内藤陽介 Yosuke NAITO
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 サントス=ドゥモンとアポロ11号
2016-09-15 Thu 12:14
 きょう(15日)は中秋節です。というわけで、最新の拙著『リオデジャネイロ歴史紀行』にちなんで、“月”に関するブラジル切手の中から、この1枚です。(画像はクリックで拡大されます)

      ブラジル・月面着陸

 これは、1969年10月17日、同年7月のアポロ11号の月面着陸を称えるために発行された切手です。左側には、ブラジル人が飛行機の父として敬愛するサントス=ドゥモンと彼のエッフェル塔旋回飛行を、右側には月面に着陸するアポロ11号を描き、サントス=ドゥモンと3人の宇宙飛行士の名前を印面下部に記すことで、飛行史に残る2大偉業を並立させるスタイルとなっています。

 第二次大戦後のブラジルは、ながらく左派ポピュリストの政権が続いていましたが、1964年、軍事クーデターによって、カステロ・ブランコ将軍を大統領とする軍事政権が誕生します。

 軍事政権は、政治の腐敗を正し、国家転覆の危機を排除するとの名目で憲法を停止。政府に批判的な政治家を1万人以上、逮捕・追放する一方、親米反共の砦として米国の支援を受けることで権威主義的な開発独裁体制を目指します。

 1966年10月に布告された軍政令第2号では、大統領は間接選挙(投票は連邦議会議員と地方代表で構成される選挙人団が行う)で選ぶものとされたほか、既成政党が廃止されたことで、政党は与党の国家革新同盟と野党のブラジル民主運動に再編されあした。そして、大統領選挙では国家革新同盟の推すアウトゥール・ダ・コスタ・エ・シウヴァ将軍が当選。そして、コスタ・エ・シウヴァ大統領の就任直前の1967年1月、軍事政権はそれまでに布告された軍政令を取り込んだ新憲法を公布しました。

 1967年憲法により、議会は形骸化し、大統領に戒厳令の施行や地方諸州への介入権が認められたほか、国名もそれまでのブラジル合衆国から現在のブラジル連邦共和国と改められます。ただし、こうした強権的な政治の下で、当時のブラジルは年10%を超える高い経済成長を記録し、ブラジル経済は“ブラジルの奇跡”と呼ばれる空前の好景気を謳歌していたことも事実です。

 ところで、軍事政権に対しては、学生のデモや労働者の抗議集会、ストライキが頻発しただけでなく、リオデジャネイロやサンパウロでは、キューバ革命の影響を受けたカルロス・マリゲーラ率いる民族解放行動(ALN)や10月8日革命運動(MR8)などがコスタ・エ・シウヴァ政権の打倒を唱えて武装闘争を展開しました。

 こうした中で、1969年8月28日、コスタ・エ・シウヴァが執務中に脳出血で倒れると、同31日、ペドロ・アレイショ副大統領の昇格ではなく、大統領は空席のまま、陸・海・空相からなる三頭政治に移行するという変則的な事態が発生します。そうした政治的な混乱と空白の隙を突くかたちで、9月4日、ALNとMR8の合同突撃隊が、リオで白昼、チャールズ・バーク・エルブリック米大使を誘拐する事件が発生しました。

 犯行グループはマスコミを通じて9月7日の独立記念日まで政治犯15名を釈放することを要求。当初、軍事政権はこれを拒絶しようとしましたが、大使の安全を最優先する米国の圧力を受け、最終的に犯行グループの要求を受け入れて政治犯を釈放し、大使も解放されました。

 面子をつぶされた軍事政権は、9月5日、軍政令13号、14号を公布し、釈放された15人に対して国家反逆罪を適用し、永久国外追放とすること、死刑制度を復活し、国家反逆罪に対しては極刑をもって臨むことを明らかにします。また、陸軍秘密警察のほかに、国防省内にテロ対策を専門とする社会政治保安局が創設され、ゲリラ組織への弾圧は強化され、9月29日には、大使誘拐事件の主犯だったALNのメンバーが逮捕され、拷問の末に殺害されました。

  9月30日には、“軍最高指導部”が空白となっていた大統領に陸軍内強硬派のエミリオ・メディシを指名。10月7日、メディシは軍事評議会により次期大統領に選出され、10月30日、正式に大統領に就任します。この間、10月17日には軍事評議会の承認を得て1969年憲法が公布され、正式に死刑制度が復活し、大統領の任期は4年から5年に延長されました。

 今回ご紹介の切手の発行日となった10月17日は、9月の大使誘拐事件の以前から決められていたことではありますが、上述のような政治的・社会的な背景の下、自国の英雄を顕彰してナショナリズムを強調するとともに、米国の偉業をたたえ、米国との友好関係を強調する(大使誘拐事件の後であれば、なおさら、その必要があったでしょう)ために企画・発行されたものと考えるのが妥当ではないかと思われます。

 
★★★ トークイヴェントのご案内 ★★★

 拙著『リオデジャネイロ歴史紀行』の刊行を記念して、東京・青山の駐日ブラジル大使館で下記の通り、トークイヴェントを開催いたします。ぜひ、ご参加ください。

 ・日時 2016年9月23日(金)18:00~20:00(17:30受付開始)
 ・会場 駐日ブラジル大使館 セミナー・ルーム
  〒107-8633 東京都港区北青山2丁目11-12 (地図はこちらをご覧ください)
 ・参加費 無料
 ・定員 30名(申込多数の場合は先着順)

  * 9月16日(金)までに、お名前・ご連絡先・ご所属を明記の上、電子メール、ファックス等で下記宛にお申し込みください。(お送りいただいた個人情報は、大使館へ提出する以外の目的には使用しません)
  申込先 えにし書房(担当・塚田)
  〒102-0074 千代田区九段南2-2-7-北の丸ビル3F
  Tel. 03-6261-4369 Fax. 03-6261-4379
  電子メール info★enishishobo.co.jp (スパム防止のため、★の部分を半角@に変えてご送信ください)

 なお、トークヴェベント終了後、20:30より近隣のブラジルレストラン「イグアス」にて懇親会を予定しております。(イグアスの地図はhttp://tabelog.com/tokyo/A1306/A130603/13048055/ をご覧ください) 
 会費は、『リオデジャネイロ歴史紀行』1冊の代金込みで6500円(書籍不要の場合は5000円)の予定です。参加ご希望の方は、トークイベントお申し込みの際に、その旨、お書き添えください。なお、懇親会のみの御参加も歓迎いたします。


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 * 8月6日付『東京新聞』「この人」欄で、内藤が『リオデジャネイロ歴史紀行』の著者として取り上げられました!

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