内藤陽介 Yosuke NAITO
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 切手に見るソウルと韓国:韓国・華厳寺
2016-03-19 Sat 14:38
 『東洋経済日報』3月11日号が発行されました。僕の月一連載「切手に見るソウルと韓国」は、今回は、きょう(19日)から始まる山茱萸祭りにちなんで、祭りの行われる全羅南道・智異山麓の求禮郡にゆかりの深いこの切手をご紹介しました。

      韓国・華厳寺(1964年)

 これは、1964年に発行された観光シリーズのうち、智異山麓の名刹、華厳寺を取り上げた1枚です。

 伝承によれば、華厳寺は、百済時代の544年、縁起祖師が創建し、その名は『華厳経』に由来するといわれています。その後、643年に慈蔵律師が増築し、670年には、新羅における華厳宗の開祖とされる義湘祖師が丈六殿(現覚皇殿)を建て、『華厳経』を石に刻んで壁にめぐらしました。

 朝鮮王朝時代の仏教弾圧制作により、華厳寺も一時廃寺に追い込まれましたが、世宗の時代の1424年になって禅宗18寺の一つとして存続を許されることになります。その後、文禄・慶長の役の際に焼失しましたが、1630-36年、碧岩禅師によって再建されました。また、日本統治時代の1924年には、1911年に朝鮮総督府が指定した“朝鮮三十本山”に追加され、これにより、朝鮮三十本山が朝鮮三十一本山になったことでも知られています。

 華厳寺には、現存する木造建築物としては韓国最大規模のものであり、朝鮮王朝の粛宗(在位1674-1702)の時代、王を覚らせたとの意味で命名された“覚皇殿”をはじめ、国宝4点、宝物5点、天然記念物1点、地方文化財2点が保有されています。

 今回ご紹介の切手は、境内西北の高台から智異山を望むデザインで、右側には、供養石燈が見えます。

 供養石燈は、華厳寺を開山した縁起尊者が「偏袒右肩、右膝着地」の姿勢で頭に石燈をのせている形を表現しています。“偏袒右肩”は、相手に恭敬の意を表すため、右肩を肩脱ぎにし、左肩のみを覆って袈裟を着ることで、切手では見えませんが、実際の像では、左手には供養のための茶碗を持ち、その上に如意珠が置かれており、尊者が母親に茶を供養している姿が表現されています。

 その母親の像は、供養石燈の正面に置かれている四獅子三層石塔(国宝第35号)の中にあるが、こちらの石塔は、1978年に発行された石塔シリーズの切手(下の画像)に取り上げられています。

      韓国・華厳寺石塔

 四獅子三層石塔は、新羅時代の645年、慈蔵律師が縁起尊者の功徳と仏の教えを称えるため、中国の唐から持ち帰った73粒の仏舎利を奉安するために作った塔で、高さ5・5m。その由来から、仏舎利供養塔とも呼ばれており、佛國寺多寶塔と並んで、新羅石塔の傑作として国宝にも指定されています。

 石塔は、2層の基壇上部に3層塔身を置き、頂上に相輪部を載せたスタイルで、上層基壇には隅柱のかわりに蓮花臺の上で跪く雌雄2対の獅子が支柱として四つ角に配置されています。その中央に合掌した比丘尼の像を置き、この5体で舎利塔を支える構造になっていますが、この比丘尼こそ、縁起尊者の母親といわれています。

 四獅子三層石塔と供養石燈は、一対となって、出家の修行者には精進を、在家の信者にはには孝の精神を説くものです。したがって、本来は二つの塔は1枚の切手に収めるのが好ましいはずなのですが、1964年の切手の原画を制作した姜博は、単純にデザイン上の視点から、こういう構図にしたのでしょう。その結果、息子の像がある石燈のみを取り上げた切手が発行されてから、14年の月日を経て、ようやく母親の像がある石塔の切手が発行されることになったわけで、なにやら、“離散家族”の再会を連想させるようなところがありますな。
  

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