内藤陽介 Yosuke NAITO
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 市松と石畳
2016-04-26 Tue 11:48
 2020年東京五輪・パラリンピックの大会組織委員会は、きのう(25日)、大会エンブレムについて、4案の候補作品の中から、市松模様をモチーフにした「組市松紋」を選出したことを発表しました。というわけで、市松模様にちなんで、この1枚を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      春信・文読み

 これは、1969年10月1日に発行された「第16回万国郵便大会議」の記念切手のうち、鈴木春信の「中納言朝忠(文よみ)」を取り上げた50円切手で、右側の箒を持った女性が市松模様の帯を締めています。

 国際的な郵便交換の組織である万国郵便連合(UPU) は、原則として5年に1度、全加盟国政府の全権委員を集めて、万国郵便連合憲章をはじめとする郵便関係の条約改正について討議する会議を開催しています。これが、万国郵便大会議で、1874年の第1回会議(UPU創立会議)と1878年の第2回会議がパリで開催された後、各国の持ち回りで開催されてきました。1969年の第16回会議は、10月1日に昭和天皇ご臨席の下、国立競技場で開会式を行った後、11月14日までの45日間にわたり、東京のプリンスホテルを会場として討議が行われました。

 切手に取り上げられた鈴木春信の「中納言朝忠(文よみ)」は、オリジナルの錦絵では、小倉百人一首にも採録されている中納言朝忠の「逢ふことの 絶えてしなくは なかなかに 人をも身をも 恨みざらまし」の歌を上部に書き、その下に、なかなか会うことのかなわぬ恋人からの手紙を読む娘と、箒を持ったまま、掃除をする手を止めてそれを覗きこむ女性が描かれています。また、この構図は、中国の古典的な画題である“寒山拾得”で、寺男として箒を持つ拾得と、巻物を持つ寒山の組み合わせに見立てて美人画としたものです。

 さて、市松模様は2色のタイルを交互に並べたようなデザインで、日本古来の文様として、もともとは“石畳”と呼ばれていました。ところが、1741年、歌舞伎の初代佐野川市松が「心中万年草」の主人公・粂之介を演じた際、紺と白の“石畳”の衣装を着用して評判となり、以来、彼の名を取って市松模様と呼ばれるようになったとされています。ただし、その後も、市松模様を、明らかに古名の“石畳”のイメージで使っているケースもあるので(その代表格が「ビードロを吹く娘」)、市松という名称が完全に定着するまでにはそれなりの時間がかかったのではないかと思います。

 ちなみに、初代市松(1722-62)と春信(1725-70)は同時代の人物ですから、彼の時代には、模様の名前も石畳と市松が混在していたのではないかと思います。今回ご紹介の切手の「中納言朝忠(文よみ)」のような多色刷りの錦絵は、春信が“紅刷り絵”と呼ばれる単色から数色の版画技法を発展させて1765年に完成させたものですから、1741年の「心中万年草」上演以降に制作されたものです。したがって、箒を持った女性の帯の模様を“市松”と呼んでも間違いではないのでしょうが、彼女の“元ネタ”が寺男の拾得だったことを考えると、ここは“石畳”とする方が良いのかもしれません。


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