内藤陽介 Yosuke NAITO
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 切手に見るソウルと韓国:北青獅子ノルム
2016-02-26 Fri 15:51
 ご報告が遅くなりましたが、『東洋経済日報』2月12日号が発行されました。僕の月一連載「切手に見るソウルと韓国」は、今回は、旧正月の時期の刊行でしたので、この切手をご紹介しました。(画像はクリックで拡大されます)

      韓国・インドネシア修好40年

 これは、2013年に発行された“韓国=インドネシア修好40周年”の記念切手で、左側には、朝鮮半島の伝統芸能である“北青獅子ノルム”が大きく取り上げられています。

 陰暦1月15日(2016年は2月22日)は、年が明けてから最初の満月の日であり、「1年のうちで最も輝く満月が空に浮かぶ日」として、朝鮮半島の伝統文化では、“テボルム”の名節とされています。

 かつての農村では、陰暦元日のソルラル(2016年は2月8日)から15日のテボルムまでを休日として農作業を休み、テボルムが終わると、農作業を再開するというのが生活のリズムでした。

 このため、テボルムの日には、家族そろって満月に願い事をするだけでなく、1年間の無病息災を願った食事をしたり(たとえば、ピーナッツやクルミなど“プロム”と呼ばれる固い木の実類を噛むなど)、日没に合わせて、“厄”、“送厄”、“送厄迎福”などの文字を書いた凧を揚げ、その糸を切って遠くに飛ばして厄払いをしたりするなどのさまざまな行事が行われてきました。

 そうしたテボルムの行事のひとつに、悪鬼を追い払う力を備えた獅子にあやかり、邪気をはらい、村に平安をもたらすために“サジャノリ”と呼ばれる獅子舞があります。今回ご紹介の切手に取り上げられた“北青獅子ノルム”は、その代表的なものとして有名です。

 北青獅子ノルムは、もともと、咸鏡南道北青郡で行われていたローカルな民俗芸能で、その歴史は三国時代にまでさかのぼるといわれています。

 しかし、第二次大戦後の南北分断により、咸鏡南道は北朝鮮の支配下に入ったため、呪術的な色彩の濃い北青獅子ノルムは“迷信”として弾圧の対象となり、北朝鮮内ではほとんど途絶えてしまいます。こうした中で、朝鮮戦争の混乱の中、命からがら南へ逃れてきた北青郡の出身者によって北青獅子ノルムも韓国に伝えられました。その後、韓国政府は、北朝鮮によって破壊された伝統文化が、韓国において維持・継承されていることをアピールすることの政治的効果を重視し、北青獅子ノルムを国の無形文化財にも指定しています。

 ところで、北青獅子ノルムを取り上げた“韓国=インドネシア国交40周年”の記念切手が発行されたのは2013年ですから、そこから逆算して、韓国とインドネシアの国交樹立は1973年ということがお分かりいただけるかと思います。大韓民国の正式発足は1948年8月インドネシア共和国の完全独立(独立承認)は1949年12月でしたから、両国の間には20年以上にわたり国交が樹立されていなかった勘定です。

 インドネシア初代大統領のスカルノは、“非同盟諸国”の盟主として、反帝国主義・反諸君ミンチ主義の立場から、東西冷戦下で東側寄りの外交路線を取っていましたが、その結果として、北朝鮮と親密な関係を築いており、金日成とも個人的な盟友関係にありました。このため、スカルノ時代のインドネシアは、韓国ではなく、北朝鮮を朝鮮半島の正統政府と見なしており、韓国とは正規の外交関係は結んでいませんでした。

 その後、1965年9月にスカルノが事実上失脚すると、後継指導者となったスハルトはスカルノの急進路線を徐々に修正。1968年3月には正式に大統領に就任して、西側諸国との関係改善に本格的に乗り出しました。1973年の韓国との国交樹立も、その一環として実現されたものです。

 ちなみに、“韓国=インドネシア国交40周年”の切手では、韓国側の北青獅子ノルムに対応するインドネシアの民族芸能として、ジャワ島西部バントゥン州の牛の舞が取り上げられています。この地域では、農民の生活に密着した牛は、力と正義、繁栄の象徴であり、悪魔の化身であるトラとサルを追い払う力があると信じられており、それゆえ、村の安寧と五穀豊穣を願って、牛の舞が舞われるようになったそうです。
 
 
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