内藤陽介 Yosuke NAITO
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 世界の国々:グレナダ
2016-07-06 Wed 10:19
 アシェット・コレクションズ・ジャパンの週刊『世界の切手コレクション』2016年7月6日号が先週発行されました。僕が担当したメイン特集「世界の国々」のコーナーは、今回はグレナダの特集(2回目)です。その記事の中から、この1点をご紹介します。(画像はクリックで拡大されます)

      グレナダ・カリアク消

 これは、19世紀にグレナディーン諸島のカリアク島で使用されたグレナダ切手です。

 1649年、グレナダ本島を獲得したフランス・アメリカ島嶼会社は、翌1650年、同島をジャク・ドゥ・パルケに売却しましたが、1664年には、ルイ14世が同島を購入し、フランス西インド会社の管理下に置いています。さらに、1674年にフランス西インド会社が解散すると、グレナダはフランス王室の直轄領となりました。

 ところで、セント・ヴィンセント島では、1719年以降、フランス人入植者がコーヒー、砂糖などのプランテーション栽培を行っていましたが、これに対して、英仏七年戦争の講和条約として1763年に調印されたパリ条約では、セント・ヴィンセント、グレナダの両島とその間のグレナディーン諸島は、一括して、英国の支配下に置かれることになります。

 1770年前後には、アメリカ大陸からの私掠船がセント・ヴィンセント島周辺でイギリス船を襲撃するようになりますが、その背後でフランスは先住民族のカリブ人に武器を供与し、英国に対する抵抗運動を煽動していました。このため、英国の南カリブ諸島総督、ウィリアム・レイボーンは、カリブ人が多く反英感情の強いセント・ヴィンセント島を自らの管轄から外すよう、ロンドンの本国政府に具申。また、米国独立戦争前夜の1774年、北米情勢が緊迫する中で南カリブ諸島総督として着任したヴァレンタイン・モリスは、グレナディーン諸島北部のベキア、バリソー、マスティク、カヌアンの各島を、行政上、グレナダから分離してセント・ヴィンセントの管轄とするよう提案し、承認を受けています。

 1779-1783年、米国独立戦争の余波でセント・ヴィンセントとグレナダ両島および中間に位置するグレナディーン諸島全域がフランスの占領下に置かれましたが、1783年、アメリカ独立戦争の講和条約としてパリ条約が締結され、これらの地域は英領に復しています。

 ふたたびグレナディーン諸島全域を領有した英国は、1791年、モリスの提案を引き継ぐかたちで、グレナディーン諸島のプティ・セント・ヴィンセント島とプティ・マルティニーク島の間に境界を設け、北側をセント・ヴィンセントの、南側をグレナダの管轄とします。かくして、現在のグレナダ・グレナディーンズ(グレナダ領グレナディーン諸島)という枠組が誕生しました。

 グレナディーン諸島の分割により、プティ・マルティニーク島以南の同諸島はグレナダの属領となり、行政上はふたつの主要な島の名前を採って“カリアク島およびプティ・マルティニーク島”属領区が設定されます。

 属領区に名前が挙げられたカリアク島は、属領区の中では最大の島で、属領区の北端に近い場所に位置しています。西暦500-1000年頃までには、先住民のアラワク人ないしはカリブ人が定住していたと考えられていますが、“カリアク”という地名は、カリブ人の言葉で“サンゴの土地”を意味です。西洋人としては、1656年、グアドループを拠点として活動していたフランス人宣教師のジャン・バティステ・デュ・テルトルが来島したのが最初で、これを機に、フランス人漁師が入植しました。

 一方、カリアク島の北東に位置するプティ・マルティニーク島は、18世紀初頭、マルティニーク島からフランス人漁師が入植したことが、島名の由来となっています。

 英領グレナダとして最初の切手(シャロン・ヘッド)が発行されたのは1861年のことですが、カリアク島の中心地、ヒルズボロの郵便局では、当初、今回ご紹介の切手に見られるように、“F”の文字が入った抹消印が使われていました。

 その後、長らくグレナディーン諸島でもグレナダ本島と同じ切手が使用されていましたが、独立直前の1973年末からグレナディーンズ諸島用の切手として“グレナダ・グレナディーンズ”名義の切手が発行されるようになります。さらに、1999年6月以降は、切手上の国名表示は“グレナダ カリアク&プティ・マルティニーク”に変更され、現在にいたっています。

 ただし、国家としてのグレナダは属領のグレナディーンズを含めても郵便の需要が多いわけではなく、通貨も東カリブ・ドルが共通に使用されています。さらに、グレナダ切手およびグレナディーン諸島の切手は、いずれもグレナダ全土で有効です。このため、グレナディーン諸島として独自の切手を発行・使用する必然性は乏しく、“グレナダ・グレナディーンズ”および “グレナダ カリアク&プティ・マルティニーク”名義の切手は、主として、海外の切手収集家向けの輸出商品としての色彩が強いものです。

 さて、『世界の切手コレクション』7月6日号の「世界の国々」では、グレナダ領のグレナディーン諸島についての話題を中心に、その歴史的経緯をまとめた長文コラムのほか、先コロンブス時代の土器、カリアク島最大の都市ヒルズボロ、キッケム・ジェニー海底火山、カリアク・レガッタの切手などもご紹介しております。機会がありましたら、ぜひ、書店などで実物を手に取ってご覧いただけると幸いです。

  なお、僕が担当する「世界の国々」は、本日発売の7月13号での英連邦の特集になります。こちらについては、発行日以降、このブログでもご紹介する予定です。

 
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