内藤陽介 Yosuke NAITO
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 ナポレオンの愛したワイン
2015-09-24 Thu 19:49
 きのう(23日)、英イングランド南部ソールズベリーで開催されたオークションで、セントヘレナ島で流刑生活を送っていた皇帝ナポレオン1世の食事ぶりを示す目録が976ポンド(約18万円)で落札され、ワイン50本、カモ4羽、ブタの丸焼きなどの豪華な内容が話題となっているそうです。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

      グルート・コンスタンシア

 これは、南アフリカ連邦が1939年に発行した南ア最古のワイナリー、グルート・コンスタンシアの切手(国名表記が英語のモノとアフリカーンス語のモノの連刷)です。
 
 南アフリカのテーブル・マウンテンの山麓にオランダ人が建設したステレンボッシュの開拓地は1682年に地方自治体となり、翌年には学校も開設されるなど、急速に発展。1685年には総督のファン・デル・ステルが近郊にマナー・ハウスと呼ばれる住居を建設するとともに、オランダ改革派教会の教区も設定されました。さらに、1689年、マナー・ハウスの周囲に750ヘクタールのブドウ畑を開拓。これが、現在、南ア有数のワイン生産地となっているコンスタンシア地区のルーツとなり、マナーハウスは、切手に取り上げられているグルート・コンスタンシアとなりました。

 1778年、グルート・コンスタンシアの経営者であったヘンドリック・クローテは、デザート・ワインの傑作とされる“コンスタンシア”を作り出すことに成功。ヘンドリックの死後、コンスタンシアのワイナリーは息子のヘンドリックJrを経て、孫のヤコブ・ピーターが後を継ぎます。このヤコブ・ピーターはフランス語を巧みに操り、パリにコンスタンシアの代理店を開設しました。

 時あたかも、ナポレオン戦争の時代で、フランスのワイン産業が大きな打撃を受けたことに加え、英仏間の貿易も途絶したことから、コンスタンシアはその空白を埋めるかのように、シャトー・ディケム(フランス産の最高級貴腐ワイン)、トカイ(ハンガリー産貴腐ワイン)、マデイラ(ポルトガル産ワイン)に勝るとも劣らぬ最上級のデザート・ワインとしてヨーロッパの上流社会を席捲します。

 ナポレオン失脚後、王政復古を果たしたフランス国王、ルイ・フィリップはコンスタンシアを輸入するためケープ植民地に使者を派遣し、セントヘレナに流された失意のナポレオンもコンスタンシアを飲み無聊を慰めたとされています。今回のニュースに登場した目録にも、おそらく、コンスタンシアについての記述があるはずです。

 その後、クローテ家はグルート・コンスタンシアの経営権を南ア政府に売却。その結果、グルート・コンスタンシアは実験的なワイン農場となり、コンスタンシアの生産も下火になっていました。しかし、コンスタンシア地区の農場の一部を引き継いだワイナリー、クレイン・コンスタンシアが、1980年代に入り、かつての記録をもとに“ヴィン・デ・コンスタンス”の名でコンスタンシア・ワインを復活させました。

 その製法は、干しぶどうになるまで完熟させてから収穫したムスカデ・フロンティニャン種をステンレス・タンクで発酵させた後、フレンチ・オークの樽で18ヶ月熟成させ、さらに瓶詰め後2年熟成させるというもので、出荷までには4年以上の年月が必要となします。また、ワイナリーのこだわりとして、ボトルも、19世紀以前の職人が手作業で作っていた時代の形を再現し、わざとゆがんだ形になっています。(画像はボトルの写真です)

