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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 建国記念の日
2015-02-11 Wed 11:11
 私事で恐縮ですが、昨年末から郵趣サービス社のオンラインショップ“スタマガネット”で連載中のコラム「日ノ本切手美女かるた」が、読者の方からの反響が予想よりもはるかに大きいということで、急遽、『日の本切手美女かるた』の題名で書籍化が決まりました。刊行予定日は3月25日です。というわけで、今日(11日)は建国記念の日でもありますので、同書の事前プロモーションを兼ねて、記紀神話がらみの切手の中から、この1枚を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      新高額切手(10円)

 これは、1924年に発行された神功皇后の10円切手です。

 記紀神話に登場する神宮皇后の三韓征伐の物語は、皇后の夫、仲哀天皇が九州南部の豪族、熊襲を征討しようとした際に、シャーマンの術にすぐれていた皇后に「西の方に国有り。金銀を本と為て、目の炎耀く種種の珍しき寶、多に其の国に在り。吾今其の国を帰せ賜はむ」(西方に金銀財宝の豊かな国がある。それを服属させて与えよう)との神託が下ったところから始まります。

 ところが、天皇はこの神託を信じなかったため、神の怒りにふれて急死。そこで、天皇を葬った後、皇后が再び神意を問うと、さらに「この国は皇后の御腹に宿る御子が治めるべし」との託宣がありました。そこで、皇后は妊娠中でしたが、遠征中に出産とならないよう、卵形の美しい石を2個、腰のところにつけて呪いとし、出産を後らせることを願い、住吉三神を守り神として軍船を整えて新羅に遠征し、百済・高句麗ともどもこれを平定して凱旋。帰国後、無事に誉田別命(後の応神天皇)を出産しました。

 明治時代の『尋常小学国史』では、皇后の三韓征伐や、その後、百済から多くの人々が渡来して日本に学問・技術などを伝えたことは「神功皇后の御てがらに基づきしなり」と教えられていました。じっさい、1895年に日清戦争に勝利するまでの大日本帝国は、実際に自分たちが朝鮮半島を支配できるとは考えていなかったでしょうから、当初は神功皇后に関しても、三韓征伐の軍事的な成功というより、西方から富と技術をもたらした文明開化の先駆者というイメージの方が強かったのではないかと思います。

 1878年、イタリア出身のお雇い外国人、エドアルド・キヨッソーネは印刷局の女性職員をモデルに、紙幣の原画として西洋の貴婦人を思わせる容貌の神功皇后の肖像を描いていますが、当時の日本社会には、それを違和感なく受け入れる雰囲気がありました。じっさい、キヨッソーネの神功皇后像は好評で、明治10年代には何度も紙幣に採用されています。その後、明治20年代に入り、行き過ぎた欧化主義に対して国民の批判が強まると、彼女の肖像も紙幣から外され、菅原道真、武内宿禰、藤原鎌足、和気清麻呂など、歴史上の天皇の忠臣が紙幣に登場するようになりました。

 1908年、キヨッソーネによる神功皇后像は突如切手の顔として復活します。いわゆる旧高額切手です。

 すでに1905年、第2次日韓協約で韓国の外交権を接収し、韓国を保護国化していた日本は、1907年のハーグ密使事件(ハーグの万国平和会議に韓国皇帝の密使が現れて各国代表に韓国の独立を訴えた事件)を理由に韓国皇帝を退位させ、その内政権も手中に収めていました。

 神功皇后像が切手において復活したのも、こうした時代背景の下で、あらためて、伝説の三韓征伐のヒロインとしての彼女の存在にスポットライトがあてられたからと考えるのが自然でしょう。

 ところで、1923年9月の関東大震災で印刷局が罹災し、旧高額切手の原版が焼失したため、翌1924年12月1日、神功皇后という題材はそのままに、デザインを変更した“新高額切手”(今回ご紹介の切手です)が発行されました。

 ちなみに、新旧の高額切手のデザインでは、特に皇后の髪型が大きく異なっています。すなわち、旧高額切手では皇后は長い髪をそのまま垂らしていますが、新高額切手では髪を結いあげたスタイルです。これは、皇后が出征前にその成否を占った際、海水に髪を浸して髪が二つに割れるという吉兆が出たため、そのまま髪を結って船に乗り込んだという『日本書紀』神功皇后巻の記述に合わせたものです。また、肖像の周囲には、古墳の壁画などに見られる直弧紋と呼ばれる文様も配されています。

