内藤陽介 Yosuke NAITO
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 マルコス、英雄墓地に埋葬へ
2016-11-08 Tue 21:34
 1986年のピープル・パワー革命で亡命し、ハワイで客死したフィリピンの独裁者、フェルディナンド・エドラリン・マルコス元大統領の遺体について、フィリピン最高裁は、きょう(8日)、マニラ首都圏の“ボニファシオ・シティー”にあるリビンガン・ナン・マガ・バヤニ(通称・国立英雄墓地)への埋葬を認める決定を出しました。というわけで、きょうはこんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      在比米軍・フォートマッキンリー・カバー(1946)

 これは、第二次大戦直後の1946年3月19日、マニラ近郊のフォート・ウィリアム・マッキンリー米軍基地内の第925野戦局から差し出された軍事郵便のカバーです。今回、マルコスの遺体が埋葬されることになった国立英雄墓地は、もともとは、同基地の敷地の一部でしたので、関連のマテリアルということで持ってきた次第です。

 フォート・ウィリアム・マッキンリー米軍基地は、米比戦争中の1901年、マニラ首都圏を流れるパシッグ川の南岸に開設されました。日米開戦を前に、軍事的緊張が高まるなかで、1941年7月26日、アメリカ極東陸軍が創設されると、その司令部が設置された基地でもあります。

 第二次大戦後の1946年7月4日、フィリピンが独立したことを受けて、1949年5月14日、フォート・ウィリアム・マッキンリー米軍基地はフィリピン政府に返還され、フィリピン陸軍の本部が置かれることになります。また、それにあわせて、基地の名前も、フォート・ウィリアム・マッキンリーから、19世紀末の独立革命の英雄、アンドレス・ボニファシオにちなんで、フォート・ボニファシオをと改称されました。

 英雄墓地は、フィリピン独立直線の1947年5月に設置され、独立後の1948年6月、フィリピン政府の管轄となりました。敷地面積は142ヘクタールで、もともとは、第二次大戦のフィリピン戦線での戦没者を埋葬するための施設で、各地で収集された無名兵士の遺骨が全体の8割を占め、それらは、バターンやタルラック、マニラ市内のフォート・サンチャゴなど地域ごとに整理され、埋葬されています。また、朝鮮戦争やヴェトナム戦争で亡くなったフィリピン人将兵の遺骨や、国内の共産ゲリラ(NPA)や分離独立を求めるイスラム勢力との戦闘で亡くなった将兵たちの遺骨も埋葬されています。

 さて、マルコスは、日本軍のフィリピン侵攻時、米比軍第21歩兵師団の戦闘情報局員として中尉の階級で従軍し、「18歳だった3人の新兵と共に、後方の日本軍前線を突破し敵兵の50人を殺害、同師団を釘付けにしていた日本軍の迫撃砲を破壊し、さらに日本軍の捕虜となった際、拷問をかけられながらもこれに反撃し脱出した」と主張し、その結果、大尉に昇進しています。しかし、実際には、マルコス本人は“バターン死の行進”から脱出することに成功はしたことまでは確認されているものの、その後の“軍功”を裏付ける資料や客観的な証言はなく、米公文書館の記録によれば、彼の戦時中の“抗日活動”の実績はほとんどなかったことが明らかになっています。

 それでも、マルコスは捏造した軍功により、自らを“抗日戦争の英雄”として人々に印象づけることに成功。そのことが、彼のその後の政治的な成功の出発点となったことは言うまでもありません。

 現在でも、マルコスの“抗日神話”はフィリピン国内では根強く信じられており、1998年に発足したエストラーダ政権は、遺族の希望もあって、マルコスの遺体を“抗日の英雄”として英雄墓地に埋葬する意向を表明。以後、マルコスの政治的評価をめぐり、彼の遺体を“英雄”の名を冠した墓地に埋葬することの是非をめぐって、長年にわたり、論争が続いていました。

 ことし5月に就任したドゥテルテ大統領は、もともとマルコス一族と親しかったこともあって、9月、北イロコス州に安置されていたマルコスの遺体を英雄墓地に埋葬する方針を表明。これに対して、“独裁政治の美化”と反発する声も強く、マルコス時代に人権侵害を受けた被害者らが差し止めを求め、最高裁に提訴していました。

 今回の裁定で、マルコスの遺体は英雄墓地に埋葬されることになったわけですが、本当に日本軍と戦ったフィリピンの英霊たちが、新入りのマルコスを見て「あれ、見たことのない奴だな。どうしてここにいるんだ?」と不審に思い、安らかな眠りを妨げられたりはしないか、僕などはそちらの方が心配ですな。


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