内藤陽介 Yosuke NAITO
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 アイオワから朝鮮の戦場へ
2016-02-02 Tue 21:58
 米大統領選での民主、共和両党指名候補争いの初戦となるアイオワ州の党員集会が、現地時間の1日夜(日本時間2日午前)、行われ、大統領選挙が本格的にスタートしました。というわけで、手持ちのマテリアルの中から、アイオワ州の消印が伊されたカバーをご紹介します。

      アイオワ発大邱転送カバー

 これは、1950年7月21日、アイオワ州バーリントンから広島県の江田島(軍事郵便局:APO354 のアドレスから特定できます)に駐留していた米軍兵士宛に差し出された郵便物です。その後、朝鮮戦争の勃発に伴い、名宛人が“国連軍”の一員として韓国に派遣されたため、この郵便物も、彼の移動に伴い、横浜(APO503)を経て、大邱(APO25)に転送されています。

 1950年6月25日、朝鮮人民軍の奇襲攻撃によって朝鮮戦争が勃発すると、国連安全保障理事会は、開戦翌日の6月25日午後2時(国連本部のあるニューヨーク時間。韓国時間では26日午前2時)、北朝鮮の南侵を侵略行為と規定し、北朝鮮に対して38度線以北への撤兵を要求しました。しかし、朝鮮人民軍はこの安保理決議を無視してさらに南侵を続け、6月28日にはソウルを占領します。

 このため、米国大統領・トルーマンは、極東海空軍に対して、38度線以南の朝鮮人民軍への攻撃を指令。国連安保理も、「北朝鮮の侵攻を撃退するため、加盟国は韓国が必要とする軍事援助を与える」との決議を採択して、米国の軍事介入を追認しました。朝鮮人民軍がさらに南下を続けると、7月7日、国連安保理は“国連軍”の創設を決議し、その司令官の任命をトルーマンに委任。これを受けて、翌8日、日本占領の司令官として東京に駐在していたマッカーサーが司令官に就任しました。

 これら一連の決議は、ソ連が欠席した安保理(当時のソ連は、中華人民共和国を“中国”として国連への代表権を与えるように主張し、それが否決されたことに抗議して安保理への出席を拒否していました)で採択されたことにくわえ、“国連軍”の派兵も、厳密には、国連憲章の定める手続きに則ったものでもありませんでした。

 すなわち、国際連合憲章の第7章は、平和に対する脅威に際して、軍事的強制措置をとることができると定められていますが、その兵力は、あらかじめ安保理と特別協定を結んでいる加盟国が、安保理の要請を受けて提供することになっています。しかし、朝鮮戦争の時の事例も含めて、これまで、国連と兵力提供協定を結んでいる国はありませんので、国連憲章に基づき、安保理が指揮するという、厳密な意味での“国連軍”が組織されたことはこれまで一度もないということになります。したがって、朝鮮戦争への派遣部隊も、参加国の自由意思に基づく“多国籍軍”というのが正確な言い方です。

 ただし、北朝鮮の侵略を阻止するための派兵に際して、国連は、国連軍司令部の設置や国連旗の使用を許可しているだけでなく、当時の国連加盟59ヵ国のうち、“国連軍”の派遣に賛成したのは52ヵ国と圧倒的多数を占めていました。また、米国以外にも計15ヵ国(このほか、病院船のみ派遣のデンマークや当時は国連未加盟で赤十字のみ派遣したイタリアなどの国もあります)が兵員を派遣しています。

 こうしたことから、国連旗の下に朝鮮に派遣された多国籍軍は、当時の国際世論を反映した、事実上の“国連軍”とみなしても問題はないといえましょう。
 
 なお、このあたりの事情については、拙著『朝鮮戦争』でも詳しくご説明しておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。


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