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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 笠戸丸の日本人
2006-06-22 Thu 23:13
 新聞のテレビ欄風にいうと、今日(22日)の28時から、サッカーW杯の日本対ブラジル戦が行われます。まぁ、相手が相手ですから、ここはひとつ、新入幕の力士が横綱に胸を借りるつもりで良い試合をしていただきたいものです。

 というわけで、今日はこの1枚を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

ブラジル移民80年

 この切手は、1988年、日系移民80周年を記念してブラジルが発行したもので、移民船の笠戸丸を背景に、移民の家族が描かれています。

 日本人の海外移住は、古くは17世紀の東南アジアに日本人町がつくられた事例にさかのぼることもできますが、近代以降のものとしては、1868年のハワイへの“元年者”の移住がそのさきがけとなります。

 その後、明治政府は、近代国家建設のために財源として地租を重要視したことから、地租を払えず、強制処分により農地を手放さざるをえなくなった農民が続出します。しかし、当時の日本社会には、そうした人々を他の産業で吸収できるだけの余裕がなく、政府は彼らを海外に移住させることで問題の解決をはかろうとしました。一方、農民の中にも、政府が行った海外移民募集に応募し、海外で成功を収めて故郷に錦を飾ろうと考える者が少なからずありました。

 こうしたことから、19世紀末には、ハワイや米本土への移民が急増しましたが、日本が日露戦争に勝利を収めたのをきっかけに、米国内で深刻な黄禍論を巻き起こります。その結果、主として米国西海岸で排日運動が激化し、1907年、米国政府は、実質的に日系移民を制限する内容に移民法を改正。さらに、1908年、「日米紳士協約」によって、ハワイへの日本人移民も厳しく制約されてしまいました。

 こうした状況の中で、1906年、ブラジルに渡っていた水野龍は、現地コーヒー農場の労働者が慢性的に不足していたことに目をつけ、サンパウロ州のコーヒー耕地への日本人農民の大規模な移民計画を立案。皇国殖民合資会社を設立し、サンパウロ州政府と移民契約を結んで日本からの移住者を募ります。

 水野の計画は、米国とハワイに代わる移民の送り先を探していた日本政府の意向とも合致していたことから、外務省は鹿児島、沖縄、熊本の各県知事に協力を要請。皇国殖民合資会社はブラジルの名に「舞楽而留(舞い楽しんで留まる)」とあて、一部の地域では群会議員までをも動員して「家族三人で働けば、生活費など差し引いても一ヶ月で百円は残る」と移民の夢をかきたてました。

 この結果、ブラジル政府から補助金を受けた“契約移民”781名・165家族と、ブラジル政府の補助金を受けていない“自由移民”10名が、数年で帰国することを夢見て、笠戸丸でブラジルへ渡りました。そして、1908年6月18日、サンパウロ市の外港、サントスに到着した移民たちは、いくつかのコーヒー農場に分かれて、1年毎の契約で働き始めました。これが、ブラジルにおける日系社会の始まりとなります。

 しかし、移民たちを待ち受けていたのは、事前の宣伝文句とは裏腹の重労働と劣悪な環境でした。また、笠戸丸がブラジルに着いた6月は、コーヒーの収穫がほとんど終わっていた上に、コーヒーの値段も暴落していたため、収穫量の歩合制で賃金契約を結んでいた農民たちはほとんど収入を得ることができず、農園をはなれてサンパウロ市内でメイドや大工などをして働く人が続出。さらに追い討ちをかけるように、移民を請け負った皇国殖民合資会社が資金難から倒産し、移民の預入金はほとんど返済されないことになってしまいました。

 こうした惨憺たる状況は、当時、日本国内にはほとんど伝えられず、その後も、1910年の旅順丸移民をはじめ、多くの日本人がブラジルに移住。日系移民たちは、あらゆる辛酸を舐めながらも、次第にブラジル社会において確固たる地位を築くようになりました。

 なお、日本では1958年にブラジル移住50年の記念切手が発行されています。その詳細については、拙著『(解説・戦後記念切手Ⅱ)ビードロ・写楽の時代:グリコのオマケが切手だった頃 1951-1960』でも説明していますので、ご興味をお持ちの方はご一読いただけると幸いです。
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