内藤陽介 Yosuke NAITO
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 切手に見るソウルと韓国:浦項総合製鉄
2015-11-02 Mon 10:04
 ご報告が大変遅くなりましたが、『東洋経済日報』10月9日号が発行されました。今回の刊行時期は、変圧器などに使われる方向性電磁鋼板の製造技術を不正取得したとして新日鉄住金が韓国の鉄鋼最大手POSCO(ポスコ)に対して損害賠償支払いなどを求めていた訴訟で、ポスコが新日鉄住金側に300億円の和解金を支払ったことが話題になっていた時期ですので、この切手をご紹介しました。(画像はクリックで拡大されます)

      浦項総合製鉄

 これは、1973年7月3日、の竣工式には、ポスコの前身、国策会社・浦項総合製鉄株式会社の第1期工事の竣工式に合わせて発行された記念切手で、工場と電気炉が描かれています。

 韓国が巨大製鉄所の建設を検討するようになったのは、1966年に訪米した朴正煕大統領が現地の製鉄工場を視察して以来のことといわれています。

 その後、“鉄は国家なり”と考えた朴正煕は、地元・慶尚北道の港町、浦項の広大な荒地に目をつけ、1968年4月1日、国策会社として浦項製鉄株式会社を創立。軍出身で首相経験者の朴泰俊を社長に据えて、製鉄所の建設に本格的に乗り出しました。

 製鉄所の規模は、ソウル・汝矣島の3倍に達する270万坪の敷地に、道路の長さだけで80キロを超えるという巨大なもので、1970年4月に着工されました。工事費の総額は1215億ウォン。これは、1970年6月に開通した京釜高速道路の建設費用の約3倍に相当する額です。

 当然のことながら、これだけの巨大プロジェクトであったため、韓国側にとって資金調達には相当の困難がありました。しかも、重化学工業の育成を急ぐため、浦項製鉄所のプロジェクトと併行して、麗水の石油化学プロジェクトが行われていたこともあり、日本の通産省(当時)に協力を求めて陳情に訪れた関係者が、日本側の担当者から“万博と五輪を同時にやるようなもの”と揶揄されたこともあったとそうです。

 最終的に、1973年に完了した第1期工事の費用のうち、約6割に相当する1億6800万ドルは外国資本によって得られましたが、その内訳は、①日韓基本条約に伴う請求権資金(経済協力金)より無償3080万ドル、②同有償4642万8000ドル(年利3.5%、7年猶予、13年返済)。③日本輸出入銀行より5449万8000ドル(年利5.875%、1年猶予、11.5年返済)、④Japan oriental cottonより1398万7000ドル(年利6.5%、1年猶予、10年返済)、⑤VOEST company of Austriaより2434万5000ドル(年利6.5%、3.4年猶予、8.5年返済)で、日本からの資金が圧倒的です。

 一方、技術面では、1968年の会社設立当初より、八幡製鉄と富士製鐵、さらに日本鋼管(現JFEスチール)が技術支援を行っています。このうち、八幡製鉄と富士製鉄は1970年に合併して新日本製鉄となり、その後、住友金属工業と合併して現在の新日鉄住金になったという経緯がありますから、ポスコとは当初から浅からぬ因縁があったということになります。

 浦項総合製鉄の第1期工事が完成し、生産が開始されたのは1973年6月9日午前7時半過ぎのことで、7月3日の竣工式には、今回ご紹介の記念切手も発行されています。ちなみに、1973年当時の粗鋼生産高は、年産103万トンでした。

 その後、日本の援助によって3回にわたって拡張事業が行われ、1983年には粗鋼生産能力910万トン規模の浦項製鉄所が完成。さらに、1985年からは、全羅南道で光陽製鉄所第一期設備が着工し、1992年、四半世紀にわたる製鉄所建設が最終的に完成しました。ちなみに、現在は浦項ではなく、光陽の製鉄所が主要拠点です。

 その後、浦項製鉄は2000年に民営化された後、2002年、社名をPOSCO(ポスコ)に変更して現在にいたっています。

 なお、浦項総合製鉄に限らず、日本の経済支援・技術支援が漢江の軌跡を支えていたということについては、拙著『韓国現代史』でもいろいろとご説明しておりますので、機会がありましたら、ご覧いただけると幸いです。


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