      コンスタンシア・ボトル

 手間のかかるワインだけに量産は不可能で、年間の生産数はわずか3000本。日本国内には数十本しか入荷しないという貴重品で、1本1万数千円の値がつけられていることが多いようです。世界の高級ワインの中には、1本3万円以上というものもざらにあることを考えると、絶対に手が届かない高嶺の花ということにはならないでしょうが、何分にも数が少ないので、値段以上に入手は難しいのではないかと思います。僕自身は1回だけ飲んだ経験からすると、まぁ、デザート・ワインですから、基本的に甘いことは甘いのですが、たしかに、上品で王侯貴族が好みそうな雰囲気ではありましたな。

 なお、コンスタンシア・ワインを含む南アワインの歴史については、拙著『喜望峰』でもまとめておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。
 

 ★★★ トークイベント「切手に見る美女たち」のご案内 ★★★ 

 10月8日(木) 18:30-20:30 東京・飯田橋の東京ボランティアセンター(JR飯田橋駅横・ラムラ・セントラルプラザ10階)で、日本ガルテン協会主催のリレー講座に内藤が登場。『日の本切手 美女かるた』の著者として「切手に見る美女たち」と題するトークを行います。

 参加費は、ガルテン協会会員の方2000円(一般3000円)で、お茶とお菓子がつきます。詳細はこちらをご覧いただくか、NPO日本ガルテン協会(講座担当宛・電話 03‐3377-1477)までお問い合わせください。皆様のご参加をお待ちしております。  

 ★★★ 講座「アウシュヴィッツの手紙」(10月16日)のご案内 ★★★ 

     ポーランド・アウシュヴィッツ解放30年   アウシュヴィッツの労務風景

 10月16日(金) 19:00~20:30、愛知県名古屋市の栄中日文化センターで、「アウシュヴィッツの手紙」と題する講座を行います。

 第二次大戦中、ポーランド南部のアウシュヴィッツ(ポーランド語名・オシフィエンチム)は、ナチス・ドイツの強制収容所が置かれ、ユダヤ人を中心に150万人以上が犠牲となった悲劇の地として知られています。今回の講座では、収容者の手紙を中心に、第二次大戦以前の状況を物語る郵便物・絵葉書、アウシュヴィッツを題材とした戦後の切手などもご紹介しつつ、さまざまな角度からアウシュヴィッツを考えてみたいと思います。

 申込方法など詳細は、こちらをご覧ください。(画像は、ポーランドが発行したアウシュヴィッツ解放30周年の記念切手、右側は収容者による労務風景を取り上げた戦後作成の絵葉書です) 皆様のご参加をお待ちしております。

 
 ★★★ よみうりカルチャー荻窪の講座のご案内 ★★★

 10月から毎月1回(原則第1火曜日:10月6日、11月 3日、12月1日、1月5日、2月2日、3月1日)、よみうりカルチャー荻窪(読売・日本テレビ文化センター、TEL 03-3392-8891)で下記の一般向けの教養講座を担当します。(下の青い文字をクリックしていただくと、よみうりカルチャーのサイトに飛びます)

 ・イスラム世界を知る 時間は15:30-17:00です。

 初回開催は10月6日で、途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。


 ★★★ 内藤陽介の最新刊  『日の本切手 美女かるた』  好評発売中! ★★★ 

        税込2160円

 4月8日付の『夕刊フジ』に書評が掲載されました!

 【出版元より】
 “日の本”の切手は美女揃い!
  ページをめくれば日本切手48人の美女たちがお目見え!
 <解説・戦後記念切手>全8巻の完成から5年。その著者・内藤陽介が、こんどは記念切手の枠にとらわれず、日本切手と“美女”の関係を縦横無尽に読み解くコラム集です。切手を“かるた”になぞらえ、いろは48文字のそれぞれで始まる48本を収録。様々なジャンルの美女切手を取り上げています。

 出版元のサイトはこちら、内容のサンプルはこちらでご覧になれます。ネット書店でのご購入は、アマゾンboox storee-honhontoYASASIA紀伊國屋書店セブンネットブックサービス丸善&ジュンク堂ヨドバシcom.楽天ブックスをご利用ください。


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