘭印戦跡紀行』 好評発売中! ★★★

 『蘭印戦跡紀行』広告

 日本の兵隊さん、本当にいい仕事をしてくれたよ。
 彼女はしわくちゃの手で、給水塔の脚をペチャペチャ叩きながら、そんな風に説明してくれた。(本文より)

 南方占領時代の郵便資料から、蘭印の戦跡が残る都市をめぐる異色の紀行。
 日本との深いつながりを紹介しながら、意外な「日本」を見つける旅。

 出版元特設ページはこちらです。また、10月17日、東京・新宿の紀伊國屋書店新宿南店で行われた『蘭印戦跡紀行』の刊行記念トークの模様が、YouTubeにアップされました。よろしかったら、こちらをクリックしてご覧ください。


 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★

 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。
スポンサーサイト

別窓 | インドネシア | コメント:0 | トラックバック:0 | top↑
<< いちはらアート× ミックス | 郵便学者・内藤陽介のブログ |  昭憲皇太后100年祭>>
この記事のコメント
コメントの投稿
 

管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック
| 郵便学者・内藤陽介のブログ |
copyright © 2006 郵便学者・内藤陽介のブログ all rights reserved. template by [ALT-DESIGN@clip].
/