内藤陽介 Yosuke NAITO
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 アウシュヴィッツを生き延びて112年
2016-01-25 Mon 11:43
 今月19日、それまで世界最高齢の男性とされていた名古屋市の小出保太郎さんが亡くなったことに伴い、アウシュヴィッツを生き延びた112歳のイスラエル人男性、イスラエル・クリスタルさん(1903年9月15日、ポーランド生まれ)が世界最高齢の男性になった可能性があることが、昨日(24日)までに明らかになりました。というわけで、きょうはクリスタルさんと同い年の人がアウシュヴィッツから差し出したカバーをご紹介します。(画像はクリックで拡大されます)

      アウシュヴィッツ封筒・15ペニヒ貼

 これは、1941年2月11日、アウシュヴィッツ収容所からヴァドヴィツェ(クラクフから50 kmの地点にある都市で、ローマ教皇ヨハネパウロ2世の出身地として有名)宛に差し出されたカバーです。封筒の書き込みによれば、差出人(収容者)の誕生日は1903年10月1日ですから、今回話題となったクリスタルさんの誕生日とは半月ちがいということになります。

 1940年に開設されたアウシュヴィッツ収容所では、収容者には、当初、専用の封筒と便箋が支給され、外部への通信用に用いられていました。しかし、1941年6月の独ソ戦勃発を経て、1942年1月のヴァンゼー会議で「ユダヤ人問題の最終解決」が決定されると、アウシュヴィッツに移送されてくる収容者の数は激増。これに伴い、おそらく収容者に対して封筒と便箋を別々に支給する製造および管理コストを効率化するため、1942年に入ると、収容者には封筒と便箋に代えて、厚手の用紙を使った専用葉書が支給され、使用されてるようになりました。

 収容者が郵便物を差し出す形式が封筒(と便箋)から葉書に切り替えられた正確な日時は不明ですが、すでに1942年2月上旬には葉書の使用も始まっていますので、今回ご紹介のカバーは、封筒(と便箋)の使用例としては、かなり遅い時期のものの一つと言ってよいかと思います。

 なお、封筒にはヒンデンブルグの15ペニヒ切手が貼られていますが、当時の郵便料金としては12ペニヒが正しく3ペニヒ過貼となります。封筒の左側に印刷されている規定によれば、外部から収容者宛の郵便物には12ペニヒ切手5枚しか同封できないことになっていますが、実際に収容者宛の郵便物に返信用としてその他の額面の切手が同封されていた場合には、収容所当局もそれらを使用することを黙認していました。今回ご紹介のカバーについても、差出人は差し入れの15ペニヒ切手をそのまま使ったモノと考えられます。
 
 なお、アウシュヴィッツの収容者が差し出した郵便物と、そこからみえてくる収容所内の生活については、拙著『アウシュヴィッツの手紙』でもいろいろご紹介しておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。


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