内藤陽介 Yosuke NAITO
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 切手に描かれたソウル:兄弟の像
2014-08-12 Tue 06:31
 ご報告がすっかり遅くなりましたが、『東洋経済日報』7月25日号が発行されました。僕の月1連載「切手に描かれたソウル」では、今回は、先ごろ、“ワンピース展”騒動で問題となった戦争記念館にちなんで、同館の“兄弟の像”を取り上げました。(画像はクリックで拡大されます)

      兄弟の像     戦争記念館 兄弟の像(実物)

 左は、2001年にミレニアムシリーズ第11集の1枚として韓国発行された“兄弟の像”の切手で、右側は、その実物の画像です。

 “兄弟の像”は、戦争記念館の敷地に入ってすぐのところにあるドーム型の施設の上に建てられている銅像で、南北分断によって生き別れとなっていた兄弟が、朝鮮戦争の戦場で、韓国軍の将校(兄)と朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の兵士(弟)として劇的に再開した場面を表現しています。

 ドーム内に掲げられていた説明版によると、像の足元にあるドームは、“殉国先烈”の犠牲を表現するものとして、韓国全域から集めた花崗岩を古墳の形に積み上げたもので、ドーム入口の亀裂には南北の分断と統一の念願が込められているそうです。また、ドームの内部には「韓民族の精新(精神の誤植ではないかと思うのですが…)と国難克服を現したモザイク壁画」や「朝鮮戦争(ママ)当時戦闘部隊を派兵した16ヶ参戦国運軍(これは明らかに“国連軍”の誤植でしょう)国家の地図造形(造形“板”の誤植か)」などが置かれています。さらに、天井に配されたいくつかの鎖は、「南北が二度と分断されない為の統一の結束を表現」しているのだそうです。せっかくなので、ドーム内部の画像も下に貼っておきます。

      戦争記念館・ドーム内

 さて、ドーム内には、以下のような韓国語・英語・日本語の3ヶ国語表記の案内板が掲げられています。

      戦争記念館・ドーム内説明文

 クリックで拡大していただけるとお分かりいただけると思いますが、この説明文には、上記の引用箇所以外にも、ひらがなの“め”が“あ”になっている箇所(たとえば、“込められて”とすべきところが“込あられて”となっているなど)や、主語の“は”が“な”となっている箇所(例えば、“兄弟の像は”とすべきところが“兄弟の像な”となっている)など、かなり誤植が目立ちます。まぁ、民間のお土産物屋などでの怪しげな日本語表記はご愛嬌ともいえましょうが、曲がりなりにも、韓国のために尊い命をささげた先人を偲ぶ厳粛な施設なのですから、日本人参観者の失笑を買わぬよう、きちんと修正していただきたいものです。

 さて、今回のワンピース騒動ですが、もともとは、7月12日から戦争記念館で開催予定だった日本の人気漫画「ワンピース」の特別展が、会期直前の9日になって、突如、原作に“旭日旗を思わせるイメージ”が数回登場することを理由に、特別展を企画したイベント会社に対して中止を通告したのが発端です。

 これに対して、イベント会社が開催中止の通報の効力停止と展示妨害の禁止を求める仮処分を申請。ソウル西部地方裁判所は、17日、契約通り開催すべきだとの決定を出しています。裁判所の決定文は、「ワンピース」は長編漫画であり、そのごく一部に旭日旗に似た絵が描かれているとの理由で「日本の帝国主義をほめたたえる漫画とは言えない」と指摘。日本では旭日旗に似たデザインは帝国主義とは関係なく大漁旗などにも使われているとし、原作では主人公と敵対するキャラクターを描く場面で主に使われており、「むしろ否定的なイメージを表現している」との判断を示したうえで、契約内容を踏まえても、戦争記念館側が一方的に開催を中止することはできないと結論づけています。

 予定されていた展示物の中には、旭日旗を思わせるものが含まれていなかったこととあわせて、極めて常識的な判断で、多くの韓国国民にとっても納得のいくものではないかと思います。

 昨今、韓国国内の一部には、赤色で放射状に線がデザインされた日本関連のモノを何でもかんでも“旭日旗”に結び付けて攻撃する風潮があります。その多くは、どう見てもこじつけにしか思えないナンセンスなものですが、クレーマーの多くはかなり執拗で粘着質なので、クレームを受けた側はトラブルが長引くことを嫌い“自粛”して早々に幕引きを図るケースが多いようです。

 戦争記念館の今回の対応も、原作に旭日旗が登場するとの外部からの指摘を受けた結果だそうですから、おそらく、そうした背景があるのでしょう。

 裁判所の決定を受けて、当初、戦争記念館側は「ワンピース」展への会場の貸し出しを拒否する方針に変更はなく、仮処分に対する異議申し立てを行うことなどを検討しているとしていましたが、結局、地裁のお墨付きを得た格好で、7月26日から「ワンピース展」は開催されています。

 いずれにせよ、戦争記念館に関しては、朝鮮戦争の英霊たちを真摯に追悼する気持ちがあるのなら、(もしまだ修正されていないのなら)まずは誤植だらけの案内板を修正していただきたいものだと、拙著『朝鮮戦争』を刊行したばかりの僕としてはついつい思ってしまいますな。

        
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