内藤陽介 Yosuke NAITO
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 原爆は米国の“誇り”なのか
2016-05-27 Fri 12:03
 伊勢志摩サミットのため来日中のオバマ米大統領は、サミット終了後のきょう(27日)夕方、現職の米国大統領として初めて被爆地・広島を訪れる予定です。というわけで、きょうはこんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      米・原爆ラベル(1995)

 これは、1994年末の米郵便公社(USPS)による“原爆切手”の発行撤回に抗議して、米国内の民間組織が制作した私製ラベルで、1991-95年の第二次大戦50周年シリーズのフォーマットに倣い、原爆のキノコ雲を描き、その脇に「誇りを思い出させるもの」の文言が、印面下部に「原爆が戦争を終わらせ、多くの人命を救った」との文言が入っています。

 米国の第二次大戦50年シリーズは、1991年から毎年、50年前の重要な出来事10件を表現する切手を組み合わせたシートの形式で発行されました。その1945年の分の1枚として、原爆のきのこ雲を描き「原爆が戦争の終結を早めた」との説明文をつけた切手の発行が計画されていることが1994年末に明らかになったことで、この問題が日米間で政治問題化。結局、米側は、“原爆が戦争の終結を早めた”との政府見解は撤回しないものの、対日関係を配慮して“原爆切手”の発行は撤回。代わりに、日本降伏を発表するトルーマンを描く1枚をセットに組み込んで、切手を発行しました。

 これに対して、原爆投下の正当性を主張する米国内のグループは幻に終わった“原爆切手”を模したラベルを独自に作成。政府の弱腰を批判するとともに、あらためて“原爆が戦争を終わらせた”ことをアピールしています。この類のラベルはいくつか種類があるのですが、不発行に終わった切手の文言が「原爆が戦争の終結を早めた」だったのにたいして、今回のラベルの文言は、戦争を終わらせただけでなく、人名も救ったという内容となっていることで、より強硬な姿勢がうかがえます。

 歴史的な事実関係からいえば、米国が原爆を投下したのは、東西冷戦が始まりつつある中で、当時世界唯一の核保有国としてのパワーを見せつけるとともに、戦後の東アジアにおいてソ連に対する優位を確保するためのものでした。したがって、結果として、原爆の投下により戦争終結が早まったということは事実かもしれませんが、米側の主張するように、米軍が日本本土で戦闘を行った場合に予想された数十万の将兵の犠牲を防ぐための止むを得ざる措置であったとするのは、無理があります。そもそも、広島・長崎への原爆投下は、非戦闘員に対する大量虐殺であり、それが、当時の戦時国際法に照らしても明白な違法行為だったわけですから。

 ただ、米国内では、「原爆投下が戦争の終結を早め、結果的に多くの米国人の命を救った」として原爆投下を正当化する論調は拭いがたく定着していることも事実で、そうした彼らに対して、ただ単に“遺憾”“不快”“国民感情を逆なで”など、感情論を爆発させているだけでは、事態は何も変わらないでしょう。やはり、この問題については、原爆が投下されるにいたった歴史的経緯を、事実に基づいてきちんと説明することで、米国(人)の主張に反駁していくことが必要なのではないかと思います。

 なお、1994年末の、いわゆる原爆切手騒動については、拙著『外国切手に描かれた日本』でも1章を設けて詳しく論じておりますので、機会があり間設楽、ぜひご覧いただけると幸いです。

 
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