内藤陽介 Yosuke NAITO
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 ローランド・ヒル誕生日
2015-12-03 Thu 09:50
 きょうは、世界最初の切手、ペニー・ブラックの発案者、ローランド・ヒルの誕生日(生年は1795年)です。というわけで、きょうはこんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      ブラジル・ローランドヒル・シート

 これは、1938年にリオデジャネイロで開催された国際切手展<BRAPEX>に際してブラジルが発行した記念切手のシートで、単片切手には、ローランド・ヒルとペニー・ブラック、ブラジル最初の切手“牛の目”が描かれています。ローランド・ヒルの肖像が描かれた切手としては、これが最初の1点となります。

 ローランド・ヒルは1795年、イングランド・ウスターシャー州のキダーミンスター生まれ。父親のトマスは社会主義の原型ともいうべき社会改良主義者(ちなみに、マルクスとエンゲルスの『共産党宣言』が出版されたのは、およそ半世紀後の18481年です)で、特に教育改革に興味を持っており、1803年、バーミンガム郊外の廃校を買い上げてヒル・トップ・スクールを開校しました。同校は、それまでにはなかった自由な校風が評判となり、新しい時代を象徴するモデル校と称賛されました。理数系の分野に秀でていたローランドは、12歳の頃から、父親の経営する学校で学びながら、下級生の授業を担当しています。

 ヒル・トップ・スクールの成功に気をよくした一家は、1819年、バーミンガム郊外にヘイゼルウッド・スクールを開校。その運営はローランドを含むヒル3兄弟が中心になっていましたが、当時23歳になっていたローランドは、同校の建築デザインを担当しただけでなく、事実上の責任者として、当時としては珍しかった少人数クラス制を取り入れるなど、革新的な教育を実践しました。そして、その成果を盛り込んだ教育改革案を1822年に発表し、いちやく、教育者・教育改革者として広く知られる存在となります。

 勢いに乗る3兄弟は、1827年、ロンドンに進出し、3校目の学校を北ロンドンのトテナムのブルース・カッスルに開校。ローランドは正式に校長に就任し、キャロライン・ピアソンと結婚するなど、生活も安定し始めました。ところが、良くも悪くも進取の気性に富みすぎていたローランドは、ほどなくして、ブルース・カッスルの校長職を弟に譲り、発明と社会改革の提案に熱中するようになります。

 教育者だったローランドは、バーミンガム時代、文字の読める者が、ロンドンで発行された数日遅れの新聞を大声で読み上げて、人々にその内容を知らせるという光景を日常的に目にして、どんな立派な改革や制度であっても、それを庶民が容易に知ることができなければ意味がないと考えるようになり、情報と通信の分野での確信を目指そうとしたのです。

 当時、彼が特許を取得しようとしたアイディアとしては、たとえば、新聞印刷のための輪転機の原型、モールス信号の原型、道路舗装の原型、郵便物をより早く届けるため、郵便物を弾薬やテューブを使って飛ばす仕組等がありますが、いずれも日の目を見ませんでした。

 ところで、1831年、南オーストラリア会社が設立され、入植希望者への土地の売却が開始されます。こうして、従来の流刑植民地とは異なる、自由植民地(自由意思による移民によって建設された植民地)としての南オーストラリア州が建設されることになりました。

 この機会をとらえ、1832年、ヒルは貧困を解消し、犯罪を減少させるためには、英国内の人口の過密を緩和することが必要で、そのためには、オランダに倣った海外移民政策をすべきと提案します。これが、南オーストラリアでの植民地建設の推進役となっていたエドワード・ウェイクフィールドの目に留まり、1833年、ヒルは南オーストラリア植民地化委員会のメンバーに抜擢されました。同委員会での活動は1839年まで続き、1836年末以降の州都アデレードの建設という形で実を結ぶことになります。

 南オーストラリア植民地化委員会の仕事を通じて、英国政府とのコネクションができたヒルは、過去の経験もあって郵便改革にも強い関心を示し、改革の推進役であったウォレスの知遇を得て、1836年、郵便改革に関する膨大な資料を入手しました。

 それらを子細に検討して結果を踏まえ、1837年1月4日、ヒルは『郵便制度の改革――その重要性と実行可能性』と題するパンフレット(の初版)を刊行。郵便料金が高いため、人口の増加や産業の発展の度合いに比べて郵便の利用が増えない現状を指摘した上で、郵便料金を大幅に引き下げ、書状の基本料金を1ペニーとすることなどを骨子とした郵便改革を提唱。これが、最終的に、1840年5月のペニー・ブラックの発行につながっていくことになります。

 なお、このあたりの事情につきましては、拙著『英国郵便史 ペニー・ブラック物語』でも詳しくご説明しておりますので、機会がありましら、ぜひご覧いただけると幸いです。 


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