内藤陽介 Yosuke NAITO
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 米・キューバ国交交渉へ
2014-12-18 Thu 16:35
 オバマ米大統領は、昨日(17日)、1961年から国交が断絶しているキューバと、53年ぶりに関係改善に踏み出すと表明しました。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

      キューバ・農地改革

 これは、1959年、キューバで発行された農地改革実施の費用を集めるための寄附金つき切手です。

 1959年のキューバ革命を経て発足したカストロ政権は、当初、必ずしもソ連型の社会主義国家の建設を志向していたわけではなく、あまりにも極端な富の偏在を是正する“改良主義”の立場に立っていました。
 
 その“改良主義”の実現に際して、カストロ政権は、先ず、小作人への土地分与を掲げる土地改革と不正蓄財の没収を行います。

 当時、キューバの可耕地の4分の3は米国人を中心とする外国人の所有であり、なかでも、米国系の大砂糖会社は、それぞれ、数万ヘクタールもの土地を所有していました。社会的な平等を実現するため、その是正は不可と考えられたからです。

 このため、革命政権は、1959年5月17日、第1次農地改革法を公布して、土地の所有を最大400ヘクタールに制限するとともに、外国人の農場経営の禁止等を法律に盛り込み、米国がキューバの富を独占していた前提条件は根本から否定されました。今回ご紹介の切手は、この農地改革の宣伝を兼ね、その実施費用をあちゅ目るために寄附金つきで発行されたもので、“工業を支える農業”のイメージがデザインされています。これは、農地改革の成功が経済建設の基礎というカストロの思想を表現したものです。

 しかし、当然のことながら、この農地改革は米国をいたく刺激しました。

 すなわち、革命政権の方向性を見きわめようと事態を静観していた米政府は、農地改革が実行に移されるや、キューバ政府に抗議。カストロがこれを拒絶すると、マイアミから飛行機が飛来し、爆弾を落としていくようになったほか、8月以降、融資停止などの経済制裁を開始します。

 米国との対立を深めていく中で、カストロ政府は、必然的に“敵の敵”であるソ連との関係を強化せざるを得なくなりました。

 1959年6月から各国歴訪の旅に出たチェ・ゲバラは、ソ連で50万トンの砂糖購入契約を締結するとともに、以後5年間にわたって、毎年50万トンの砂糖と石油、小麦、科学製品をバーターする契約を締結。さらに、翌1960年2月には、ソ連副首相のミコヤンがキューバを訪れ、ソ連がキューバの年間原油必要量の3~5割を引き受けることや1億ドルの長期開発援助の供与を約束しています。1959年にキューバで革命が起こるまでは、米国の“裏庭”であるラテンアメリカ諸国では、ソ連と外交関係を結ぶことはおろか、経済的な関係を持つことさえタブー視されていました。したがって、キューバがソ連の期待しているような社会主義国家となるかどうかということはさておき、米国の“裏庭”に楔を打ち込むためにも、キューバを援助し、恩を売っておくことはソ連の冷戦戦略にとって有益なことでした。

 こうした事態を目の当たりにした米国は、キューバがついに“赤化”したと判断し、カストロ政権打倒のための経済封鎖に着手。1960年2月、キューバからの果実輸入を禁止するとともに、同年7月には、キューバ最大の輸出品であった砂糖の輸入を停止しました。

 もっとも、米国によるキューバの砂糖輸入停止に対しては、米国が買い付けを拒否したのと同量の砂糖をソ連が国際価格で買い取ることを申し入れたため、米国側が期待していたような効果を挙げることなく終ってしまいます。これを受けてキューバ政府は、米国を挑発するかのように、「我が国が侵略されるようなことがあれば、ソ連の好意を受け取る以外の道はなくなるだろう」との声明を発表しました。

 この声明に激怒した米国は、ついに、実力でカストロ政権を転覆させることを決意し、8月16日、CIAによるカストロ暗殺計画(毒入の葉巻がカストロのもとに届けられました)を実行に移します。しかし、この秘密工作は失敗に終わり、同月13日、米国はキューバに対して国交断絶を通告。同月9日、キューバに対する経済封鎖を発動しました。これに対して、カストロは米国資本の工場や農園を次々に接収するとともに、共産中国との国交樹立とソ連との経済関係の強化を決定。両者の対立はエスカレートしていくことになります。

 今回のオバマ大統領の声明は、この時以来の米国の対キューバ政策を根本的に見直そうというもので、まさに、歴史的な大転換というわけです。今後は、ケリー国務長官が即座に国交正常化に向けた交渉に入り、数カ月以内にハバナに米大使館を再開させる見込みということで、これからしばらくの間、キューバから目が離せなくなりそうです。


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