内藤陽介 Yosuke NAITO
http://yosukenaito.blog40.fc2.com/
World Wide Weblog
 ラホールでイースターにテロ
2016-03-28 Mon 13:54
 パキスタン東部ラホールのグルシャン・エ・イクバール公園の入口付近で、きのう(27日)、反政府勢力パキスタン・タリバーン運動(TTP)の分派組織が、イースターを祝っていたキリスト教徒たちをターゲットにした爆弾テロを起こし、この記事を書いている時点で、少なくとも71人が死亡、300人以上が負傷しました。亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、負傷された方にはお見舞い申し上げます。というわけで、きょうは、この切手です。(画像はクリックで拡大されます)

      パキスタン・ラホール復活大聖堂教会

 これは、1987年にパキスタンで発行された“ラホール復活大聖堂教会100周年”の記念切手で、同教会とその100周年記念塔が描かれています。ラホールのキリスト教会を取り上げた切手としては、今回ご紹介のモノのほか、カトリックの大聖堂を取り上げたものもあるのですが、イースターの時期ということで、こちらの“復活大聖堂”を選びました。

 ラホールにおけるキリスト教会の建築は、1595年にアクバル帝によって認められたのが最初です。続くジャハーンギール帝は、1614-24年、教会の閉鎖を命じます。ジャハーンギール帝末期には、協会の再開は認められたものの、次代のシャー・ジャハーン帝は、1632年、再度教会の閉鎖を命じました。

 その後、約2世紀の空白を経て、英領インド帝国時代の1877年、ラホール中心部、高等裁判所の向かい側に、イギリス人がパキスタン聖公会・カルヴァン主義合同教会を建立しました。これが、今回ご紹介の切手に取り上げられた復活大聖堂教会です。

 復活大聖堂教会は、ピンク色の砂岩を用いたネオ・ゴシック様式の建築で、ジョン・オルドリド・スコットが設計を担当。2本の塔は1898年に加えられました。また、当初は8つの鐘を備え付ける予定でしたが、実際の鐘の数は6つです。また、教会所有の宝物としては、1862年製のステンドグラスや、1935年に発掘された聖トマスの十字架などがあります。

 さて、パキスタンは人口の97%がムスリムで、“イスラム共和国”として、イスラムの理念にのっとった政治を行うことを憲法で公式に宣言しています。もちろん、パキスタンの現行憲法では「すべての国民はみずからの宗教を信仰し、実践し、広める権利を有する」との規定があるのですが、同時に、すべての法律はイスラムの理念と合致する(少なくともイスラムに反しない)ことが求められています。このため、キリスト教を含む少数派の宗教に対しては、個人としての礼拝と活動の自由は認められているものの、公の場での宣教活動に対してはさまざまな制約が加えられているのが実情です。また、就職や昇進などでは、キリスト教徒をはじめとする宗教マイノリティに対する明らかな差別待遇が横行しています。

 さらに、刑法には“冒瀆罪(イスラム侮辱罪)”として“イスラムの預言者ムハンマドやコーラン等に対するあらゆる侮辱・冒瀆”を罰する規定(最高刑は死刑もしくは終身刑)があります。しかし、どのような行為や発言が侮辱や冒瀆に該当するのか、明確な規定がないため、たとえば、賄賂を要求して断られた地方の警官や役人などが私怨を晴らすためにこの規定を悪用するケースが後を絶ちません。

 冒瀆罪で告発(冤罪事件を含む)されるのは、半数がムスリムでキリスト教徒は全体の13%程度とされていますが、人口比から考えると、キリスト教徒の告発率がきわめて高いのは明白で、告発されたキリスト教徒の家族や彼らが生活する村に対する“報復攻撃”(もちろん、違法行為で、刑事罰の対象になります)も蔓延しています。

 こうしたこともあって、パキスタン国内でも冒瀆罪の廃止を求める声は少なからずありますが、そうした主張をしたシャウハズ・バッティ大臣やサルマン・タシール元パンジャブ州知事などは暗殺されてしまいました。

 今回のテロ事件に対して、パキスタンのシャリフ首相は「卑劣なテロリストが女性子どもを標的にした」と強く非難しています。

 一方、ラホールでのテロ事件とほぼ時を同じくして、首都のイスラマバードでは、昨夜、サルマン・タシール元パンジャブ州知事暗殺事件の犯人に対する死刑が執行されたことに抗議し、イスラム法の厳格な施行を求める数万人の群衆が議会前を占拠して一部が暴徒化したため、シャリフ政権の要請で軍が出動。このほか、南部カラチでも地元記者協会の建物に群衆が乱入し、テレビ局の車やカメラを壊す事件が発生しました。

 “卑劣なテロリスト”がパキスタン国内を跋扈している背景には、テロ行為そのものを積極的には支持しなくとも、テロリストの煽動に対して、心情的には同調しかねないパキスタンの社会的土壌が根強くあることが浮き彫りになったかたちで、何とも暗澹たる思いにさせられますな。


 ★★★ 講座のご案内 ★★★

 ・よみうりカルチャー荻窪 「宗教と国際政治」
 4月から毎月第1火曜の15:30より、よみうりカルチャー荻窪(読売・日本テレビ文化センター、TEL 03-3392-8891)で講座「宗教と国際政治」がスタートします。ぜひ、遊びに来てください。詳細は、こちらをご覧いただけると幸いです。
 

 ★★★ 内藤陽介の新刊  『ペニー・ブラック物語』 のご案内 ★★★ 

       ペニーブラック表紙 2350円+税

 【出版元より】
 若く美しい女王の横顔に恋しよう!
 世界最初の切手
 欲しくないですか/知りたくないですか

 世界最初の切手“ペニー・ブラック”…名前は聞いたことがあっても、詳しくは知らないという収集家も多いはず。本書はペニー・ブラックとその背景にある歴史物語を豊富なビジュアル図版でわかりやすく解説。これからペニー・ブラックを手に入れたい人向けに、入手のポイントなどを説明した収集ガイドもついた充実の内容です。

 発売元の特設サイトはこちら。ページのサンプルもご覧いただけます。


 ★★★ 内藤陽介の新刊  『アウシュヴィッツの手紙』 のご案内 ★★★ 

       アウシュヴィッツの手紙・表紙 2000円+税

 【出版元より】
 アウシュヴィッツ強制収容所の実態を、主に収容者の手紙の解析を通して明らかにする郵便学の成果! 手紙以外にも様々なポスタルメディア(郵便資料)から、意外に知られていない収容所の歴史をわかりやすく解説。

 出版元のサイトはこちら。各書店へのリンクもあります。

 インターネット放送「チャンネルくらら」にて、本書の内容をご紹介しております。よろしかったら、こちらをクリックしたご覧ください。


 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★

 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインよろしくポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。
スポンサーサイト

別窓 | パキスタン | コメント:0 | トラックバック:0 | top↑
<< 堅決反對美國重新武装日本 | 郵便学者・内藤陽介のブログ |  イースター・ポスト>>
この記事のコメント
コメントの投稿
 

管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック
| 郵便学者・内藤陽介のブログ |
copyright © 2006 郵便学者・内藤陽介のブログ all rights reserved. template by [ALT-DESIGN@clip].
/