内藤陽介 Yosuke NAITO
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 切手に見るソウルと韓国:韓日「国宝」の仏像
2016-06-22 Wed 18:41
 『東洋経済日報』6月17日号が発行されました。僕の月一連載「切手に見るソウルと韓国」は、今回は、きのう(21日)から東京・上野の国立博物館で始まった“日韓国交正常化50周年記念 特別展「ほほえみの御仏―二つの半跏思惟像―」”にちなんで、この切手をご紹介しました。(画像はクリックで拡大されます。なお、掲載記事のタイトルは韓国系メディアでの掲載でしたので、日韓ではなく韓日となっていますが、ご了承ください)

      韓国・78号弥勒菩薩(白紙)

 これは、1962年に発行された韓国の50チョン切手で、今回、日本で展示されている国宝78号の弥勒菩薩像が取り上げられています。

 国交正常化50周年記念事業の一環として、日韓でそれぞれ国宝に指定されている仏像の半跏思惟像を1体ずつ、すなわち、奈良・斑鳩の中宮寺の本尊、半跏菩薩像と韓国の国宝78号の金堂半跏思惟像(奈良・広隆寺の弥勒菩薩と似ていることで有名な国宝83号とは別の像)を2体並べて展示する企画展のうち、ソウル国立中央博物館での“韓日国宝半跏思惟像の出会い”展が5月24日から6月12日まで開催されたことを受けて、日本での展示「ほほえみの御仏―二つの半跏思惟像―」がきのうから7月10日まで、東京国立博物館で開催されています。

 そもそも、菩薩はサンスクリット(インドの仏典の言語)のボーディサットヴァを音訳したもので“悟りを求める人々”の意。悟りを目指して修行し、如来(悟りを開いた者)になる以前の者を指しますが、大乗仏教の発展に伴い、すでに悟りを得た如来の化身として人々の救済にあたるケースもあります。仏像としては、釈迦が出家する以前の例にならい、古代インドの貴族の姿を表現したものが多くなっています。サンスクリットで“マイトレーヤ”と呼ばれる弥勒菩薩は、釈迦の次に如来となることが約束された最高位の菩薩で、釈迦の入滅後、56億7000万年後の未来に姿を現し、多くの人々を救うとされています。

 ところで、展覧会の名称にも含まれている“半跏思惟像”というのは、椅坐して左足を下ろし、右足を上げて左膝上に置き、右手で頬づえをついて瞑想する姿を表現した仏像で、日本では弥勒菩薩像と言えば、この像容を連想する人も多いでしょう。たしかに、朝鮮半島ならびに日本の古い時代の弥勒菩薩像は、おおむね、半跏思惟像です。

 ただし、諸外国にも目を転じてみると、全ての弥勒菩薩像が半跏思惟像なわけではなく、インドでは水瓶を手にする像が作られていました。イスラム原理主義者のターリバーンによって破壊されたアフガニスタン・バーミヤーンの巨大石仏も弥勒菩薩像として建立されたものですし、唐代以前の中国では足を交差させ椅子に座る像もつくられています。朝鮮半島でも、高麗時代の10世紀に建立された論山市・潅燭寺の弥勒菩薩像は、当時の風俗を反映して、細長く伸びた頭と角帽のような2段の宝冠をかぶった立像という独特の風貌になっています。

 さて、国宝78号の半跏像は、高さ82センチの金銅製で、宝冠の上に三日月と丸い太陽を載せた日月飾の装飾は、イランのササン朝の王冠から由来したものと考えられています。この宝冠が像の特徴となっているため、国宝78号は“日月飾三山冠思惟像”と呼ばれることもあります。

 また、国宝78号の身体表現はしなやかで弾力があり、羽のような衣、X字型の天衣の裾、形式的な衣のしわの表現などは、中国の東魏及び西魏の仏像様式が反映されていることから、(資料が残されていないので正確な年代は特定できませんが)6世紀後半頃の三国時代の制作と推定されています。

 なお、ソウルでの展示では、像を保護する観点から、中宮寺の半跏像については照明を100ルクス以下に抑えて展示していたのに対して、国宝78号については照明をやや明るくして展示していたが、東京での展示についても両者の照明が異なっているかどうか、チェックしてみるのも面白いかもしれません。


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