 こうした変更について、当時の逓信省は「考古学的考証を加えたため」と説明しましたが、単純なルックスという点でいえば、やはりキヨッソーネの原画による旧高額切手の方が美人じゃないでしょうかねぇ。もちろん、歴史的考証も大事ではありましょうが…。

 さて、以前の記事にも書きましたが、天孫降臨や神武東征などの記紀神話は、それがそのまま歴史的事実であるとは考えられません。ただし、そういうレベルでいえば、『聖書』の記述なんかも歴史的事実としては認めがたいわけで、欧米のキリスト教世界で(信じるか信じないかは別の問題として)『聖書』の物語をたしなみとして国民に教えているのであれば、わが国でも民族の物語としての記紀神話を日本人の大半が常識として共有しているのが本来の姿でしょう。

 したがって、僕に言わせれば、歴史の授業ではなく、国語の授業で、小学生のうちから徹底的に記紀神話を教え込むべきだと思うのですが、そういうことを言うと、左巻きの人たちは「戦前の皇国史観が大日本帝国の侵略戦争を支える役割を果たした」などと主張して反対するんでしょうな。困ったものです。

 
 なお、3月25日刊行予定の拙著『日の本切手美女かるた』では、神宮皇后については、旧高額切手を主役に取り上げました。実物ができあがりましたら、ぜひ、お手に取ってご覧いただけると幸いです。


 ★★★ 講座「切手と郵便物に刻まれた“終戦”」(2月20日)のご案内 ★★★ 

       ミズーリの消印

 2月20日13:00~14:30、愛知県名古屋市の栄中日文化センターで、「切手と郵便物に刻まれた“終戦”」と題する講座を行います。

 2015年は第二次世界大戦の終戦から70周年にあたります。終戦の年の1945年はあらゆる意味で社会が激変した年ですが、その影響は切手や郵便物にもさまざまな痕跡を残しています。今回の講座では、当時の切手や郵便物を読み解いていくことで、一般の歴史書では見落とされがちな終戦の諸相を、具体的なモノの手触りとともに明らかにしてみたいと思っています。

 詳細は、こちらをご覧ください。(画像は、日本の降伏文書調印が行われた米軍艦ミズーリ号から降伏文書調印日に差し出された郵便物の一部分です) 

 
 ★★★ よみうりカルチャー荻窪の講座のご案内 ★★★

 毎月1回(原則第1火曜日:3月3日、3月31日)、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で下記の一般向けの教養講座を担当します。

 ・イスラム世界を知る 時間は15:30-17:00です。

 次回開催は3月3日で、途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。


 ★★★ 内藤陽介の最新刊  『朝鮮戦争』好評発売中! ★★★ 

        朝鮮戦争表紙(実物からスキャン) 本体2000円+税

 【出版元より】
 「韓国/北朝鮮」の出発点を正しく知る!
 日本からの解放と、それに連なる朝鮮戦争の苦難の道のりを知らずして、隣国との関係改善はあり得ない。ハングルに訳された韓国現代史の著作もある著者が、日本の敗戦と朝鮮戦争の勃発から休戦までの経緯をポスタルメディア(郵便資料)という独自の切り口から詳細に解説。解放後も日本統治時代の切手や葉書が使われた郵便事情の実態、軍事郵便、北朝鮮のトホホ切手、記念切手発行の裏事情などがむしろ雄弁に歴史を物語る。退屈な通史より面白く、わかりやすい内容でありながら、朝鮮戦争の基本図書ともなりうる充実の内容。

 本書のご注文は版元ドットコムへ。同サイトでは、アマゾン他、各電子書店での注文ページにリンクしています。また、主要書店の店頭在庫も確認できます。

 *8月24日付『讀賣新聞』、韓国メディア『週刊京郷』8月26日号、8月31日付『夕刊フジ』、『郵趣』10月号、『サンデー毎日』10月5日号で拙著『朝鮮戦争』が紹介されました!


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