内藤陽介 Yosuke NAITO
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 天津加刷切手
2015-08-13 Thu 22:12
 中国天津市港湾部の浜海新区で、昨晩(現地時間12日午後11時半)、危険化学物質を貯蔵する物流企業の倉庫で大きな爆発があり、きょう(13日)の夕方までに死者50人、負傷者は700人以上という大惨事になりました。亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、被害を受けられた方には心よりお見舞い申し上げます。というわけで、きょうは天津がらみでこの1枚です。(画像はクリックで拡大されます)

      イタリア・天津加刷

 これは、天津のイタリア局で使うために発行された加刷切手です。

 リソルジメント(祖国統一運動)のゆえに、他の西欧諸国に比べて海外進出、特に、極東進出が遅れたイタリアでしたが、1900年の義和団事件に出兵し、ようやく、中国進出を開始。1902年、市内を縦断するように流れる“海河”の左岸、天津駅の西側一帯にイタリア租界を設定しました。ちなみに、今回の大爆発の現場は、旧イタリア租界のあった地区からは50km以上離れていますので、爆発の直接的な影響はなかったのではないかと思います。

 天津のイタリア租界では、上海を本店とした清朝との合弁銀行である“震義銀行(チャイニーズ・イタリアン銀行)”が紙幣を発行しており、当初、租界内の郵便局ではイタリア本国の切手がそのまま持ち込まれて使われていました。

 ところが、1914年に始まった第一次世界大戦の余波で、中国で広く使われていた上海ドルの為替相場が暴落し、中国国内に郵便局を設置していた列強諸国は切手の販売に関して対策を講じなければならなくなりました。暴落した上海ドルで従来どおり外国の切手を買い、それを発行国の通貨で換金するという投機が横行すれば、切手の発行国は損失を被ることになるからです。

 このため、1917年早々、イギリスが植民地香港の切手に“CHINA”の文字を加刷した切手の発売・使用し始めたのにならい、天津のイタリア局では本国切手に“Tientsin”と加刷した切手を発売。加刷切手は天津の郵便局以外では受け付けないこととしました。

 その後、加刷切手は、1922年に中国の領土保全と主権の尊重を定めたワシントン条約(9ヵ国条約)が調印され、同年末をもって、天津のイタリア局を含め、列強諸国が中国本土においた郵便局が原則として閉鎖されるまで使用されました。

 しかし、ワシントン条約は租界の存在そのものを否定したわけではないので、天津のイタリア租界はその後も残り続けます。

 すなわち、1941年、太平洋戦争が勃発すると、各地に残っていた米英系の租界は日本軍が占領し、フランス(当時、ドイツ占領下のヴィシー政府は日本に好意的な中立を保っていました)の租界は実質的な日本の支配下に置かれました。そして、1943年1月から、日本は占領地に樹立された親日派の汪兆銘政権に各国の租界を返還します。

 当初、イタリアは枢軸陣営の一角として日本とともに連合諸国と戦っていたため、天津のイタリア租界はそのまま維持されていましたが、1943年9月、イタリアが連合国に降伏すると、日本軍は天津のイタリア租界に進駐し、これを接収して汪兆銘政権に返還しています。こうして、上海に最初の租界が誕生してから100年目にして、天津のイタリア租界を最後に、中国の租界は姿を消すことになりました。

 なお、マルコ・ポーロ広場を中心に、赤レンガを基調としたイタリア風の建築が立ち並ぶ旧イタリア租界の景観は、現在でも“意式風情区”として保存されており、かつてのイタリア領事館は、天津市河北区委員会の建物として現在でも利用されています。


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