内藤陽介 Yosuke NAITO
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 グラスゴーで37年ぶり金メダル
2015-10-30 Fri 11:26
 英国グラスゴーで開催中の体操の世界選手権で、きのう(現地時間28日夜)、男子団体総合の決勝があり、日本は1978年のストラスブール大会以来、37年ぶり6回目の優勝を果たしました。というわけで、これを祝してグラスゴー関連のマテリアルは何かないかと思って探してみたら、こんなモノがありました。(画像はクリックで拡大されます)

     5条郵便

 これは、1822年10月3日、ニューキャッスルからグラスゴー宛の郵便物で、ニューキャッスルで5条郵便の適用を受けたことを示す朱印が押されています。

 1801年、英国では官営ペニー・ポストの料金を1ペニーから2ペンスに値上げする法律(ジョージ3世治世第41年法律第7号)が施行されましたが、同法の第5条に基づく“いわゆる5条郵便(5th Clause Post)”と呼ばれる地域の集配制度が制度化されます。

 かつての英国の官営郵便の配達先は原則として宿駅までで、戸別配達は行われていませんでした。このため、ロンドンでは1680年にドクラのペニー・ポストが創業され、1682年にそれが官営化されるというプロセスをたどったわけですが、その他の地方都市では、郵便局長が私的にスタッフを雇い、宿駅周辺の各戸から手数料を取って戸別配達を行ったり、各戸から郵便局まで郵便物を運んだりすることが行われていました。

 そうした私的な集配サーヴィスは、地域や時代によって差はありますが、1通あたり官営郵便の正規料金に1ペニー上乗せして受取人が支払うというケースが一般的で、1ペニーは局長の収入になります。

 その後、1765年の法律(ジョージ3世治世第5年法律第25号)では、郵政長官が必要と認めた市町村に官営ペニー郵便を設置できることになりましたが、その一方で、官営のペニー・ポストが設置された地域には局長が許可なく私的な戸別集配を行うことが原則として禁止されます。

 この新制度の下で1773年、アイルランドのダブリンで官営ペニー・ポストがスタートしましたが、事業としての収益を挙げることはできませんでした。このため、官営ペニー・ポストは他の都市には広まらず、1793年になって、ようやく、イングランドでもバーミンガム、ブリストル、マンチェスターの3都市にペニー・ポストが導入されましたが、3都市の局長は、それまでの私的な戸別集配による収入を失ったにもかかわらず、ペニー・ポストの配達員の賃金を負担しなければならなかったため、補償を求める声が上がります。

 そこで、1801年の法律では、“5条郵便”というかたちで、人口の少ない村などが自ら集配員を雇い、料金を取って村と宿駅の間を往来する郵便サーヴィスが認められたわけです。

 5条郵便の最大の特徴は、官営郵便の正規料金については無料の特権を持つ政府関係者や議員や、郵便料金としては無料の扱いだった新聞郵便などからも、きっちり、宿駅と宛先の間の料金を徴収できるようにしていたことにあります。
 郵便料金の無料特権を持つ有力者や新聞社などへは相当な数の郵便物が発着しますから、そこからもきっちり手数料を徴収できれば相応の収入が見込めます。
 
 したがって、1801年の法律が施行されると、増収を見越して5条郵便を導入する地域が相次ぎ、英国内の郵便網は拡充していきました。今回ご紹介の郵便物も、そうした5条郵便の実例です。

 しかし、5条郵便が広がっていくことに対して、郵便料金無料の特権を有する勢力が黙っているはずもなく、1806年、5条郵便が彼らから料金を徴収することは禁じられてしまいました。その結果、各地の5条郵便の収益は悪化。新たに5条郵便を導入する地域もほとんどなくなってしまいました。

 そこで、1808年以降、各地の5条郵便を官営のペニー・ポストに転換したり、あるいは、5条郵便のなかった地域には新たに官営のペニー・ポストを導入したりするなどして、産業革命の時代に適合した郵便網の拡充が図られていくことになります。

 さて、本日から開催の全国切手展<JAPEX>会場内で、一般書店に先駆けて先行発売となる拙著『英国郵便史 ペニー・ブラック物語』では、今回ご紹介した5条郵便をはじめ、世界最初の切手、ペニー・ブラックが発行される以前の英国の郵便制度の変遷についてもわかりやすくまとめております。また、あさって(1日)には、刊行記念のトークイベントも行いますので、なにとぞよろしくお願いします。


 ★★★ <JAPEX> トークイベントのご案内 ★★★

   アウシュヴィッツの手紙・表紙  ペニーブラック表紙   

 東京・浅草で開催される全国切手展<JAPEX>会場内で、下記の通り、拙著『アウシュヴィッツの手紙』ならびに『英国郵便史 ペニー・ブラック物語』の刊行記念のトークイベントを予定しております。よろしかったら、ぜひ遊びに来てください。なお、詳細は主催者HPをご覧いただけると幸いです。

 ・10月30日 15:30~ アウシュヴィッツの手紙
 ・11月1日  14:00~ 英国郵便史 ペニーブラック物語

 ★★★ イベントのご案内 ★★★ 

 ・11月7日(土) 09:30- 切手市場
 於 東京・日本橋富沢町8番地 綿商会館
 詳細は主催者HPをご覧ください。新作の『アウシュヴィッツの手紙』ならびに『ペニー・ブラック物語』を中心に、拙著を担いで行商に行きます。 会場ならではの特典もご用意しております。ぜひ遊びに来てください。

 ★★★ 内藤陽介の新刊  『ペニー・ブラック物語 のご案内 ★★★ 

       ペニーブラック表紙 2350円+税

 【出版元より】
 若く美しい女王の横顔に恋しよう!
 世界最初の切手
 欲しくないですか/知りたくないですか

 世界最初の切手“ペニー・ブラック”…名前は聞いたことがあっても、詳しくは知らないという収集家も多いはず。本書はペニー・ブラックとその背景にある歴史物語を豊富なビジュアル図版でわかりやすく解説。これからペニー・ブラックを手に入れたい人向けに、入手のポイントなどを説明した収集ガイドもついた充実の内容です。

 発売元の特設サイトはこちら。ページのサンプルもご覧いただけます。

 ★★★ 内藤陽介の新刊  『アウシュヴィッツの手紙』 のご案内 ★★★ 

       アウシュヴィッツの手紙・表紙 2000円+税

 【出版元より】
 アウシュヴィッツ強制収容所の実態を、主に収容者の手紙の解析を通して明らかにする郵便学の成果! 手紙以外にも様々なポスタルメディア(郵便資料)から、意外に知られていない収容所の歴史をわかりやすく解説。

 11月11日刊行予定ですが、現在、版元ドットコムamazonhontoネットストア新刊.netの各ネット書店で予約受付中ですので、よろしくお願いします。

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