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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 コプトの切手
2015-02-16 Mon 23:34
 “イスラム国”を自称する過激派組織ダーイシュが、きのう(15日)、リビアで人質にしていたコプト(エジプトのキリスト教徒)の労働者21人を殺害したとする動画をネットに公開したことに対して、エジプト軍は、きょう(16日)、リビア国内のダーイシュ関連組織の拠点を空爆しました。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます。なお、ダーイシュの呼称については、こちらの配信動画で詳しくご説明いたしましたので、ぜひ、ご覧ください)

       エジプト・カイロのコプト地区

 これは、2004年にエジプトがカイロのコプト地区を題材として発行した切手です。

 コプトは、もともとはアラブ化される以前の古代エジプト王国の流れを汲むエジプト先住民のことですが、次第に、キリスト教の一派と結びついた概念となりました。

 すなわち、伝承によれば、西暦42年頃、マルコがアレクサンドリアにキリスト教会(アレクサンドリア教会)を建立したのがエジプトにおけるキリスト教の始まりとされています。

 451年のカルケドン公会議の後、キリスト教会は、「キリストは神性と人性という二つの本性を持つ」とするカルケドン派(両性説。現在のキリスト教多数派)を正統とし、「受肉によってキリストの人性は神性に融合されて一つの性=神性となった」とする単性論派を異端として排除しました。この時点では、エジプト先住民という意味でのコプトは双方の教会に属していましたが、もともと、エジプトでは単性論派が有力だったことに加え、641-42年にムスリムがエジプトを征服すると、東方正教会系のコプトはエジプトから逃れていきました。この結果、コプトは、エジプトの単性論派キリスト教会(ただし、彼ら自身は単性論派と呼ばれることを忌避しています)の信徒を指す言葉として使われるようになり、現在に至っています。

 現在、エジプトにおけるコプトの割合は人口(約8000万人)の5%程度というのが公式の数字ですが、実際には、1割程度いると推定されており、その中には、国連の事務総長を務めたブトロス・ブトロス=ガーリ―を始め、有力者も少なくありません。また、現行のエジプト憲法は“信教の自由”を保障しており、制度上、ムスリムとコプトの間で差別は無いことになっており、2007年には「ムスリムは自由に改宗することができる」とするファトワー(宗教令)も出されています。

 ただし、実際には、コプトはエジプト国内においては圧倒的な少数派であり、ムスリムからコプトへの改宗は現実の問題としてほぼ不可能です。また、2011年1月1日にはアレクサンドリアのコプト教会前でイスラム過激派によるテロ事件も発生しました。このため、エジプトのメディアは、社会的な安定のためにも、コプト側が少数派として差別されていると訴えている現状につき、政府は改善を行うべきであると提言しています。

 今回の一件は、エジプト政府として、コプトもエジプト国民の一員であり、国民に害をなす犯罪者集団のダーイシュに対しては断固とした措置を取るという姿勢を示したもので、リビア政府軍との共同作戦です。

 エジプトは、これまで、米軍主体の有志連合によるシリア・イラクでの対ダーイシュ空爆に参加してきませんでした。このため、今回、ダーイシュの犯罪に対して直接の制裁に踏み切ったことについて、ダーイシュとの戦いがイラクとシリアだけでなく、リビアにまで拡大したものと見る論評もメディアの一部にはあるようです。

 しかし、報道によれば、すでにリビア東部にはダーイシュの訓練施設や武器庫が存在していたうえ、先月には、ダーイシュに忠誠を誓う過激派組織がホテルを襲撃したほか、今月に入ってもラジオ局を占拠するなど活動を活発化させていたわけで、その点からすると、むしろ、いままで野放しにされていたリビアのダーイシュ(ないしはダーイシュに共鳴する過激派組織)に対しても、ようやく、国際社会の包囲網がかけられるようになったと見るのが妥当ではないかと思われます。

 いずれにせよ、今後の事態の推移に注目したいところです。


 ★★★ 講座「切手と郵便物に刻まれた“終戦”」(2月20日)のご案内 ★★★ 

       ミズーリの消印

 2月20日13:00~14:30、愛知県名古屋市の栄中日文化センターで、「切手と郵便物に刻まれた“終戦”」と題する講座を行います。

 2015年は第二次世界大戦の終戦から70周年にあたります。終戦の年の1945年はあらゆる意味で社会が激変した年ですが、その影響は切手や郵便物にもさまざまな痕跡を残しています。今回の講座では、当時の切手や郵便物を読み解いていくことで、一般の歴史書では見落とされがちな終戦の諸相を、具体的なモノの手触りとともに明らかにしてみたいと思っています。

 詳細は、こちらをご覧ください。(画像は、日本の降伏文書調印が行われた米軍艦ミズーリ号から降伏文書調印日に差し出された郵便物の一部分です) 

 
 ★★★ よみうりカルチャー荻窪の講座のご案内 ★★★

 毎月1回(原則第1火曜日:3月3日、3月31日)、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で下記の一般向けの教養講座を担当します。

 ・イスラム世界を知る 時間は15:30-17:00です。

 次回開催は3月3日で、途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。


 ★★★ 内藤陽介の最新刊  『朝鮮戦争』好評発売中! ★★★ 

        朝鮮戦争表紙(実物からスキャン) 本体2000円+税

 【出版元より】
 「韓国/北朝鮮」の出発点を正しく知る!
 日本からの解放と、それに連なる朝鮮戦争の苦難の道のりを知らずして、隣国との関係改善はあり得ない。ハングルに訳された韓国現代史の著作もある著者が、日本の敗戦と朝鮮戦争の勃発から休戦までの経緯をポスタルメディア(郵便資料)という独自の切り口から詳細に解説。解放後も日本統治時代の切手や葉書が使われた郵便事情の実態、軍事郵便、北朝鮮のトホホ切手、記念切手発行の裏事情などがむしろ雄弁に歴史を物語る。退屈な通史より面白く、わかりやすい内容でありながら、朝鮮戦争の基本図書ともなりうる充実の内容。

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 *8月24日付『讀賣新聞』、韓国メディア『週刊京郷』8月26日号、8月31日付『夕刊フジ』、『郵趣』10月号、『サンデー毎日』10月5日号で拙著『朝鮮戦争』が紹介されました!


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