内藤陽介 Yosuke NAITO
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 泰国郵便学(39)
2015-11-06 Fri 12:18
 ご報告がすっかり遅くなりましたが、財団法人・日本タイ協会発行の『タイ国情報』第49巻第5号ができあがりました。その記事の中から、きょうはこの切手をご紹介します。(画像はクリックで拡大されます)

      タイ・シーナカリン72歳

 これは、1972年10月21日、国王ラーマ9世の母親であるシーナカリンタラー=ボーロマラーチャチョンナニー王太后(以下、シーナカリン)が72歳を迎えたことを記念して発行された切手で、貧しい老人を慰問する彼女の姿が取り上げられています。

 シーナカリンは旧名サンワーン・タラパット。1900年10月21日に華僑の金細工職人の娘としてトンブリーに生まれました。9歳の時に両親と死別しましたが、ペッチャブリーラーチャシリントーン王女の宮女として出仕し、サットリーウィッタヤー学校に通う機会を得ます。16歳の時からシリラート病院に看護婦として勤務していましたが、王室の奨学金を得て米国に留学。20歳の時、留学先で“タイ近代医学の父”と称されたソンクラーナカリン親王(ラーマ5世69番目の子)と結婚し、ソンクラーナカリン親王の留学に付き添い、1923年にロンドンでカンラヤーニワッタナー王女を、1925年にハイデルベルクでアーナンタマヒドン王子を、1927年に米国マサチューセッツ州でプーミポンアドゥンラヤデート王子を産みました。

 ソンクラーナカリンは王族として最高位にランクされるチャオファーの階級にありましたが、シーナカリンは平民の出身であったため、当初、彼女の3人の子は王族としては最下位のモムチャオの階級とされていました。しかし、当時の国王ラーマ7世には後継者がなかったため、1927年、3人の子はチャオファーに次ぐプランチャオの階級(原則として、王と平民の子もしくはチャオファーの王族と王族出身の側室の子)に格上げされます。

 1928年、一家はタイに帰国。翌1929年、ソンクラーナカリンが亡くなると、シーナカリンは、一時、義母でタイ赤十字社総裁を務めていたサワーンワッタナー王女の住むサラパトゥム宮殿に身を寄せましたが、3人の子を連れて子供の教育のためにスイスのローザンヌに渡ります。

 彼女と子供たちがローザンヌ滞在中の1935年、立憲革命の混乱でラーマ7世が退位すると、国会の決定によりアーナンタマヒドン王子が国王ラーマ8世として即位し、シーナカリンはいちやく“国王の母”となりました。ただし、ラーマ8世は年少で学業も半ばであったため、国王としての即位の儀式を行うために一時帰国したものの、すぐにローザンヌに戻っています。

 1945年、一家はタイに帰国しましたが、翌1946年にラーマ8世が変死。これを受けて、弟のプーミポンアドゥンラヤデートが国王ラーマ9世として即位し、シーナカリンは引き続き“国王の母”の立場を維持することになります。

 ラーマ9世の即位後のシーナカリンは、1960年の国王外遊時に摂政として国王の業務を代行したほか、北部の少数民族地域に関心を寄せ、国境警備隊の名誉隊員にも就任しました。

 国境警備隊は、1951年、共産中国の影響が東南アジアに波及することを恐れた米CIAの支援を受けて結成された準軍事組織で、国境警備と反乱鎮圧を主な任務です。
 
 シーナカリンは、国境警備隊の名誉隊員として、積極的に山岳民族地域を訪問しているだけでなく、無料で山岳を巡回する医師達の活動を支援するなど、数多くの慈善活動に従事しています。
 
 切手のシーナカリンは国境警備隊員としての制服・制帽姿であり、山岳民族からソムデット・ヤー(“祖母陛下”の意味)と呼ばれて親しまれた彼女の人柄を想起させるデザインです。


 ★★★ イベントのご案内 ★★★ 

 ・11月7日(土) 09:30- 切手市場
 於 東京・日本橋富沢町8番地 綿商会館
 詳細は主催者HPをご覧ください。新作の『アウシュヴィッツの手紙』ならびに『ペニー・ブラック物語』を中心に、拙著を担いで行商に行きます。 会場ならではの特典もご用意しております。ぜひ遊びに来てください。

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 ★★★ 内藤陽介の新刊  『アウシュヴィッツの手紙』 のご案内 ★★★ 

       アウシュヴィッツの手紙・表紙 2000円+税

 【出版元より】
 アウシュヴィッツ強制収容所の実態を、主に収容者の手紙の解析を通して明らかにする郵便学の成果! 手紙以外にも様々なポスタルメディア(郵便資料)から、意外に知られていない収容所の歴史をわかりやすく解説。

 11月11日刊行予定ですが、現在、版元ドットコムamazonhontoネットストア新刊.netの各ネット書店で予約受付中ですので、よろしくお願いします。

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