内藤陽介 Yosuke NAITO
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 泰国郵便学(33)
2014-10-25 Sat 08:32
 ご報告が遅くなりましたが、財団法人・日本タイ協会発行の『タイ国情報』第48巻第5号ができあがりました。僕の連載「泰国郵便学」では、今回は、1969年後半から1970年初頭にかけてのトピックをいろいろと取り上げました。その中から、きょうはこの切手をご紹介します。(画像はクリックで拡大されます)

      タイ・影絵(1969)
 
 これは、1969年12月18日に発行された影絵芝居“ナン・ヤイ”シリーズのうち、魔王ラーマスラを取り上げた2バーツ切手です。

 1969年は、この影絵シリーズを含め、儀礼シリーズ、古典舞踊シリーズなど、タイの伝統文化を紹介する特殊切手が3件、計12種類発行されました。

 以前の記事でも少し触れましたが、1960年に開設された政府観光局(現政府観光庁)は、1965年にニューヨーク事務所を開設。さらに、1968年には初めての地方事務所をチェンマイに開設するなどして、観光地としてのタイの魅力を広く外国人に向けて宣伝することに努めていました。そうした観光宣伝のための体制が整ったことを受けて、国家のメディアとしての切手も、観光資源としての伝統文化の切手を盛んに発行するようになったと考えるのが妥当でしょう。

 さて、タイの伝統的な影絵芝居には中部を中心としたナン・ヤイと南部を中心としたナン・タルンがあります。

 いずれも、水牛の革(牛革を用いることもある)に透かし彫りの細工を施された人形を白幕に投影して演じるものですが、ナン・ヤイの人形が大型で腕を動かせないのに対して、ナン・タルンの人形は小型で腕が動かせるという違いがあります。ちなみに、ナン・ヤイの“ナン”は“水牛(もしくは牛)の革”の意、“ヤイ”は“大きい”の意ですが、“タルン”の語源は、ラーマ3世の時代に南部パッタルン県の一座が上演して好評を博し、ナン・パッタルンと呼ばれたことに求めるのが一般的です。

 ナン・タルンの場合、白幕の後ろで一人の演者が声色を変えながら複数の人形を使い分ける形式となっていますが、これは、ジャワ島のワヤン・クリとほぼ同じです。一方、ナン・ヤイの方は人形が大きい(特に大きいものは1m50cmを超えることもあります)ため一人で操作することは不可能で、複数の人形遣いが白幕の前も使って演じます。

 切手に取り上げられたナン・ヤイの演目は、基本的には『ラーマキエン物語』(インドの古典叙事詩『ラーマーヤナ』のタイ語版)の内容に限定されています。

 2バーツ切手に取り上げられた魔王ラーマスラは、天女メーカラーが美しい宝石を手に遊んでいるところに現れ、宝石を我が物にしようとメーカラーに襲い掛かかりましたが、宝石から放たれた光に目がくらんでいるうちに、メーカラーは逃げおおせてしまいます。このとき、怒ったラーマスラが斧を投げつけたものの、斧は彼女には当たらず地面に刺さりました。タイの伝承では、このときの宝石の光が稲妻に、斧が地面に刺さった時の音が雷音になったとされています。ちなみに、今回ご紹介の切手でも、人形の手にも斧が握られているのがはっきりとお分かりいただけるかと思います。


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