内藤陽介 Yosuke NAITO
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 切手に見るソウルと韓国:韓国の石炭産業
2016-05-29 Sun 17:01
 『東洋経済日報』5月20日号が発行されました。僕の月一連載「切手に見るソウルと韓国」は、今回は、韓国の石炭産業を牽引してきた大韓石炭公社(以下、石炭公社)が廃業の予定であることが明らかになったというニュースにちなんで、韓国の石炭産業を題材にしたこの切手をご紹介しました。

      韓国・石炭(1971)

 これは、朴正煕政権下の1971年に韓国で発行された“経済発展”の切手のうち、石炭産業を取り上げた1枚です。

 日本統治時代の朝鮮での炭鉱開発は半島北部に集中していました。

 1944年度の朝鮮全体の石炭の生産量は745万トン(926万トンの消費量とのギャップは日本内地産の石炭によって賄われていました)で、単純計算では、月間約62万トンになります。

 ところが、米ソの南北分割占領により、北朝鮮地域からの石炭の供給が止まると、1945年9月から翌1946年3月までの間、米軍政下の南朝鮮の生産量は月平均6373トンにまで激減。鉄道の運行もままならなくなってしまいます。

 事態を深刻に受け止めた米軍政庁は、1946年3月、石炭生産委員会と石炭鉱業資金制度を設け、朝鮮石炭配給会社による国営炭の販売を開始。その後、石炭の生産は徐々に回復し、1948年4月には8万4351トンに達しましたが、それでも、南朝鮮の石炭需要を満たすことは到底できず、日本からの輸入に頼らざるを得ませんでした。

 1948年8月、大韓民国が正式に発足すると、米国は北朝鮮に対抗しうる経済力を韓国に付けさせるべく、江原道の炭田開発に対する大規模な支援を開始。韓国政府も1950年に石炭増産5カ年計画を策定し、1949年に104万4000トンだった石炭の生産を1954年には249万6000トンに増やすことを目標に、具体的な政策を開始しました。

 ところが、その主な担い手として、大韓石炭公社の設立準備が進められていたさなかの1950年6月25日、北朝鮮の南侵により朝鮮戦争が勃発します。戦闘により、炭鉱施設が破壊されただけでなく、従業員も戦前の3分の1にまで減少。石炭の生産量も年間7万8174トンにまで激減し、韓国の石炭産業は危機的な状況に陥りました。

 こうした中で、ともかくも石炭の生産を確保するために公社設立の準備が急ピッチで進められ、1950年10月には総裁の許政以下、役員人事が発令され、11月には最初の政府出資金40億ウォンが払い込まれ、ようやく石炭公社が発足します。翌1951年1月には中国人民志願軍がソウルに侵入すると、石炭公社は釜山に臨時本部を置いて旧石炭配給会社の事業を継承するかたちで、翌2月から石炭の需給事業を開始しました。

 その後、石炭公社は戦災復旧3カ年計画を策定し、石炭産業の再建に乗り出しましたが、戦時インフレが昂進したことから生産原価が急騰して資材の確保が困難になり、また、収益の悪化から従業員給与の遅配も相次いだことからストライキも起こるなど、経営は苦難の連続でした。

 このため、休戦後の1955年、韓国政府は軍の余剰人員を公社に派遣し、軍所有の機材やトラック、食糧などを持ち込むとともに、陸軍の規律やノウハウを公社に導入するなどして、経営の再建に乗り出します。これと並行して、政府は炭鉱地域と大都市圏を結ぶ“三大産業線”鉄道などのインフラを整備し、石炭産業の育成に力を注いぎました。

 鉄道インフラの整備により輸送コストが下がると、小規模の民営炭鉱が市場に参入するようになり、市場の競争が発生。そこで、石炭公社は民間の江原炭鉱社長の鄭寅旭を総裁として招聘し、コストダウンをはじめ民家企業の経営ノウハウを取り入れることで黒字経営を実現し、従業員の給与も上昇しました。

 こうした基盤の上に、1960-70年代の朴正熙政権下で深部炭田開発が進められ、1971年には漢江の奇跡を支えた重要産業として、石炭産業は今回ご紹介の切手にも取り上げられることになったわけですが、時代の変化により、それも“今は昔”の話となってしまったわけです。ちなみに、現状では、石炭公社は、昨年(2015年)末の時点で1兆5989億ウォン(約1470億円)の負債を抱えているだけでなく、毎年1000億ウォン(約90億円)近い赤字を計上していますから、今回の廃業決定も、まぁやむを得ないでしょう。

 なお、現在、韓国国内には5カ所の炭鉱がありますが、来年(2017年)には全羅南道の和順炭鉱が、2019年には江原堂の長省炭鉱がそれぞれ廃鉱になり、2021年以降には最後に残った江原堂の道渓炭鉱も廃鉱になる可能性が高いとみられています。その後、練炭需要のための石炭は、民間所有の炭鉱2カ所が生産する予定だそうです。

 
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