内藤陽介 Yosuke NAITO
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 あすから全日展(+オリンピックとブラジル切手展)
2016-07-21 Thu 00:22
 あす(22日)から、東京・錦糸町のすみだ産業会館で全日本切手展(全日展)が開催されます。(下はチケットの画像。以下、画像はクリックで拡大されます)

      全日展2016入場券

 今回は、全国の収集家の皆さんによる競争出品に加え、リオデジャネイロ五輪開幕直前の開催ということで“オリンピックとブラジル切手展”を併催するほか、全日展としては、小判切手発行140年にちなみ、“小判切手の至宝”として世界的に有名な設楽光弘さんによる特別展示を行います。チケットのデザインもそのことをイメージして、左側には、旧小判切手の45銭切手(下の画像)をデザインしました。

      旧小判45銭

 1875年、大蔵省印刷局のお雇い外国人として来日したエドアルド・キヨッソーネは、日本の切手・紙幣の近代化に着手しますが、切手に関しては、1872年に造幣局のお雇い外国人トマス・キンダーが天皇の肖像を貨幣に刻したいと建議して却下されたことを知っていたため、当初から、日本の紙幣・切手には天皇の肖像を入れずにデザインを組み立てることを考えていました。

 この結果、1876年5月17日から発行が開始されたのが、いわゆる小判切手です。

 小判切手は、エルヘート凸版という近代的な印刷方式によって製造された最初の切手という点で重要な意味を持っています。

 “小判”というネーミングですが、これは、当時の駅逓寮(郵便を担当していた官庁)なり大蔵省なりが命名したものではなく、のちに、収集家が名づけた名称です。西洋のデザインの伝統では“メダリオン”と呼ばれる枠の中に肖像や文様を描くことがあり、キヨッソーネのデザインも基本的にはこれを継承したものですが、日本人の感覚で、これを小判に見たてたのが名前の由来となりました。

 ちなみに、メダリオンの形状である楕円(楕圓)という言葉そのものは、中国・前漢の時代の董仲舒の著作を編集した『春秋繁露』にも用例がありますが、わが国では、江戸時代にニュートン力学を理解して紹介した蘭学者・志筑忠雄(宝暦10-文化3:1760-1806年)の『暦象新書』に登場しています。したがって、理論上は、“楕円切手”という表現もあり得たはずですが、やはり、枠の中央に額面数字が大きく記されているところなどは、“小判”のイメージの方がしっくりくるということだったのでしょう。

 次いで、それまでの手彫切手には国名表示が何もありませんでしたが、小判切手には“大日本帝國郵便”ならびに“IMPERIAL JAPANESE POST”という和英両文の国名表示が入れられました。

 わが国の国号については、明治維新を経て、1871年に鋳造された国璽では“大日本國璽”との表記になっており、必ずしも“大日本帝国”が正式の国号というわけではありませんでした。“大日本帝国”の文言が公文書に登場するのは、1873年6月30日付の在日オランダ公使からの来翰文邦訳に「大日本帝国天皇陛下ニ祝辞ヲ陳述ス」と記述されてからのことですが、翌1874年に新調された国璽でも従前どおり国号は“大日本國璽”となっており、大日本帝国とはなっていません。

 ちなみに、“大日本帝國”という国名が正式に採用されるのは、1889年に大日本帝国憲法が発布されてからのことですが、“大日本”を“おおやまと”、“帝國”を“すめらみくに”と訓読すれば、そうした用例は古代から存在していたともいえます。

 なお、西洋の政治用語としては、“帝国(英語ではEmpire)”は、複数のより小さな国や民族などを含めた広大な領域を統治する国家のことをいい、君主制であるか否かは問わないのですが(第3共和政のフランスがフランス帝国と呼ばれるのはこのためです)、小判切手の時代の国号の“大日本帝國”が、これとは全く異なることは明らかで、少なくとも、帝国憲法発布以降のイメージを投影して考えると、実態を見誤るのではないかと思われます。

 いずれにせよ、小判切手にいたって、ようやく、日本の切手は、それが日本政府によって発行されたものであることを内外に明らかにする態勢が整えられたということは特筆すべきことといってよいでしょう。

 こうして、1876年5月17日の5厘・1銭・2銭の3額面を皮切りに発行が開始された小判切手のうち、1877年8月18日、第4次発行分の一つとして発行されたのが、今回のチケットにも大きくデザインした45銭切手です。

 その主な用途は外信便ですが、1882年頃までは鳥切手(手彫)の45銭切手が残っていたこともあって需要は少なかったため、発行枚数はわずか1万6000枚しかありません。当然のことながら、残存数も少ないため、未使用・使用済ともに、小判切手のメインナンバーの中では、最もカタログ評価が高い1点として知られています。

 さて、今回の全日展で展示予定の設楽光弘さんのコレクションでは、小判切手のコレクションとしては、名実ともに現在、世界最高峰と評価されているものです。今回は、通常の世界切手展での出品枠上限の8フレームに、2フレーム分を追加して10フレームの展示となっています。ぜひ、この機会を逃さず、会場にお越しいただけると幸いです。


 ★★★ 全日本切手展(+内藤陽介のトーク)のご案内 ★★★

 7月22-24日(金ー日) 東京・錦糸町のすみだ産業会館で全日本切手展(全日展)ならびにオリンピックとブラジル切手展が開催されます。詳細は、主催団体の一つである日本郵趣連合のサイト(左側の“公式ブログ”をクリックしてください)のほか、フェイスブックのイベントページにて、随時、情報をアップしていきますので、よろしくお願いいたします。

      全日展2016チラシ

 *画像は全日展実行委員会が制作したチラシです。クリックで拡大してご覧ください。

 会期中の7月23日15:00から、すみだ産業会館9階会議室にて「リオデジャネイロ歴史紀行」と題するトークイベントを行います。ぜひ、ご参加ください。


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