内藤陽介 Yosuke NAITO
http://yosukenaito.blog40.fc2.com/
World Wide Weblog
 八十八夜
2016-05-01 Sun 12:21
 例年ですと、八十八夜は5月2日ですが、ことし(2016年)は閏年なので、きょう(1日)が八十八夜になります。というわけで、ストレートにこの切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      ふるさと切手(静岡)・茶摘み

 これは、1997年4月25日に発行されたふるさと切手(静岡県)で、姉さんかぶりで茶摘みに励む女性たちが描かれています。原畫は、浜松出身の版画家、前田守一です。

  「夏も近づく八十八夜」で始まる文部省唱歌の「茶摘」の一節なので誤解されがちですが、茜襷に菅の笠の組み合わせは、茶摘み専用の服装ではなく、もともとは、田植えの日に田の神を迎えるため、水田の一角で苗を田に植える早乙女の服装でした。

 彼女たちは、この日だけは神に奉仕する神聖な存在となり、そのハレの日の衣装として、単衣の長着に赤い襷(茜襷)、白い手ぬぐいと新しい菅笠でした。ほぼ同じ時期に行われる茶摘みも、年に一度のハレの日だったため、早乙女と同じ服装になったものと思われます。

 茜襷は止血効果のある茜草(薬草)で染めた襷で、作業の過程で、傷ついた指先に茜草の成分をすりこむという先人の知恵によるもので、田植えに比べて手先が傷つきやすい茶摘みの場合には、なおさら欠かせないアイテムでした。一方、菅笠は竹ひごを円錐状に組み立てた笠骨に、菅の葉を巻きつけ、最後に糸で縫って仕上げます。

 ところで、早乙女は茜襷に菅の笠のスタイルが一般的ですが、茶摘みの場合、茜襷は必需品でも、菅の笠を用いず、姉さん被りの女性も多かったようで、過去に発行された茶摘みの切手でも、菅笠ではなく、姉さん被りの女性がメインに描かれています。

 じっさい、茶の名産地・京都宇治では、茶の古木を茶摘女の姿に彫り、彩色した“茶の木人形”が江戸時代から作られてきましたが、その考案者の上林清泉以来、人形の主流は、笠を被らず、姉さん被りの姿です。

 もちろん、何をかぶって作業をするかは個人の好みですから、姉さん被りの女性と菅笠の女性が同じ茶畑にいるという構図もありうるわけですが、現実の問題として、菅笠は遮光性・通気性には優れているものの、少し強い風が吹くと、ずり落ちたり、飛ばされたりすることが多いため、穏やかな日の平地での田植えならともかく、山の斜面の作業では使いづらいのではないかと思います。そして、それゆえ、実際の茶摘み風景を元に原画を作成すると、唱歌の「茶摘」とは裏腹に、菅笠ではなく姉さん被りの女性が主流を占めるという結果になったのでしょう。

 ちなみに、文部省唱歌「茶摘」の元ネタの一つと思われる宇治市の茶摘み歌は、「お茶が済んだら早よ帰れよと言うた親より殿が待つ」で始まり、その後しばらくして「竹に雀はしなよくとまれ とめてとまらぬ 色の道」と歌った後、「茜襷に菅の笠」のフレーズが続いており、かなり、艶っぽい内容です。

 なお、このあたりの事情については、拙著『日の本切手 美女かるた』でもまとめておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。


 ★★★ 講座のご案内 ★★★

 ・よみうりカルチャー荻窪 「宗教と国際政治」
 4月から毎月第1火曜の15:30より、よみうりカルチャー荻窪(読売・日本テレビ文化センター、TEL 03-3392-8891)で講座「宗教と国際政治」がスタートします。ぜひ、遊びに来てください。詳細は、こちらをご覧いただけると幸いです。
 

 ★★★ 内藤陽介の新刊  『ペニー・ブラック物語』 のご案内 ★★★ 

       ペニーブラック表紙 2350円+税

 【出版元より】
 若く美しい女王の横顔に恋しよう!
 世界最初の切手
 欲しくないですか/知りたくないですか

 世界最初の切手“ペニー・ブラック”…名前は聞いたことがあっても、詳しくは知らないという収集家も多いはず。本書はペニー・ブラックとその背景にある歴史物語を豊富なビジュアル図版でわかりやすく解説。これからペニー・ブラックを手に入れたい人向けに、入手のポイントなどを説明した収集ガイドもついた充実の内容です。

 発売元の特設サイトはこちら。ページのサンプルもご覧いただけます。


 ★★★ 内藤陽介の新刊  『アウシュヴィッツの手紙』 のご案内 ★★★ 

       アウシュヴィッツの手紙・表紙 2000円+税

 【出版元より】
 アウシュヴィッツ強制収容所の実態を、主に収容者の手紙の解析を通して明らかにする郵便学の成果! 手紙以外にも様々なポスタルメディア(郵便資料)から、意外に知られていない収容所の歴史をわかりやすく解説。

 出版元のサイトはこちら。各書店へのリンクもあります。

 インターネット放送「チャンネルくらら」にて、本書の内容をご紹介しております。よろしかったら、こちらをクリックしたご覧ください。


 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★

 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインよろしくポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。
スポンサーサイト

別窓 | 日本:ふるさと | コメント:0 | トラックバック:0 | top↑
<< ブリュッセル空港、出発ロビー再開 | 郵便学者・内藤陽介のブログ |  ケニアで反密猟サミット>>
この記事のコメント
コメントの投稿
 

管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック
| 郵便学者・内藤陽介のブログ |
copyright © 2006 郵便学者・内藤陽介のブログ all rights reserved. template by [ALT-DESIGN@clip].
/