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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 切手歳時記:透けて見えるは…
2015-08-16 Sun 08:35
 ご報告が遅くなりましたが、公益財団法人・通信文化協会の雑誌『通信文化』8月号ができあがりました。僕の連載「切手歳時記」では、今回は、8月14-16日、東京・深川の神明宮で3年に1度の本祭が行われるということで、その神明宮の門前で生まれた伊東深水の夏の絵ということで、この切手を取り上げました。(画像はクリックで拡大されます)

      指(深水)

 これは、「指」を取り上げた1974年の趣味週間切手です。

 神明宮の門前で1898年に生まれた伊東深水は、生後すぐに養子に出され、幼少時に養父が道楽に走って失業して一家離散を経験するなどの辛酸をなめましたが、鏑木清方という師に恵まれ、1912年には『のどか』が第12回巽画会展で初入選を果たし、新進画家として知られるようになります。

 そんな深水が、2歳年上の永井好子と結婚したのは1919年のことで、2人は東京府荏原郡大井町南浜川(現品川区南大井)に新居を構えました。

 深水は好子をモデルにした作品を数多く残していますが、その代表格というべきなのが、今回ご紹介の切手にも取り上げられた「指」です。

 「指」は、結婚から3年が過ぎた1922年、平和記念東京博覧会に出品して二等銀牌を受賞した作品。ちなみに、このときの一等金牌は堂本印象の「猫」でした。

 作品は、南浜川の自宅庭先で、黒い絽または紗の着物で竹の床几に座り、湯上りに夕涼みをしている彼女を、輪郭線のない“朦朧体”を効果的に使って情感豊かに描き出した作品です。

 ちなみに、絽と紗は、7月から8月にかけての盛夏の時季の着物の生地。どちらも二本の経糸を捩りながら緯糸と織り込んだもじり織で、透けた感じがいかにも涼しげですが、フォーマルなのは絽の方で、絽に比べると紗の方がより透けた感じになります。その性質を活かして、紗の下に白い襦袢を重ねて、あえて透けさせることで、清涼感を演出するのが、夏の女性のカジュアルな御洒落でした。

 ところで、「指」の絵をよく見てみると、好子の太腿のあたりの肉の色に比べて、顔や指先を含む上半身は真っ白で、色味が全然違うのがお分かりかと思います。

 長い間、僕はこの違いを、上半身は白い袖なしの襦袢を着ているためだとばかり思っていました。だから、今回の原稿を書くにあたって、白粉を塗った肌と白い襦袢の境目がどこにあるのか確認してみようと、展覧会の図録などをひっくり返して、大きな画像で「指」をじっくり見てみたのですが、よくよくみると、左手が着物の襟元と交わるあたりに何やらピンク色の輪が見えるのがわかりました。まぎれもなく、乳首です。ということは、好子は襦袢を着ておらず、その白い身体は白粉のせいだったというわけですな。

 江戸時代の女性は上半身の全体に白粉を塗りたくるのが一般的だったということは知識として知っていましたが、この絵を見る限り、関東大震災の頃まで、そうした習慣は残っていたことがわかります。

 ちなみに、上半身全体に白粉を塗る習慣が廃れたのは、当時の白粉には水銀や鉛が使われており、それゆえ、母親の乳房についた白粉を乳児が舐めると中毒症を起こすおそれがあるということが広く知られるようになったためです。

 日本のヌード切手というと、1969年の趣味週間切手に取り上げられた「髪」が有名ですが、「指」もまた“ヌード切手”だったことは気が付かない方も多かったのではないかと思います。

 なお、題名からしばしば誤解されるのですが、絵の中の好子が見ているのは指そのものではなく、左手の薬指にはめられた結婚指輪です。ただし、切手の小さな印面では、肝心の指輪が全く見えないのが残念ですが…。

 ちなみに、深水と好子の結婚生活については、拙著『日の本切手美女かるた』でも触れておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。


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 【出版元より】
 “日の本”の切手は美女揃い!
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 <解説・戦後記念切手>全8巻の完成から5年。その著者・内藤陽介が、こんどは記念切手の枠にとらわれず、日本切手と“美女”の関係を縦横無尽に読み解くコラム集です。切手を“かるた”になぞらえ、いろは48文字のそれぞれで始まる48本を収録。様々なジャンルの美女切手を取り上げています。

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