内藤陽介 Yosuke NAITO
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 無事帰国しました。
2016-06-06 Mon 19:22
      ニューヨーク展・APSメンバーと

 さきほど、本日(6日)夕方、無事、ニューヨークから帰国いたしました。現地では、世界切手展<NEW YORK 2016>日本コミッショナーの吉田敬さん、アシスタント・コミッショナーの池田健三郎さん、菊地恵実さん、出品者の井上和幸さん、斉藤環さん、田村邦彦さん、長谷川純さんをはじめ、多くの方々にいろいろとお世話になりました。お世話になった全ての方々に、この場をお借りして、あらためてお礼申し上げます。

 冒頭の写真(以下、記事中の画像はすべてクリックで拡大されます)は、一般社団法人・全日本郵趣連合理事の井上和幸さん(右から2人目)、斎藤環さん(写真撮影に回っていただいたため、残念ながら写真には写っていません)と3人で、切手展実行委員長のウェイド・サーディ氏(中央)、スティーヴン・ロッド氏(左から2人目)らとの会談後に撮影したものです。今回の現地での会談は、今後の郵趣界にも大きな影響を及ぼす内容となり、大変に実りのあるものとなりました。その具体的な成果につきましては、数ヶ月以内には公表できると思いますので、どうぞご期待ください。

 さて、現地では、今回の切手展を記念して会期初日(5月28日)に発行された切手のシートを買ってきました。(下の画像)

       米・ニューヨーク展シート

 切手のデザインは、19世紀の切手や紙幣に用いられていたクラシックな彩紋のパターンを再現したもので、裏面には、赤と青の組み合わせの例として、こんな図も印刷されていました。

        米・ニューヨーク展シート裏面

 切手や紙幣などに用いられる彩紋の印刷には、歯車を組み合わせて複雑な幾何学模様の原版彫刻を行う“彩紋彫刻機”が不可欠ですが、この機械は、19世紀初頭に発明されました。切手のデザインとしては、1843年にブラジルで発行された“牛の目”の切手が、その特徴を活かした名品として有名です。

 彩紋彫刻機のルーツについては、1810年にスイス生まれのヤーコブ・デーゲンが発明した“guillochiermaschine”とする説と、1812年に米国で特許を取得したエイサ・スペンサーの“geometrical lathe”とする説があります。両者の接点やその発明内容の異同については良くわかっていませんが、どちらももともとは時計職人で、時計の文字盤などに装飾模様を彫刻する“ローズ・エンジン”に改良を加えて紙幣の原版彫刻に応用し、偽造防止に役立てるという点では共通しています。

 さて、この発明に即座に目をつけたのが、後に、世界最初の切手ペニーブラックの製造に深くかかわってくるジェイコブ・パーキンスでした。

 パーキンスは、1766年、北米マサテューセッツのニューベリーポート生まれ。10代の頃は鍛冶職人として修業を積んでいましたが、その腕を見込まれて21歳の時にマサテューセッツ造幣局に雇われ、コインの原版彫刻を担当します。

 その後、爪切りから大砲の製造までさまざまな機械製作に携わっていましたが、凹版彫刻用の鋼材を開発したのを機に、彫刻家のギデオン・フェアマンと共に印刷所を創業し、1809年、学校の教科書の印刷を始めました。

 フェアマンが原版を彫刻した挿絵の教科書は、当時としては画期的なもので大いに評判となったことから、パーキンスは印刷事業に本腰を入れるようになります。その一環として、パーキンスは、スペンサーから彩紋彫刻の特許を買い取っただけでなく、スペンサー本人を雇い入れて、彩文彫刻を施した紙幣の製造に着手しました。

 一方、当時の英国では偽造紙幣の横行が深刻な社会問題となっており、英国政府は、1819年、賞金2万ドルを掲げて“偽造不可能な紙幣”を公募します。

 この機会をとらえて、パーキンス、フェアマン、スペンサーの3人は渡英し、ロンドンのオースティン・フライヤーに彫刻凹版印刷にも対応可能な印刷所、パーキンス・アンド・フェアマン社のオフィスを構え、王立協会会長のジョゼフ・バンクス卿をはじめ、関係各方面に自分たちの試作品を売り込み、高い評価を得たのです。

 ところが、パーキンスらの試作品は、品質面では文句なく他を圧倒していたにもかかわらず、ジョゼフ・バンクス卿は、“偽造不可能な紙幣”を作るのはイングランドの出身でなければならないと頑なに主張しており、そのままでは、“外国人”であるパーキンスらが紙幣製造を受注するのは困難でした。

 そこで、パーキンスは、当時、英国を代表する凹版彫刻家であり、出版業者でもあったチャールズ・ヒースを共同経営者として迎え入れ、1819年12月、フリート・ストリートにパーキンス・フェアマン・アンド・ヒース社を開業しましたが、ほどなくしてフェアマンがパーキンスらと袂を分かったため、パーキンス・アンド・フェアマン社として“偽造不可能な紙幣”を製造することになります。

 ここに、1823年、彫刻家のヘンリー・ペッチが入社。さらに、1829年5月、パーキンスの二女と結婚したジョシュア・バタース・ベーコンが共同経営者となったことで、彼らの印刷所はパーキンス・ベーコン社に社名を変更。1834年にはペッチも共同経営者に名を連ねるようになったことで、後に、ペニー・ブラックの印刷を請け負うことになる“パーキンス・ベーコン・アンド・ペッチ社”が誕生しました。

 その意味では、米国人こそがペニー・ブラックを作ったとも言いうるわけで、今回の切手に、19世紀米国の彩紋のデザインが取り上げられたというのも故なきことではないわけです。

 なお、このあたりの事情については、拙著『英国郵便史 ペニー・ブラック物語』でもまとめておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。

 
 ★★★ アジア国際切手展<CHINA 2016>作品募集中! ★★★

 本年(2016年)12月2-6日、中華人民共和国広西チワン族自治区南寧市の南寧国際会展中心において、アジア国際切手展<CHINA 2016>(以下、南寧展)が開催されます。同展の日本コミッショナーは、不詳・内藤がお引き受けすることになりました。

 現在、出品作品を6月12日(必着)で募集しておりますので、ご興味がおありの方は、ぜひ、こちらをご覧ください。ふるってのご応募を、待ちしております。

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