内藤陽介 Yosuke NAITO
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 UAE成立以前の郵便と社会
2016-04-13 Wed 22:39
 日本アラブ首長国連邦協会の機関誌『UAE』第59号(2016年春号)が発行されました。同誌には僕も「UAE成立以前の郵便と社会(1964年まで)」と題する一文を寄稿していますので、きょうは、その記事の中から、こんなモノをご紹介します。(画像はクリックで拡大されます)

      ドバイWWII検閲表  ドバイWWII検閲裏

 これは、第二次大戦中の1943年にドバイからボンベイ宛の航空便です。

 1939年9月に第二次大戦が勃発すると、ドバイならびにシャルジャの空港は連合国の軍用に供されて、米英軍機の中継地として用いられ、1940-45年の間に軍用機を含む飛行機墜落事故が5件起きています。しかし、ペルシャ湾岸は直接の戦場になったわけではありませんから、休戦協定諸国の一般住民が日常生活で“戦争”を強く意識することはほとんどなかったものと思われます。

 ただし、ドバイの郵便局は英領インド郵政の管轄下にあったことから、ドバイ発着の郵便物にも、英領インド域内共通の戦時統制が課せられていました。

 たとえば、今回ご紹介のカバーは、第二次大戦中の1943年10月、ドバイからボンベイ宛に差し出されたエアメールですが、宛名の上部に“English(Commercial)”との表示があります。

 第二次大戦中の英領では、域外宛の郵便物の一部を逓送途中で抜き取り、検閲官が開封してチェックしていましたが、検閲は文面に記載されている言語ごとに別の担当者が行っていたため、封筒の表面などには同封の手紙がどの言語で書かれているかを明記することが義務づけられていました。この郵便物の場合は、内容文が英語の商用文であることを示す“English(Commercial)”の表示と、宛名のインクや筆跡が異なっていることから、あるいは、郵便局の窓口で局員が差出人に中の手紙の言語を聞いてから記したのかもしれません。

 また、封筒の左側には、郵便物を開封・検閲した後に、検閲当局によって“OPENED BY EXAMINER(検査官によって開封された)”との表示のある紙テープで再度、封をした痕跡が残っています。テープの上には、“DHC/326”との紫印と、英国の王冠の下に“PAEESD(検閲済み) DHC/80”の表示が入った八角形の印が押されていますが、このうちDHCはこの郵便物が到着地のボンベイで開封・検閲されたことを示しています。また、DHCの後ろの数字は、担当者の個人番号です。

 なお、ドバイからインド宛の郵便物への検閲は、戦時統制の一環として行われていたため、第二次大戦の終結に伴い終了しました。

 さて、今回の記事では、20世紀初頭のドバイから差し出された英領インド切手貼りの郵便物から、両大戦を経て、英領インドが分離・独立した後のドバイでのパキスタン切手の使用例、続く東アラビア郵政庁時代の使用例休戦協定諸国用に発行された切手を経て、1964年にアブダビドバイが独自の切手を発行するまでの経緯についてまとめています。

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