内藤陽介 Yosuke NAITO
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 教皇と総主教の会談
2016-02-13 Sat 11:02
 ローマ・カトリック教会の教皇フランシスコと、ロシア正教会のモスクワおよび全ロシア総主教キリルが、12日(現地時間。日本時間13日未明)、キューバの首都ハバナのホセ・マルティ国際空港で会談を行いました。キリスト教会が1054年に東西に分裂して以降、両トップが会談するのは今回が初めてのことです。というわけで、きょうはこの切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      キューバ・教皇訪問(2015)

 これは、昨年(2015年)、教皇フランシスコのキューバ訪問に際して、キューバが発行した記念切手で、教皇とラウル・カストロ国家評議会議長の肖像が取り上げられています。

 キューバはもとはスペインの植民地だったこともあり、現在でも、国民の多くはカトリックの信者です。しかし、革命を主導したフィデルが無神論者だったことに加え、キューバのカトリック教会がバティスタ政権と反革命派を支持していたこともあって、革命政権は司祭や尼僧ら約300人を国外追放した上、教会が所有していた学校を全て国有化するなどの弾圧政策を推進。これに対して、教皇ヨハネ23世はフィデルを破門するなどの対抗措置を講じ、両者の関係は長らく断絶していました。

 しかし、冷戦終結によりソ連などからの経済支援が断たれ、キューバが対外融和政策を展開するようになると、その一環として、1992年、フィデルの政権はキリスト教徒に対する融和制作を導入。はたして、教皇ヨハネ・パウロ2世は米国によるキューバへの通商停止に対して「不正で、倫理的に承諾しがたい」と非難を行い、バチカンとキューバの関係は劇的に改善します。そして、1996年11月、フィデルはヴァチカンを訪問して教皇に謁見。キューバの宗教弾圧政策は事実上、放棄されました。さらに、1998年の教皇のキューバ訪問を受けて、キューバ政府はクリスマスを再び休日とするなど、関係改善はさらに進みました。

 さらに、2013年3月、当時の教皇、ベネディクト16世がキューバを訪問したのを機に、水面下でヴァティカンの仲介によるキューバと米国の関係改善に向けた交渉が進み、2015年4月には、1956年以来59年ぶりに米・キューバ首脳会談が実現。同年7月には両国の国交回復が実現しました。

 このように、ヴァティカンは米国とキューバの交渉を仲介し、国交回復を後押ししてきた経緯があることから、米・キューバ国交回復後の2015年9月の教皇のキューバ訪問に際しては、今度は、教皇からキューバ側に対して、キリル総主教との会談に向けての協力が要請され、今回、ホセ・マルティ国際空港での歴史的な会談につながったというわけです。

 なお、今回の会談では、“イスラム国”ことダーイシュの勢力拡大により迫害を受けている中東のキリスト教徒の保護が最大の議題と報じられています。

 ただ、会談の日付が、ウクライナ紛争の停戦合意が結ばれてから1周年の2月12日に設定されていることは、もう少し注目されても良いかもしれません。

 もともと、歴史的にウクライナ正教会とウクライナ東方カトリック教会の対立は東西教会の最大の懸案事項のひとつとなっていましたが、2005年、ウクライナ東方カトリック教会が2005年に拠点をリビウからキエフに移したことに対して、正教会側はカトリックの“東方進出”として猛反発していたという経緯があります。また、ウクライナの正教会は、モスクワ総主教庁からの自立を主張するキエフ総主教庁とモスクワ総主教庁に分裂しており、そこに2014年以来のウクライナ紛争が絡んで、複雑な様相を呈しています。

 こうした中で、教皇フランシスコは、西側諸国がロシアによるウクライナ紛争への介入を非難するなかで、一貫して、ロシアへの批判を避けており、プーチン政権に宥和的な姿勢を示していることから、今回の教皇と総主教の会談は国際的な孤立を深めるプーチン政権にとって、事態打開のための好材料になるのは確実です。

 これに対して、プーチン包囲網を緩めるつもりのないEUは、昨年2月にウクライナ停戦合意を仲介した功績に応えるとして、“欧州最後の独裁者”と言われるベラルーシのルカシェンコ大統領に対する資産凍結・渡航禁止の制裁を解除して、ルカシェンコのEU接近を促し、ロシアを牽制する意図を明確にするなど、敏感に反応しています。

 いずれにせよ、今回の教皇と総主教の会談は、東西教会の合同問題を実質的に棚上げしたうえで、国際情勢に対処するために行われたものであり、それゆえ、今後、その“成果”がどういうかたちで表面化してくるのか、注目しておきたいところです。

 
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