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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 切手歳時記:義経の鎧兜
2014-06-02 Mon 10:10
 きょう(2日)は旧暦の5月5日。本来の端午節の日です。というわけで、ご報告がすっかり遅くなりましたが、公益財団法人・通信文化協会の雑誌『通信文化』5月号に掲載された僕の連載「切手歳時記」では、新暦の5月5日に合わせて、鎧兜を描くこの切手を取り上げましたので、ご紹介します。(画像はクリックで拡大されます)

      春日大社赤糸威鎧

 これは、1968年9月2日に発行された国宝シリーズ第4集の“春日大社・赤糸威鎧”の50円切手です。

 端午というのは、もとは月の端(はじめ)の午の日という意味で、5月に限定されるものではありませんでしたが、これが、5月に固定されるようになったのは、紀元前3世紀の中国・楚の国で、祖国の前途に絶望して汨羅(湖南省北東の川)に身を投げた政治家、屈原の死を悼んで川にちまきを投げ込んで、魚が彼の遺体を食べることのないようにしたのが、5月5日(旧暦)だったことにちなむのだといわれています。

 その後、中国では5月5日に蘭の湯に浸かり、薬草である菖蒲酒を飲み、その菖蒲で体のけがれを祓って健康と厄除けを願うようになり、奈良時代までにはわが国の宮中にもその風習が伝わりました。

 鎌倉時代に入ると、端午の節句に欠かせない「菖蒲」が武を尊ぶという意味での「尚武」と同じ音であること、さらに、菖蒲の葉の形が刀に似ていることから、端午は男児の成長を祝い健康を祈る節句となり、江戸時代以降は、鎧兜や武者人形などを飾るようになりました。

 戦後の日本では、平和主義が強調されるあまり、一時期、武器・武具の類を忌避する傾向が非常に強かったことがありました。切手もまた、そうした社会風潮とは無縁ではいられず、1956年の切手趣味週間の切手に、東洲斎写楽の「市川鰕蔵の扮する竹村定之進」(いわゆる「えび蔵」)が取り上げられたのも、刀が描かれていないことが決め手になったのだといわれています。

 ついで、1958年5月に発行された「日本開港百年」の記念切手に、帯刀した井伊直弼像が切手に取り上げられたことで、ようやく、切手における刀のタブーも克服されました。

 一方、本格的な武具の切手としては、今回ご紹介の切手がその嚆矢となります。

 さて、切手に取り上げられた赤糸威(赤糸縅)というのは鎧の形式のひとつです。

 鎧は、小札(牛革製または鉄製の短冊状の小さな板)の表面に漆を塗り、これを横方向へ少しずつ重ねながら板状に連結したものを、縦方向へ何段にも繋ぎ合わせて作られています。着色した糸やなめし革の紐を用いて小札を縦方向に連結することを、“緒通す”から転じて“威す”といい、連結したものを威といいます。その威の色や模様、材質等により、鎧には、赤糸縅、紺絲威、匂威などの名前が付けられることになります。

 春日大社には赤糸威鎧2口が伝わっていますが、切手に取り上げられたのは、そのうちの源義経が奉納したと伝えられる一口。袖の部分に、竹林の竹と雀の装飾が施されているため、“竹に雀虎金物付”と呼ばれています。

 こうしたタイプの大鎧は平将門、藤原純友による承平天慶の乱が起こった10世紀には完成されていたようで、武家の勢力が東国で伸長していくにしたがって武具の改良も進み、それらが京へともたらされたことで、優雅さも加わったものと考えられています。


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       中日・講座チラシ    中日・講座記事

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