内藤陽介 Yosuke NAITO
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 切手歳時記:鳥居は赤か緑か
2014-11-15 Sat 16:13
 ご報告がすっかり遅くなりましたが、公益財団法人・通信文化協会の雑誌『通信文化』11月号ができあがりました。僕の連載「切手歳時記」では、紅葉の時季ということで、この切手を取り上げました。(画像はクリックで拡大されます)

      日本三景・宮島

 これは、1960年11月15日に発行された日本三景切手のうちの“宮島”です。

 紅葉の名所として知られる安芸の宮島では、朱塗りの大鳥居で有名な厳島神社は島の北側、本土に面した海岸に位置しています。

 厳島神社は、市杵島姫命・田心姫命・湍津姫命の三女神を祀るもので、593年(推古天皇即位元年)の創建。現在の規模になったのは、平清盛が安芸守に任命された後の1168年のことで、平家一門の権勢が増大するにともない繁栄しました。海中に建つ大鳥居は、戦前の1939年から発行の30銭切手に取り上げられたほか、日清戦争の切手にも登場する有栖川宮熾仁親王の手になる“嚴嶋神社”の額が掛けられていて、切手収集家としては見逃せない存在です。

 宮島全島は、1952年11月、“嚴島”として国の特別名勝と特別史跡に指定されたため、今回ご紹介の「日本三景」の切手も、当初、“厳島”の名で発行すべく準備が進められ、1960年5月9日には原画も完成していました。

 ところが、その直後の5月20日、地元から、切手の名称は“宮島”に変更して欲しいとの強い要望が出されます。これは、1950年の町名変更により“宮島”が正式な名称になっていたためで、6月2日には、宮島町長・同町議会議長・宮島観光協会長の連名で、郵政大臣・植竹晴彦宛に、切手名称変更の陳情書も提出されました。

 これを受けて、郵政サイドも名称変更に応じることになりましたが、この段階ではすでに印刷局で原版彫刻の作業が進められていたため、急遽、原画の“厳”の部分に“宮”の文字を貼り付けて彫刻が進められたそうです。そのためか、当初の切手発行日は11月1日の予定でしたが、実際の発行日も11月15日に延期されています。

 こうして、難産の末に発行された宮島の切手でしたが、その評判は必ずしも芳しくはありませんでした。その最たる理由は刷色で、風景全体が緑色で印刷されていたため、大鳥居や御山の紅葉から連想されるシンボルカラーの赤がどこにもないのが、地元にとっては大いに不満だったそうです。

 たしかに、大鳥居を取り上げた戦前の30銭切手も青緑色でしたから、こんどこそ、実物に近い“赤い鳥居”の切手を期待していた地元としては、肩透かしを食ったような気分になったのでしょう。

 ところで、僕が宮島を初めて訪れたのは、年号がまだ昭和だった学生時代の夏の日のことです。

 モノを知らないと言われればそれまでなのですが、戦前の30銭切手や今回ご紹介の切手に慣れ親しんでいた僕は、厳島神社の大鳥居も切手の色に近い、全面に苔むした雰囲気の青緑の鳥居の姿を期待していたので、実際の鳥居が朱塗りだったのを見たときには、なんだか期待を裏切られた気がして、すごくがっかりした記憶があります。まぁ、鳥居の背後にはたしかに、切手に描かれたように鬱蒼たる緑が広がっていたのですが…。
 

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