内藤陽介 Yosuke NAITO
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 HAPPY NAVRUZ!
2016-03-20 Sun 10:05
 今日(20日)は春分の日。日本ではお墓参りの日ですが、イランを中心にその文化的影響が及んでいる国や地域では、新年のお祭り・ノウルーズの日です。というわけで、今日はこんな切手を持ってきてみました。(画像はクリックで拡大されます)

      タジキスタン・ノールーズ

 これは、2002年にタジキスタンで発行された“ナヴルーズ(ノウルーズ)”のシートで、民族衣装で踊る女性と、リボンを結んだ小麦の束(ノウルーズの象徴)が描かれています。

 ノウルーズのアラビア文字表記はنوروز ですが、これをペルシャ語とみた場合、そのラテン文字への転写は、nowruz (カタカナ表記でノウルーズ)とするのが一般的です。ただし、タジキスタンの公用語であるタジク語では、今回ご紹介の切手に見られるように、Навруз(ラテン文字では“navruz”) と表記するのがスタンダードですので、記事のタイトルも av を使ってみました。

 ちなみに、タジク語は、もともとは中央アジアにおけるペルシャ語の一変種で、イランのペルシャ語やアフガニスタンのダリー語とは基本的に同一の言語です。

 ところが、1924年にソ連の支配下でウズベク・ソヴィエト社会主義共和国内にタジク・ソヴィエト社会主義自治共和国が成立し、1929年にウズベクからファジャンド一帯を編入してタジク・ソヴィエト社会主義共和国が形成されると、その過程で、新たな“国民統合”の象徴として、タジク人独自の“国語”が作られることになり、ペルシャ語の文章語にタジク人の使っていた口語表現が取り込まれ、イランのペルシャ語やアフガニスタンのダリー語とは異なる“タジク語”の存在が強調されるようになりました。その結果、1929年以降、それまでアラビア文字を使って表記されていたタジク語がラテン文字で表記されることになり、さらに、1940年にキリル文字による表記が導入されたことで、ロシア語の影響も受けた現代タジク語が成立していくことになります。

 さて、イスラム世界では預言者ムハンマドと信徒たちがメッカからメディナに移住し、イスラムの共同体を作った“ヒジュラ”のあった年を紀元とするヒジュラ暦が使われていますが、このヒジュラ暦は完全太陰暦で、かつての日本の旧暦のように閏月を入れて調整するということは行われていませんから、毎年、11日ずつ、太陽暦の日付とズレが生じます。 この点について、ムスリムたちは、信徒の義務であるラマダン月(ヒジュラ暦の9月)の断食が、毎年、少しずつ季節を移動していくことによって、地域ごとの断食の負担の格差が是正されるメリットがあると説明しています。たとえば、ラマダン月が真冬の時期に当たると、熱帯の国では比較的楽に断食が行えますが、寒冷地域の断食は非常に厳しいものがあります。逆に、ラマダン月が真夏にぶつかると、熱帯と寒冷地域では、その負担の重さは逆転します。

 したがって、全世界の信徒にとって、断食の負担の平準化を図るためには、ラマダン月が毎年季節を移動していくことはポジティブにとらえられており、それゆえ、ヒジュラ暦は調整なしの完全太陰暦なのだ、というロジックが導き出されることになります。

 とはいえ、いくら宗教的に重要な意味があるとはいえ、毎年、暦の日付と季節がずれていけば、農作業などでは不便も多く生じます。このため、イスラム世界の各地では、イスラム暦とは別に、太陽暦に連動した農事暦が用いられることも多く、イランの場合は、イスラム以前から使われていたイラン暦として春分を元日とした太陽暦も用いられています。

 この元日が、いわゆる“ノウルーズ”(直訳すると“新しい日”の意味)と呼ばれるもので、イランを中心に中央アジアの5共和国でも祝日になっているほか、トルコでもクルド人に対する宥和政策の一環として国民の休日になっていますが、イスラム圏全体に共通の行事ということではなく、アラブ世界ではほとんど無視されているよいようです。ちなみに、イスラム世界全体としては、イスラム教徒としての新年はヒジュラ暦のムハラッム月(第1月)1日に祝うのが主流ですが、こちらは上述のように年によって季節は一定していません。

 今回ご紹介の切手を発行したタジキスタンでは、かつてのソ連時代にはナヴルーズの行事も“迷信”として廃されていました。しかし、1991年の再独立後は復活して国の祝日となりました。ナヴルーズ当日、タジク人たちは互いに親戚を訪問し、古いものを捨てて大掃除を行うほか、地域によっては、イスラム以前のゾロアスター教時代の名残で、悪魔祓いのため火の周りで踊るローカルな風習も行われています。
 

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