内藤陽介 Yosuke NAITO
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 切手に描かれたソウル:端午節
2014-06-16 Mon 10:53
 ご報告が遅くなりましたが、『東洋経済日報』6月6日号が発行されました。僕の月1連載「切手に描かれたソウル」では、今回は、掲載日直前の2日が端午節だったことから、こんな切手をご紹介しました。(画像はクリックで拡大されます)

      韓国・端午節

 これは、1979年4月1日に発行された「韓国美術5000年」の切手のうち、申潤福の「端午風情」(ただし、切手の表示は「端午節」)を取り上げた1枚です。

 朝鮮半島の伝統的な風習では、旧暦5月5日の端午節は、田植えと種まきが終わる時期に山の神と地の神を祭り、秋の豊作を祈願する日で、菖蒲湯で髪を洗い、女性はクネティギ(ブランコ)、男性はシルム(韓国相撲)を行うのが伝統となっています。

 これに対して、クネティギは、『春香伝』で主人公の李夢龍とヒロイン成春香の出会いの場面が有名なため、物語の舞台となった全羅北道の南原のイメージが強いのですが、今回ご紹介の作品は、現在、ソウルの城北区にある澗松美術館の所蔵品なので、取り上げてみました。

 作者の申潤福(号は蕙園)は、1758年、父の申漢秤を含め、代々が朝鮮王朝(李氏朝鮮)の図画署画員という家に生まれました。潤福じしんも画員として僉節制使(従三品)の地位にまでなりましたが、首都と近隣の両班や妓生の風俗、さらには男女の秘め事などを題材にした風俗画を数多く描きすぎたことを咎められ、図画署を追われたといわれており、その没年などはわかっていません。

 「端午風情」は申潤福の代表作の一つで、1805年の作品。画面中央でブランコに足をかけている女性は、髪形や服装、履物などから、妓生の女性であることがすぐにわかります。また、沐浴している女性の髪形も妓生特有のもので、惜しげもなく裸身を晒しています。そして、画面の左奥には、それを岩陰から覗き見している二人の男が描かれているのが、何ともユーモラスです。

 風俗史的に興味深いのは、画面の右手前、頭に荷物を載せた後姿の女性(服装などから、妓生ではなく下働きの女性と思われます)が、チョゴリの裾から乳房を露出した状態で描かれている点でしょう。(下に、その部分を拡大した画像を貼っておきます)

      韓国・端午節(部分)

 朝鮮王朝時代の韓服には、現在のブラジャーに相当するものはなく、チマ(スカート)ないしはチマの下に着るソッチマを“さらし”のように胸にきつく巻き、その上からチョゴリを羽織っていましたが、このスタイルは子供を産んだ母親が授乳するには不便です。このため、庶民の間では、乳飲み子を抱えた母親が胸を露出したままにすることが、自然発生的に行われるようになったようです。

 また、朝鮮王朝時代には、極端な儒教的価値観から「子供を産まない女性には価値はない」とまで言われていましたが、その副作用として、18世紀以降、子供を産んだ証として乳房を露出したチョゴリの姿は、「長男を生んで社会的義務を果たした」ことを示す誇らしいものと見なされるようにさえなりました。

 現在の感覚からすると、女性が乳房を露出して歩くのは野蛮なようにも思えるかもしれませんが、日本でも江戸時代まで(地域によっては昭和初期くらいまで)は女性が人前で上半身裸になることも珍しくありませんでしたから、特に驚くようなことではないでしょう。

 もちろん、そうした史実をそのまま現在の映画やドラマとして放送するわけにはいかないでしょうから、その点でも、申潤福の風俗画は当時の韓国人のリアルな姿を伝える資料として重要な意味があるといえます。


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