内藤陽介 Yosuke NAITO
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 日ノ本切手美女かるた(新連載)
2014-12-05 Fri 07:52
 突然ですが、郵趣サービス社のオンラインショップ“スタマガネット”で、おととい(3日)から「日ノ本切手美女かるた」と題する週刊のコラム連載をはじめました。女性が描かれた切手を絡めて、47の異なる文字で始まる題名のコラムを書いていこうということで、第1回目は、こんな切手を持ってきて、「犬も歩けば女も歩く」というコラムを書いてみました。(画像はクリックで拡大されます)

      彦根屏風

  “いろはがるた”の初っ端は「いぬも歩けば棒にあたる」と決まっているが、イヌを連れて歩く美女といえば、やはり、彦根屏風を取り上げた昭和51(1976)年の趣味週間切手だろう。

 彦根屏風というのは、旧彦根藩主の井伊家に伝来したことによる通称で、国宝としての正式な登録名称は“紙本金地著色風俗図”。もともと右2扇の室外図と左4扇の室内図から構成されており、切手に取り上げられたのは室外図の2扇分。長らく屏風を解いた額装の状態で保存されていたが、平成18-19(2006-07)年に修復され、現在は屏風の姿に戻っている。

 描かれているのは、江戸時代初期、おおよそ寛永6-11(1629-34)年頃の京都六条柳町の遊里の風景だ。

 もともと、京の遊里は秀吉の時代の天正17(1589)年、二条柳馬場(柳町)に設けられた。京の二条は御所からも近い市内の中心部。当時の遊里は単に性欲を処理するだけの場所ではなく、財力と教養を備えた一流の男たちのみが通える最高級のサロンであり、流行の発信地であったから、町の中心にあっても、まぁ不思議はない。

 ところが、質実剛健を旨とする家康はそれが気に入らなかったらしい。

 関ヶ原の戦いに勝って伏見に入城すると、遊里は六条、つまり、当時の京都の南端に移された。西本願寺の巨大な伽藍が堀川六条に建立されたのは、そこに何もなかったからである。

 もっとも、サロンとしての遊里へのアクセスが極端に悪くなれば京のエスタブリッシュメントたちの恨みを買う。そこで、六条とはいっても、メインストリートの室町通とぶつかるエリアの二町四方が六条柳町(五条と六条の間に道が三本あることから六条三筋町とも呼ばれた)として、新たな遊里となった。さらに、元和3(1617)年には京の各所に散在していた遊郭は、すべて、その周辺に集められた。

 さて、屏風絵でイヌを連れて六条界隈を歩いている美女の頭は唐輪髷だ。

 唐輪髷は、当時の先進国、明の女性の髷に倣ったもので、髪を頭上でまとめていくつか輪を作り、根元の毛を巻きつけて結い上げたスタイル。信長・秀吉の時代に遊女が好んだ髪型である。後に時代が下ると女性の髷は一般化するが、当時の一般女性は、右の切手の二人のように、ストレートに伸ばしたままというのが一般的だった。

 また、彼女が連れているイヌは、和犬や中国の狆ではなく、毛の短い洋犬である。当時の日本は南蛮貿易が続いていたから、景気の良い豪商がなじみの遊女にポンとプレゼントしてやったということなのかもしれない。

 どうでもいいことだが、かるたでは「犬も歩けば…」と“犬”の字を使うことが多いが、かつては大型のイヌを犬、小型のイヌを狗と書き分けていたから、彦根屏風の彼女が連れているのは狗である。羊頭狗肉で食用になるのは狗だから、狗を連れた美女というのは、食欲と性欲を同時に満たす遊里にぴったりのモチーフじゃなかろうか。

 ちなみに、彦根屏風が描かれた時代は、徐々に徳川幕府による風俗取締が厳しくなっていった時代で、数年後の寛永17年(1640)年には、京の遊里は大宮六条の西に移された。六条は京都の南端、大宮通は西端だから、さらにその西ということは、完全に洛外だ。ここが現在の“島原”のルーツとなる。

 唐輪髷の彼女が狗を連れて島原に移ったか、それとも、誰かに見受けされて花街を後にしたのか、その後の物語が少し気になる。
 (転載終わり)
 
 さて、スタマガネットの連載では、これから毎週1回、ランダムに(次回は“ろ”ではありません)、かるたの読み札風の題名をつけた切手のコラムを連載していく予定です。こちらのページで、タイトルをクリックしていただくと文章がお読みになれます。年末年始でかるたの季節でもありますし、評判が良かったら書籍化もありうるということですので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。

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