内藤陽介 Yosuke NAITO
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 切手歳時記:ゲンジボタル
2016-06-20 Mon 10:42
 ご報告が遅くなりましたが、公益財団法人・通信文化協会の雑誌『通信文化』2016年6月号ができあがりました。僕の連載「切手歳時記」は、今回はこの1枚を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      ゲンジボタル

 これは、1977年5月18日に発行された自然保護シリーズの“ゲンジボタル”の切手です。

 日本の蛍といえば、ゲンジボタルとヘイケボタルですが、このうち、ヘイケボタルはゲンジボタルとの関連で、ゲンジボタルよりも小ぶりで光も弱いホタルということで、ゲンジボタルの後から命名されたようです。

 これに対して、今回ご紹介の切手にも取り上げられたゲンジボタルの名前の由来には諸説ありますが、ここでは、平安時代の武将、源頼政に由来するという説を紹介したいと思います。

 頼政は、1104年生まれの摂津源氏で、若い頃は、国守に任じられた父の仲政にしたがい、下総国(現在の千葉県北部)で過ごしたこともあります。1136年には、天皇の秘書官ともいうべき蔵人となり、従五位下に叙せられました。

 若い頃から弓の名手として知られ、近衛天皇(在位1142-55年)の御世には、帝を悩ませた鵺(サルの顔、タヌキの胴体、トラの手足を持ち、尾はヘビで、気味の悪い大声で鳴く)を退治したという伝説があり、その褒美として下賜されたという名刀“師子王”も残されています。

 1156年の“保元の乱”では後白河天皇に従い、1159年の“平治の乱”でも平清盛に味方し、ともに戦功を上げたことから、平氏政権下でも中央政界に留まり、源氏の長老として、1178年12月、清盛の奏請により、源氏の武士としては過去最高の従三位に叙され、公卿となりました。そして、1179年11月、家督を嫡男の仲綱に譲って出家します。

 一方、清盛は“平治の乱”の後に正三位となり、その後も昇進を重ねて1167年には従一位・太政大臣になっており、1170年代には「平氏に非ずんば人に非ず」という状況でした。

 こうした中で、清盛と後白河上皇の対立が先鋭化し、1179年、清盛は反平氏的とされた公卿らを全て解任とし、代わって親平氏的な公家を任官。後白河上皇の院政を停止して上皇を幽閉します。さらに、1180年2月、清盛は高倉天皇を譲位させ、高倉帝と清盛の娘・徳子との間に生まれた三歳の安徳天皇を即位させました。

 これに不満を抱いた後白河上皇の第三皇子、以仁王は、頼政らの兵力を頼りに、平氏政権打倒の挙兵を計画。1180年4月、以仁王は諸国の源氏と大寺社に平氏追討の令旨(本来は皇太子の命令を伝えるための文書)を発します。

 頼政はこれに呼応するかたちで、5月25日、園城寺に隠れていた以仁王と合流し、王を擁して興福寺へ向かいましたが、途中、宇治の平等院で休息中、平知盛・重衡ら率いる六波羅の大軍に追撃されます。

 翌26日の合戦で、頼政軍は宇治橋の橋板を落として抵抗したものの、平氏軍は宇治川を強行渡河し、頼政も辞世の句を残して平等院・扇の芝で切腹して果てました。

 無念の最期を遂げた頼政の霊は夜空の蛍に喩えられ、そこから、頼朝の亡霊が蛍となって平氏と戦ったという伝説が生まれます。ゲンジボタルの名前は、ここに由来するとされています。

 ちなみに、頼政が自害した治承4年5月26日は、西暦では1180年6月20日。ゲンジボタルの成虫が発生するのは6月中旬から7月上旬(ヘイケボタルは少し遅れて7-8月頃)ですから、戦の後、屍累々の宇治川には、きっと、夥しい数のホタルが群舞していたにちがいありません。この光景を見た人々が、そこに頼政の霊を感じたというのも、うなずける話です。


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