内藤陽介 Yosuke NAITO
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 ダッカで人質事件
2016-07-02 Sat 19:09
 バングラデシュの首都ダッカで、現地時間1日夜(日本時間深夜)、武装集団が飲食店を襲撃し、外国人客を含む数十人を人質にとって店内に立てこもる事件が発生。事件から10時間以上が経った2日、現地の治安当局が強行突入に踏み切り、銃撃戦の末に現場を制圧しました。なお、警察との銃撃戦により死亡した人質20人の全員が外国人で、大半が日本人とイタリア人だったそうです。犠牲者の方々のご冥福を心よりお祈りいたします。というわけで、きょうはこんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      バングラデシュ・パキスタン混貼

 これは、バングラデシュ独立間もない1972年1月1日、東パキスタン時代の葉書にバングラデシュ切手を貼り足してチッタゴンから差し出された混貼使用例です。

 1947年に英領インド帝国が解体された際、現在のバングラデシュに相当する地域は東パキスタンとして、現在のパキスタンに相当する西パキスタンとともにパキスタン・イスラム共和国を構成することになりました。しかし、パキスタン国家の政治的な実権を握っていたのは西パキスタンで、東パキスタンで生産されるジュートによってもたらされる外貨は、西パキスタンに優先的に支出される状況が続きます。

 また、東パキスタンの住民の大半がベンガル語を母語としていたのに対して、パキスタン国家としての公用語は西パキスタンの主要言語であったウルドゥ語であり、そのことに対する東パキスタン側の不満も根強いものがありました。

 さらに、1970年の集中豪雨、ボーラ・サイクロンによって東パキスタン国土のほとんどが水没、17万人に上る死者が出たにもかかわらず、パキスタン政府の西パキスタン偏重政策は変わらず、東西の亀裂は決定的になります。

 こうした状況の下で行われた1970年の総選挙では、東パキスタンを地盤とするアワミ連盟が“バングラ民族主義”を掲げ、東パキスタンの選挙区で162議席中160議席を獲得。アワミ連盟の躍進が東パキスタンの分離・独立につながることを恐れたパキスタン政府は、選挙後、なかなか議会を開催しようとしなかったため、1971年3月7日、アワミ連盟は10万人の大集会を開催し、党首のムジブル・ラーマンがパキスタン中央政府への非協力政策を宣言しました。

 これに対して、3月25日、中央政府はムジブル・ラーマンを逮捕。さらに、パキスタン軍による東パキスタン住民の虐殺事件が発生します。翌26日、陸軍のジアウル・ラーマン少佐が「我々旧東パキスタンは旧西パキスタンに対し自由解放のための戦いを開始する」と宣言。4月10日には“バングラデシュ人民共和国”の独立が宣言された。

 すると、パキスタン政府は軍を空輸して武力鎮圧を試み、さらに、反独立派のイスラム過激派組織がベンガル人の大量殺戮を行ったため、9ヶ月で300万人もの死者が発生しました。

 この動きに目をつけたインドは、パキスタンを弱体化させるために、東パキスタンからインドへの難民流入を“人口学的侵略”として、1971年12月3日、パキスタンに侵攻。第3次印パ戦争が勃発しました。

 圧倒的な兵力を誇るインド軍の前に、パキスタン軍はわずか10日余りで降伏。12月16日、パキスタンはバングラデシュの独立を承認します。

 今回ご紹介の葉書は、こうした状況下、東パキスタンからバングラデシュへの移行期間に使用されたもので、パキスタン時代の葉書に、バングラデシュ切手2種(同年3月のパキスタン軍による東パキスタン住民の虐殺事件を非難する切手と、新生バングラデシュの地図を描いた切手)が貼られています。

 ところで、1971年3月のパキスタン軍による住民虐殺事件には、バングラデシュ最大のイスラム政党、ジャマティ・イスラミ(イスラム協会)の主要幹部が関与していたとして、2013年には、独立時の幹部4人が戦争犯罪を問われ死刑や終身刑の判決を受けたほか、世俗主義を定めたバングラデシュの憲法に違反するとして、同党の政党登録を違法とする高裁判決が出されています。

 当然のことながら、ジャマティ・イスラミが全国で激しい抗議運動を展開すると、これと連動してBNP率いる野党18連合がハシナ首相率いるアワミ連盟政権の退陣を求める運動を始め、各地で流血事件が発生。数百人の死者と数千人の負傷者が発生しています。こうした中で、野党18連合は2014年1月5日に行われた総選挙をボイコットしたため、与党アワミ連盟が圧勝。同月12日にはハシナ首相(3期目)を首班とするアワミ連盟政権が発足し、現在に至っています。

 なお、2014年の総選挙後、一時、バングラデシュの治安は安定の方向に向かっていましたが、2015年以降、野党連合は再び激しい反政府運動を展開。そこに付け込むかたちで、イスラム過激派も着実に勢力を伸ばしており、今回の事件も、そうした文脈の中で発生したものとみてよさそうです。

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