内藤陽介 Yosuke NAITO
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 切手歳時記:山鳥の尾
2016-10-11 Tue 12:24
 ご報告が遅くなりましたが、公益財団法人・通信文化協会の雑誌『通信文化』2016年10月号ができあがりました。僕の連載「切手歳時記」は、今回はこの1点を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      ヤマドリ・ローマ字入り

 これは、1971年12月1日に発行されたヤマドリの80円切手です。

 秋分の日を過ぎると、日の暮れるのが急に早くなったような気がして、“秋の夜長”を実感します。

 小学生の頃、柿本人麻呂の「あしひきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む」の歌の意味するところは下の句の「ながながし夜をひとりかも寝む」だけで、上の句の「あしひきの~」は「ながながし」を導く序言葉で特に意味はないと学校で教わりました。

 ちなみに、昔の人は、山鳥の雌雄は峰を隔てて寝ると信じていて、それゆえ、歌の世界では山鳥は“ひとり寝”の比喩になるのですが、“ひとり寝”の意味も分からぬ小学生にそんな話をしても仕方がありませんから、先生も授業では省略したのでしょう。じっさい、子供だった僕は、なんだかつまらない歌だと思いつつも、山鳥の尾がどれほど長いものなのか、学校帰りに、郵便局の窓口で買った山鳥の80円切手を眺めていた記憶があります。

 山鳥の80円切手には、1965年に発行された“NIPPON”の表示なしのものと、1971年に発行された“NIPPON”の表示入りのものがあるが、僕が見ていたのは、今回ご紹介の後者の方です。

 ヤマドリの尾の節は、最初の1年で5節できて、その後は毎年1節ずつ伸びていくのだとか。80円切手の節の数を数えると、印面の範囲では9節あるように見えますから、この鳥は最低でも5歳ということになります。ただ、尾の先端は明らかに画面の外にはみ出していますから、切手のモデルになった鳥の尾には、実際には、もう1節か2節あったのかもしれません。

 言い伝えでは、9歳を超え、尾が13節以上になったヤマドリには特殊な霊力が宿り、人間を騙したり、闇夜に光を発したりするとされてきましたが、長野県に伝わる「八面大王」の民話には、じつに33節という、とてつもないヤマドリの尾羽が登場します。

 その昔、信濃国・有明山中の“魏石鬼の窟”には八面大王と称する鬼が棲み、村人に乱暴狼藉を繰り返していました。

 その村の若者、弥助は、ある年の暮れ、ヤマドリが罠にかかっているのを見つけ、持っていたお金を罠に結わえるのと引き換えにヤマドリを放ってやります。それから3日後の大晦日、道に迷った美しい娘が弥助の家を訪ね、2人はそのまま夫婦になりました。

 それから3年後、蝦夷の討伐に向かう途中の坂上田村麻呂は八面大王のことを聞きつけ、鬼退治に乗り出したものの、大王の魔力は強く、田村麻呂の軍勢は歯が立ちませんでした。そこで、観音堂で一心に祈りを捧げたところ「33節のヤマドリの尾を矢にすれば、きっと退治できよう」とのご託宣が下ります。

 そこで、田村麻呂は信濃の国中に33節のヤマドリの尾を探すよう命じたが、だれも見つけることができませんでした。

 このことを知った弥助の妻は、自分がかつて弥助に助けられたヤマドリであることを明かし、「自分の尾を鬼退治に使ってほしい。これでやっと恩返しができる」と書置きと尾を残して姿を消してしまいました。

 はたして、弥助が残された尾で矢を作り、田村麻呂に献上すると、田村麻呂はその矢で八面大王を射殺し、村には平和がもたらされます。この結果、弥助は田村麻呂から多額の恩賞を得ましたが、妻を失った悲しみは癒えることなく、毎日、彼女の帰りを待ちながら亡くなりました。

 ヤマドリを愛した男は、結局、金や名誉と引換に彼女を失い、ヤマドリの比喩が意味する“ひとり寝”の生活でその生涯を終えたというわけですが、その物語は、人麻呂の山鳥の歌の景色と妙に重なり合っていて、大人になってから読み返すと、“ひたぶるにうら悲しい”気分にさせられます。


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