内藤陽介 Yosuke NAITO
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 泰国郵便学(34)
2014-12-27 Sat 23:28
 ご報告が遅くなりましたが、財団法人・日本タイ協会発行の『タイ国情報』第48巻第6号ができあがりました。僕の連載「泰国郵便学」では、今回は、1970年初頭のトピックをいろいろと取り上げました。その中から、きょうはこの切手をご紹介します。(画像はクリックで拡大されます)

      タイ・ゴム

 これは、1970年11月1日に発行された輸出産業宣伝切手で、ゴム農園が描かれています。

 タイにおける天然ゴムの生産は、1900年頃、当時のトラン県知事、プラヤー・ラッサダーヌプラディット(許心美)が英領マラヤから持ち込んだ種子を県内で植えたのが最初のことで、1920年代以降、生産と輸出が盛んになりました。以後、タイのゴム産業は、東北からの出稼ぎ労働者を樹液採取労働者として使いながら、コメや果樹とあわせてゴムの生産を行う小規模農家が中軸を担って成長していきます。

 1950年代には天然ゴムはタイの輸出の2-3割を占めてコメに次ぐ重要な輸出品目へと成長しましたが、1960年代以降、ゴム農家育成のため、タイ政府はゴムの輸出量に応じた賦課金を輸出業者(1970-80年代のゴム輸出を支えたテクビーハンなどが有名)から徴収し、それを基金として、新たに高収量の改良品種を植える農園主に対して、苗や農薬・肥料などの購入資金のほか、新たに植えた苗が収穫可能になるまでの6-7年分の労賃などを助成金として支給しました。

 ちなみに、1970年の切手に描かれているのは、パラゴムノキ(をベースにした改良品種)のゴム園。パラゴムノキは、パラゴムノキはアマゾン川流域の減産で、名前はブラジル北部のパラ州に由来する。樹齢5-6歳頃から樹液の採取が可能となり、樹齢15-18歳で最盛期を迎え、40歳以後は樹液が激減します。

 さて、タイ政府の育成政策が功を奏し、タイのゴム産業は急成長を遂げ、1980年代半ば以降のタイの輸出伸長を支える牽引役となりました。ちなみに、2012年の統計によると、全世界の天然ゴム生産量1138万3000万トンのうち、タイは3割強の351万2000トンを占め、世界最大の生産国になっています。

 また、タイにおけるゴム農園の栽培面積は、276万5000ヘクタールで、インドネシアの345万6000ヘクタールに次ぐ第2位の規模です。2012年のインドネシアの年間生産量は301万5000トン(タイに次いで世界第2位)ですから、単純に1ヘクタール当たりの生産量に直すと、タイの1.27トンに対してインドネシアが0.87トンとなり、タイの生産性が際立っていることがわかります。これは、1960年代以降の育成政策の結果、タイのゴム樹の大半が高収量改良品種になった結果です。

 切手に描かれているように、幹に切り込みを入れて採取された樹液は、工場に集められ、工業製品の原料として、ラテックス(液体状)、カップランプ(カップなどで固まった状態)、USS(蟻酸などで固めたシート状)、RSS(USSを燻煙したシート状)、TSR(ラテックス、USS、カップランプに熱処理を加えたブロックラバー。タイでは特にStandard Thai Rubber の略号としてSTRと呼ばれます)、などの形態に加工して輸出されます。タイでは、ゴム工場および輸出業者の多くは福建系の華人で、大手による寡占が進んでいます。

 なお、タイのゴムの輸出先としては、かつては、日本が圧倒的なプレゼンスを誇っていました。これは、欧米のタイヤメーカーが植民地支配の経験もあってインドネシアやマレーシアの業者と長期契約を結んで主にTSRを仕入れていたのに対して、日本のタイヤメーカーはRSSを好んで輸入していたという事情があったためです。また、日本のタイヤメーカーと商社が連携し、タイ国内の燻煙工場に技術指導を行うとともに、基準を満たした工場から優先的に買い付けたこともあって、タイのRSSの水準が急速に向上し、そのことが輸出の身長と欧米市場への販路拡大にもつながったという面も見逃せません。
 
 なお、1990年代以降は、中国の急速な経済市場により、中国が買い付けるTSRの需要が急増したこともあって、TSRの生産が急増。2003年に中国が日本を抜いて最大の輸出国となったこともあり、翌2004年にはTSRの生産がRSSを上回るようになるなど、タイのゴム産業も、この切手が発行された頃から比べると大きく様変わりしています。


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