内藤陽介 Yosuke NAITO
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 切手に描かれたソウル:韓紙
2014-12-15 Mon 22:52
 ご報告がすっかり遅くなりましたが、『東洋経済日報』11月28日号が発行されました。僕の月1連載「切手に描かれたソウル」では、今回は、こんなモノをご紹介しました。(画像はクリックで拡大されます)

      韓紙

 これは、ことし(2014年)8月、ソウルのCOEXで開催された世界切手展<PHILAKOREA 2014>に際して発行された記念切手のうち、韓国の文化を世界に紹介する企画の一環として、現在の技術で作られた“韓紙”に印刷された記念切手です。

 さて、わが国における製紙技術は、一般に、西暦7世紀、高句麗から渡来した僧・曇徴によってもたらされたとされています。

 韓紙も和紙も、本来は楮を主原料としています。また、手漉きの紙の漉き方は、簀桁と呼ばれるスクリーンで紙料液(原料を溶いた液)をすくい、縦横に動かし繊維を絡みあわせて紙を作る“流し漉き”と、紙料液を簀桁の上に溜め、水分が自然に落ちるのを待つ“溜め漉き”の2種類に大別されますが、流し漉きの製法で作られるのは基本的に和紙と韓紙のみです。

 したがって、これだけみると、韓紙こそが和紙のルーツであると考えがですが(じっさい、そのように説明している韓国人は少なくないようです)、話はそう単純ではありません。

 すなわち、和紙の場合、流し漉きで漉いた紙は原則として1枚のみで完成品となります。

 これに対して、韓紙の場合は、流し漉きだけでは紙の厚さを均等にすることが難しかったため、漉いた紙を乾燥させる際には漉き目の縦横を交互に重ねて乾燥させ、乾燥させた紙を木槌で打ってつやを出す“打ち紙”を行って、ようやく完成となります。

 このため、和紙に比べると、韓紙は丈夫で耐久性に優れており、千年の寿命を持つともいわれて中国でも高い評価を得ていましたが、その反面、ごわごわとした質感は、墨や絵の具が定着しづらく、書画の用材としては和紙の方がはるかに使い勝手が良いのです。

 こうした特性を生かして、韓紙は工芸品や建築、縄・綱の材料としても盛んに用いられていました。紙の大きさが、ムンサル(韓屋の扉)に適した大きさ(およそ63×93センチ)を基準に決められていたのはそのためです。また、現在でも、11月にソウル中心部を流れる清渓川で行われるピッチョロン祭(昨年までの旧称は燈籠祭り。今年は23日まで)の燈籠は、伝統的な韓紙の典型的な使い方と言ってよいでしょう。

 こうしたこともあって、“訓民正音”としてハングルを制定した世宗は、文字を普及させるためには紙の増産を図らねばならないと考え、和紙の製法を学ばせています。その一環として、和紙には、楮以外にも、雁皮や三椏が原料として用いられていることに着目し、彼は“倭楮”の名で雁皮の種苗を輸入して朝鮮内での生産を試みましたが、朝鮮の気候風土には合わなかったため、ほとんど成果を上げられませんでした。

 このように、韓紙と和紙は全く異なる性質の紙として独自の発展を遂げ、それぞれ別の魅力を有してきたわけですが、それゆえ、1910年に朝鮮統治を開始した日本の朝鮮総督府も、当初、朝鮮独自の製品としての韓紙を、中国向けの輸出商品として重視していました。

 しかし、韓紙が高値で取引されることに目を付けた中国人業者が安価な模造品・代用品を中国大陸で大々的に売り出すようになったため、1920年代に入ると韓紙の中国向け輸出は急減。対応を迫られた朝鮮総督府は、パルプなどの補助原料を混入した韓紙の生産を奨励したほか、効率化を図るため、日本式の抄紙方法がさかんに導入されていきました。

 この結果、韓紙の和紙化が急速に進むことになりましたが、ほかならぬ韓国人が韓紙の文化的な価値には無頓着であったため、1945年の解放後も、伝統的な韓紙を復活させようという声はほとんど起きませんでした。さらに、朝鮮戦争と漢江の奇跡を経て生活様式が大きく変化すると韓紙の需要も激減し、そのために韓紙を生産する工房の数も急速に減少してしまいます。

 近年、ようやく、韓国内でも伝統文化としての韓紙の価値が再評価されるようになりましたが、今回ご紹介している切手が発行されるようになったというわけです。

 * 昨日のニコニコ生放送の公開収録は、無事、盛況のうち終了いたしました。ご参加いただきました皆様には、この場をお借りして、あらためてお礼申し上げます。

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 毎週水曜日、インターネット放送・チャンネルくららにて、内藤がレギュラー出演する番組「切手で辿る韓国現代史」が配信されています。青字をクリックし、番組を選択していただくとYoutube にて無料でご覧になれますので、よろしかったら、ぜひ、ご覧ください。(画像は収録風景で、右側に座っているのが主宰者の倉山満さんです)

 
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