内藤陽介 Yosuke NAITO
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 父の日
2016-06-19 Sun 14:18
 きょう(19日)は“父の日”です。というわけで、“母の日”の時と平仄をあわせて、ブラジル切手の中から、“父”に相当する単語の入ったこの1枚です。(画像はクリックで拡大されます)

      ブラジル・サントス=ドゥモン50年

 これは、1956年10月に発行された“サントス=ドゥモン(フランス語だとサントス=デュモン)の初飛行50周年”の記念切手で、印面の下部に“飛行機の”を意味するポルトガル語の“PAI DA AVIAÇÃO”の文言が入っています。

 アルベルト・サントス=ドゥモンは、1873年、ミナスジェライス州の裕福なコーヒー農園主の子として生まれました。

 幼少期からジュール・ベルヌの小説を愛読し、7歳にして牽引車を運転、12歳のときには農場を走る機関車を運転し田と言われています。18歳の時、父のアンリが仕事中に落馬し、骨盤を骨折して亡くなったため、莫大な財産を相続して祖先の国であるフランスに移住。飛行船や航空機の開発に熱中することになります。

 そして、1901年には半硬式の飛行船6号機で、制限時間内にエッフェル塔の周りをまわる飛行に成功し、ドゥーチ賞を受賞。そして、1906年10月22日には、エンテ型の動力機“14-bis”号の公開実験で高さ3m、距離約60mを飛行。11月12日再び公開で高さ6m、距離220mを飛行し、100m以上の飛行にかけられていたアルシュデック賞(アルクデアコン賞)を獲得しました。これはヨーロッパにおける最初の飛行機の飛行であると同時に、当時のヨーロッパでは、ライト兄弟による1903年の“初飛行”が知られていなかったこともあって、“世界最初の飛行”として高く評価されました。

 その後、ライト兄弟の初飛行が広く知られるようになったため、飛行機の発明者としては、サントス=ドゥモンではなく、ライト兄弟を挙げるのが一般的になりましたが、現在なお、ブラジルではサントス=ドゥモンこそが“飛行機の父”であると多くの人が考えているそうです。

 彼らの主張によると、

 1.1903年12月13日に米ノースカロライナ州のキティホークでライト兄弟が行ったとされる“初飛行”を目撃した証人は5人しかおらず、証拠とされる写真も初飛行から数年後にようやく発表されたもので、信憑性に乏しい。(ちなみに、公開の場でライト兄弟が飛行に成功したのは1908年で、サントス=ドゥモンの飛行よりも2年後のことです)

 2.仮に、ライト兄弟の初飛行が事実であったとしても、1903年の飛行実験後も兄弟の飛行実験にはカタパルトが使用されており、カタパルトを利用しての飛行であれば、飛行機ではなく“グライダー”とみなすべき。

 3.ライト兄弟の飛行機とされるライトフライヤー号を復元した飛行試験は、複数の研究者が挑戦したものの、いずれも失敗している。

 との理由から、1903年のライト兄弟の初飛行はかなり疑わしいのに対して、多くの人が見守る公開の場で行われた1906年のサントス=ドゥモンの初飛行は、誰もが疑う余地のない業績であるので、これこそが公式な“世界初飛行”とされるべきだというものです。なるほど、これはこれで説得力のある主張ですな。 

 なおサントス=ドゥモンは、1906年の初飛行で得た賞金を慈善活動に寄付しただけでなく、機体の特許を取らず、誰にでも飛行原理を理解出来るよう設計図を公開するなど、その人格的な高潔さも高く評価されています。

 しかし、第一次大戦が勃発し、飛行機や飛行船が兵器として使用された事実に失望。ヨーロッパを去ってブラジルに帰ったものの、ブラジルでも内戦鎮圧のために飛行機が使用されていることにショックを受け、飛行機の“平和利用”を訴えたものの、大統領や議会から無視されたため、絶望のあまり、1932年、サンパウロ州グアルジャのホテルでネクタイで首を吊って自殺しました。

 彼の死後、その栄誉をたたえて、1936年に開港したリオデジャネイロの空港はサントス=ドゥモン空港と命名されたほか、博物館等の公共施設や勲章など、彼の名を冠した施設等がブラジルには数多く存在しています。

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