内藤陽介 Yosuke NAITO
http://yosukenaito.blog40.fc2.com/
World Wide Weblog
 『海難1890』きょうから公開
2015-12-05 Sat 01:38
 日本・トルコ友好125周年企画として、1890年に起きたエルトゥールル号遭難事件と、1985年のイラン・イラク戦争時のトルコ政府による日本人救援を取り上げた日本トルコ合作映画『海難1890』が、きょう(5日)から公開されます。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

      トルコ・エルトゥールル号(2015)

 これは、トルコが今年(2015年)発行した“エルトゥールル号事件125周年”の記念切手で、そのものずばり、航行中のエルトゥールル号が描かれています。

 1889年、オスマン帝国政府は、1887年の小松宮彰仁親王のイスタンブル訪問の答礼として、オスマン・パシャをスルターン(アブデュルハミト2世)の正使とする親善訪日使節団の派遣を決定。あわせて、軍艦エルトゥールル号の航海演習を行うこととしました。

 しかし、当時のオスマン帝国の海軍政策は海防が中心で、遠洋航海の準備はなく、また、派遣されるエルトゥールル号も1863年建造の木造老朽艦で、海軍としての予算も貧弱でしたから、日本への軍艦の派遣は、オスマン帝国海軍の実力からすると明らかに無謀な試みと見られていました。

 それにもかかわらず、アブデュルハミト2世がエルトゥールル号の派遣に踏み切ったのは、これを汎イスラム主義のプロパガンダにしようという意図があったためです。すなわち、列強諸国の植民地下にあるイスラム地域の主要港を、イスラム世界の盟主であるオスマン帝国の軍艦が寄港すれば、各地のムスリムはこれを歓呼して迎え、その結果として、スルターンの威信は高まると考えたのでした。

 かくして、1889年7月14日、イスタンブルを出港したエルトゥールル号は、苦難の航海を11ヵ月つづけた後、1890年6月7日、横浜に入港。同月13日、オスマン・パシャはスルターンの親書と勲章を明治天皇に奉呈し、特使としての任務を果たします。

 その一方で、長旅でエルトゥールル号は疲弊しきっており、船内の劣悪な衛生環境の中で、乗員にはコレラが流行。親書の奉呈が終わった後も、すぐに帰国できるような状況ではありませんでした。

 このため、一行はしばらく日本に滞在しましたが、9月15日、ようやく横浜を出します。時あたかも台風の季節であり、日本側は天候を理由に帰国の延期を勧告しましたが、オスマン帝国側は帰国を強行してしまいました。日本滞在が長期化すれば、国際社会から「オスマン帝国海軍には帰国の能力がない」と見なされ、スルターンの権威を傷つけることを恐れたためです。

 はたして、9月16日、エルトゥールル号は熊野灘を航行中、暴風雨に遭い、紀伊大島の樫野崎に連なる岩礁に激突して座礁。機関部に浸水して水蒸気爆発を起こして沈没しました。これにより、司令官オスマン・パシャをはじめとする六百名以上が海へ投げ出され、生存者はわずか69名でした。

 事件の報に接した日本側は、官民あげて遭難者の救助と慰霊に全力を尽くし、大島村(現串本町)樫野の住民は、自分たちも台風の最中で食料の蓄えが乏しかったにもかかわらず、浴衣などの衣類、卵やサツマイモ、それに非常用のニワトリを供出。明治天皇は、政府に対し、可能な限りの援助を行うよう指示し、全国から多くの義捐金・弔慰金も寄せられました。

 生存者は、10月5日、東京を出航した日本海軍のコルベット艦「比叡」(“満洲国皇帝陛下御来訪”の記念切手に取り上げられた軍艦は同名の別の船)と「金剛」(シーメンス事件で問題となった軍艦は同名の別の船)に収容され、翌1891年1月、無事、イスタンブルに生還しました。

 これら一連の事件は、その後の、トルコ国民の親日感情の端緒となったといわれており、そのことが、今回の映画化にもつながったというわけです。


 ★★★ 内藤陽介の新刊  『ペニー・ブラック物語』 のご案内 ★★★ 

       ペニーブラック表紙 2350円+税

 【出版元より】
 若く美しい女王の横顔に恋しよう!
 世界最初の切手
 欲しくないですか/知りたくないですか

 世界最初の切手“ペニー・ブラック”…名前は聞いたことがあっても、詳しくは知らないという収集家も多いはず。本書はペニー・ブラックとその背景にある歴史物語を豊富なビジュアル図版でわかりやすく解説。これからペニー・ブラックを手に入れたい人向けに、入手のポイントなどを説明した収集ガイドもついた充実の内容です。

 発売元の特設サイトはこちら。ページのサンプルもご覧いただけます。

 ★★★ 内藤陽介の新刊  『アウシュヴィッツの手紙』 のご案内 ★★★ 

       アウシュヴィッツの手紙・表紙 2000円+税

 【出版元より】
 アウシュヴィッツ強制収容所の実態を、主に収容者の手紙の解析を通して明らかにする郵便学の成果! 手紙以外にも様々なポスタルメディア(郵便資料)から、意外に知られていない収容所の歴史をわかりやすく解説。

 出版元のサイトはこちら。各書店へのリンクもあります。

 インターネット放送「チャンネルくらら」にて、本書の内容をご紹介しております。よろしかったら、こちらをクリックしたご覧ください。

 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★

 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインよろしくポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。
スポンサーサイト

別窓 | トルコ | コメント:2 | トラックバック:0 | top↑
<< 切手に見るソウルと韓国:尹東柱 | 郵便学者・内藤陽介のブログ |  アマゾネス>>
この記事のコメント
#2395
初めまして。
チャンネルくららで、いつも内藤先生のお話を楽しみにしている者です。
先生のブログを検索してみようとフと思いつきたどり着きました。
チャンネルくららで毎回のように、このブログの魔をやられてはいかがでしょうか?
もしかしたら動画で伝えていたのかもしれませんが…
番組の最初と最後にでもブログのステマではない魔をお伝えして、もっとアピールすればいいと思い、コメントいたしました。

2015-12-06 Sun 06:17 | URL | 名無し #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
・名無し様
 ありがとうございます。そういえば、チャンネルくららでは、あまり自分のブログの話をしていませんでしたね。皆さんのご迷惑にならないようでしたら、様子を見つつ、少しずつ宣伝してみましょうかね。今後ともよろしくお付き合いください。
2015-12-26 Sat 11:15 | URL | 内藤陽介 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
コメントの投稿
 

管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック
| 郵便学者・内藤陽介のブログ |
copyright © 2006 郵便学者・内藤陽介のブログ all rights reserved. template by [ALT-DESIGN@clip].
/