内藤陽介 Yosuke NAITO
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 文化大革命50年
2016-05-16 Mon 14:43
 中国のプロレタリアート文化大革命(以下、文革)の直接の端緒として、中国共産党(中共)が“反革命分子との生きるか死ぬかの闘い”を呼びかけた「五一六通知」が1966年5月16日に発せられてから、今日でちょうど50年です。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

      中国・第1回アジア新興勢力体育大会

 これは、1966年12月31日に発行された「第1回アジア新興勢力体育大会」の記念切手のうち、“敬愛する毛主席”と題する1枚です。

 1949年以来の中華人民共和国の記念特殊切手には、1967年4月15日に発行の「第3次5ヵ年計画」の切手まで、たとえば、“紀97.6‐6(97番目の記念切手6種セットのうちの6番目)”、“特49.6‐3(49番目の特殊切手6種セットのうちの3番目)”などの編号と呼ばれる整理番号が入っていましたが、文革のピークにあった1967年4月20日に発行の「毛主席の長寿を祝う」から1970年7月1日発行の「辺境警備兵士」の切手までは、“切手収集はブルジョアの趣味”として迫害の対象となっていたこともあって、編号が省略されていました。編号は、1970年8月1日に発行された「現代京劇『智取威虎山』」の切手から形式を変更して復活しますが、この編号なしの時期の切手が、いわゆる“(狭義の)文革切手”とよばれています。

 したがって、今回ご紹介の切手は“紀121.4‐1”の編号がしっかり入っているので、切手の世界では“文革切手”には含めないのが一般的なのですが、「五一六通知」の発表後、最初に発行された毛沢東の肖像切手であり、“敬愛する毛主席”との題で毛沢東に対する個人崇拝の風潮が明確に反映されていますので、文革初期の状況を示す資料であることには違いありません。

 さて、今回ご紹介の切手の発行名目となった“アジア新興勢力体育大会”は、1966年11月25日から12月6日まで、中国の肝煎りでカンボジアで開催されたスポーツ競技大会で、アジアンGANEFOとも呼ばれています。

 1962年8月、インドネシアのジャカルタで開催の第4回アジア大会に先立ち、“第三世界の盟主”を標榜していたインドネシアのスカルノ政権は、アラブ諸国ならびに中華人民共和国との連携を重視して、参加資格を有するはずのイスラエルと中華民国(以下、台湾)の選手団に対してビザを発給しませんでした。

 これに対して、国際オリンピック委員会(IOC)、国際陸上競技連盟、国際ウエイトリフティング連盟は、参加資格がある国の参加を認めないことを理由に、第4回アジア大会を正規の競技大会とは認めないとの方針を表明。さらに、翌1963年4月にIOCがインドネシアのIOC加盟国としての資格停止(オリンピック出場停止)を決議すると、これに対抗しアラブ諸国12ヶ国が1964年の東京五輪のボイコットを示唆して、対立が深まりました。

 このため、1963年4月28日、インドネシアはIOCからの脱退を表明し(ただし、実際には脱退しませんでしたが)、中国を含む共産諸国、新興アジア・アフリカ諸国と同調して1963年11月にジャカルタで新興国競技大会(GANEFO)を開催。51ヶ国2700人が参加しました。

 もっとも、IOCをはじめ既存の国際競技連盟はGANEFOに出場する選手は五輪参加資格を失うと宣言していたため(JOCは日本人選手が参加した場合は国体への参加資格も剥奪するとしていた)、IOCに参加していなかった中国以外は有力選手を出場させず、スポーツの競技大会としては、一部を除き低調に終わりました。

 その後もスカルノ政権とIOC(のみならず西側世界全般)の対立は続きましたが、1965年にいわゆる“9・30事件”が発生しスカルノが失脚すると、後継のスハルト政権は、西側陣営の一員として明確な反共路線を採択し、インドネシアは対外関係の修復に乗りました。

 この結果、中国とインドネシアの関係も冷却化し、。スポーツの世界においても、スカルノが立ち上げ、中ソの支援を受けていたGANEFOは事実上の開店休業状態に追い込まれます。

 そこで、国際スポーツの世界において活動の場を失った中国は新たに北京に“アジア新興国競技大会(Asian GANEFO)”の本部を立ち上げ、既存の国際大会に対抗しうる国際スポーツ大会の開催地として、当時急速に反米色を強めていたプノンペンに白羽の矢を立て、1966年11-12月に大会を開催させたというわけです。

 こうした経緯を経て開催された1966年のアジア新興国競技大会には、主催国のカンボジアのほか、セイロン、中国、インドネシア、イラク、日本、北朝鮮、ラオス、レバノン、モンゴル、ネパール、パキスタン、パレスチナ、シンガポール、シリア、北ヴェトナム、イエメンの17ヵ国が参加したという体裁が整えられました。
 
 参加国の多くは、いわゆる“非同盟中立”を標榜する左派政権の国で、バンコクでのアジア大会には参加していません。また、セイロン、インドネシア、日本、パキスタン、シンガポールの各国は、ほぼ同時期にバンコクで開催された第5回アジア大会にも参加していますが、ジャカルタでのGANEFO大会の時と同様、プノンペンの大会に参加することは選手としての活動に不利になることが予想されたため、参加したのは各国の主流の団体には属さない選手のみでした。

 大会の結果としては、中国が108の金メダルを獲得して貫録をみせつけ、次いで、北朝鮮が金メダル30、開催国のカンボジアが金メダル10で続いています。ちなみに、日本人選手の金メダル獲得数はカンボジアと同じ10でしたが、1962年の第4回アジア大会(台湾とイスラエルの参加をめぐって紛糾した大会)での日本の金メダル獲得数が73、カンボジアの獲得数がゼロであったことを考えると、大会のレベルもおのずと推測できましょう。

 まぁ、スポーツ大会の記念切手でありながら、肝心の競技の場面ではなく、毛沢東礼賛の人民を描く切手が堂々と発行されているという点からみても、アジア新興勢力体育大会の目的が奈辺にあったかということは容易に想像がつくと言ってしまえばそれまでなのですが…。

 
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