内藤陽介 Yosuke NAITO
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 ペニーブラック
2015-05-01 Fri 11:35
 1840年5月1日に世界最初の切手としてペニーブラックが発行されて、きょう(1日)でちょうど175年です。というわけで、きょうはストレートにペニーブラックの画像を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

        ペニーブラック・未使用

 19世紀英国の郵便改革の具体的な第一歩は、ウィリアム4世統治下の1833年8月、庶民院(いわゆる下院)の新人議員、ロバート・ウォーラスが郵便制度改革の必要性を議会で訴えたことから始まりました。

 ウォーラスの提案を受けて1835年、ダンキャノン卿を長とする“郵政省に関する管理運営調査委員会”が院内に設置されると、郵便馬車の供給契約を公開入札にさせるなど、改革は一定の成果を挙げます。また、彼の努力により、1837年までに100以上もあった郵便関係の法律が5本に整理され、郵便改革に対する国民の関心も急速に高まりました。

 こうした時代背景の下で、“近代郵便の父”ローランド・ヒルが登場します。

 1837年、ヒルは『郵便制度の改革――その重要性と実行可能性』と題するパンフレットを刊行。郵便料金が高いため、人口の増加や産業の発展の度合いに比べて郵便の利用が増えない現状を指摘した上で、次のような提案を行いました。

 ①郵便料金を大幅に引き下げ、書状の基本料金を1ペニーとする。(料金引き下げによる需要の拡大)
 ②距離別の郵便料金制度をやめ、全国均一料金とする。
 ③手紙の用紙の枚数ではなく、重量別の料金体系を導入する。
 ④郵便料金は、受取人ではなく、差出人が支払う前納制とする。

 これらのうち、最後の提案が最終的にペニー・ブラックの発行につながるのですが、当初、ヒルは料金の前納方法として、①料金支払済みの印を郵便局の窓口で押す、②郵便料金込みのレターシート(便箋を折り曲げて封筒状にできるようにしたもの:マルレディ・カバーとして実現)を発売する、③裏にノリを引いた証紙を発売する(ペニーブラックとして実現)、という3種類の方法を考えていたといわれています。

 ヒルの提案は、商工業者や一般大衆をはじめ、有力紙『タイムズ』でも支持され、1837年11月から、庶民院に「郵便料金に関する特別委員会」が設けられ、1839年8月、ヒルの提案を盛り込んだ1ペニー郵便料金法が公布されました。1840年1月10日から、2分の1オンス以下の書状基本料金を原則として全国一律1ペニーとする1ペニー郵便(ロンドン市内に限定されていた旧ペニー・ポストと区別するため、こう呼ばれる)がスタートします。

 1ペニー郵便がスタートした時点では、まだ切手は登場していませんでしたが、ヒルは、新たに発行される郵便切手のデザインは英国を象徴するもので、国民に受け入れられ、なおかつ偽造防止という面もクリアしていなければならないと考えていました。このため、1839年12月、ヒルは、切手のデザインにヴィクトリア女王の肖像を用いる方針を最終的に決定します。

 古来、国王の肖像は貨幣に刻まれ、国民の間を流通していました。それは、本来、誰がその地域の支配者であるか、利用者に目に見えるかたちで示すためでしたが、国民の側では抽象的な愛国心を図像化するイコンの役割を果たすものでもありました。また、見慣れた人間の顔というのは、微細な変化であっても、見る者はすぐに違和感をおぼえるものだから、偽造防止という観点からも好ましいものでした。

 題材が決まると、女王のどの肖像を用いるかが次の問題となりますが、最終的に、1837年11月、女王のギルドホール訪問を記念して作られたメダル(彫刻者のウィリアム・ワイオンにちなんで“ワイオンのメダル”と呼ばれています)に刻まれた肖像が採用されることになりました。

 このワイオンのメダルを元に、当時、最高水準の技術を誇っていたパーキンス・ベーコン・アンド・ペッチ社(以下、パーキンス・ベーコン社)に切手の製造が発注されます。そして、同社の依頼を受けて、デザイナーのヘンリー・コーバウルドが切手に用いる女王の肖像の下絵を作成。パーキンス・ベーコン社の首席彫刻者であったチャールズ・ヒースが原版を彫刻。紙幣と同じ印刷方式の凹版印刷で切手が製造されました。

 こうして、1840年4月27日までに6815万8080枚(1シートは240面なので、シート単位では28万3992シート)の切手がロンドン中央郵便局に搬入され、さらに、英国各地の郵便局に配給され、5月1日、世界最初の切手ペニー・ブラックが発売されました。ただし、実際に郵便に使用できたのは、5月6日以降のことです。

 切手の評判は上々で、発売初日のロンドン管内だけで60万枚の切手が売りさばかれました。また、5月半ばには、切手の供給が需要に追いつかず、パーキンス・ベーコン社は徹夜作業で1日50万枚もの切手を製造したといわれています。


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