内藤陽介 Yosuke NAITO
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 世界の国々:ベナン
2016-11-29 Tue 11:54
 ご報告がすっかり遅くなりましたが、アシェット・コレクションズ・ジャパンの週刊『世界の切手コレクション』2016年11月23日号が発行されました。僕が担当したメイン特集「世界の国々」のコーナーは、今回はベナンの特集(2回目)です。その記事の中から、この1点をご紹介します。(画像はクリックで拡大されます)

      ベナン・エグン

 これは、ヴォドゥンの大祭の日に死神“エグン”の扮装をする人を描いた1983年の切手です。

 西アフリカおよびカリブ海地域のアフリカ系黒人の間で広く信仰されているヴォドゥンは、もともと、ベナンの最大民族であるフォン人の言葉で“精霊”を意味する言葉です。

 もともと、ヴォドゥン信仰は、西アフリカにおける太鼓を使った歌舞音曲や動物の生贄、シャーマンによる降霊などの儀式を伴う精霊信仰がその原型だったと考えられており、ベナンのフォン人のみならず、ナイジェリアのヨルバ人、トーゴのミナ人・カブイェ人、トーゴおよびガーナのエウェ人などの間で広く信仰を集めていました。

 現在のベナン国家のルーツにあたる旧ダホメ王国は奴隷貿易を行っていましたが、その支配下からカリブ海地域へ送られたフォン人伝来の精霊信仰がカトリックと習合する過程で、ヴォドゥンは“ヴードゥー”に転訛し、この名称が世界的に定着することになりました。

 なお、カリブのヴードゥーは、ハイチのマルーン(プランテーションからの逃亡奴隷)の指導者であったフランソワ・マッカンダルが発展させたもので、奴隷の信仰として、白人による弾圧を逃れる必要から、伝統的な精霊信仰に聖母マリアなどのキリスト教の聖人崇敬を組み込んでいるのが一つの特色です。このため、西アフリカの伝統的な精霊信仰とはやや趣を異にしていますが、一般には、両者は一括して “ヴードゥー”と呼ばれることも少なくありません。

 ヴォドゥンの信仰や文化は、西アフリカの自然や生活の中から生まれたもので、統一的な教義や教典はなく、組織化された教団もないため、民族・地域により大きな差があります。また、いわゆる布教活動も行われていません。このため、日本の宗教法人法によればヴォドゥンは“宗教”に該当しないことになります。

 しかし、ヴォドゥンを国教に指定しているベナン以外にも、2003年にはハイチのカトリック大司教もヴードゥーを“宗教”として認知していますし、ヴォドゥンを宗教もしくはそれに準じる民間信仰と認定している国も数多くあります。なお、ヴォドゥンおよび類似の信仰を有している人口は全世界で5000万人以上と推定されており、その規模は約3000万人といわれるチベット仏教をはるかに凌駕していることは見逃してはならないでしょう。

 さて、ヴォドゥンにはおよそ800もの神がいるとされているが、その中でも至高の存在とされているのが“マウ=リサ”です。

 マウ=リサは“ナナ=ブルク”と呼ばれる原初の神から生まれた女性神マウと男性神リサの双子の神で、創造の神として男女両性の特徴を備えており、今回ご紹介の切手に描かれたエグンを含め、ヴードゥーの神々はマウ=リサの子供、孫、子孫と考えられています。ただし、人々の信仰の対象は日常の事柄にかかわる個々の神々に集中しており、マウ=リサ自身が祭祀の対象になることはあまりありません。

 ヴードゥーの多神崇拝は、欧米のキリスト教社会的な価値観では“邪教”であり、その独特の儀式や呪術は、ながらく、黒魔術と同一視されてきました。また、1960年にフランスから独立したダホメ共和国が西洋式の近代国家建設を目指して伝統文化を軽視したことに加え、1972-90年の社会主義政権時代(この間、1975年にベナン人民共和国に改称)には、ヴォドゥンの信仰と儀礼は“因習”として社会的に大きな圧迫を受けました。

 しかし、民主化後の1992年、伝統文化の再評価が進められると、ベナン国民の間に深く浸透しているヴォドンは国教に指定され、ヴォドゥンの大祭が行われる毎年1月10日は国民の祝日に指定され、現在に至っています。

 なお、ベナンでは、統計上は人口の42.8%がキリスト教徒、24.4%がムスリム、17.3%がヴォドゥンとなっていますが、キリスト教徒やムスリムの中にも、ヴードゥーの信仰を(部分的に)維持し、ヴードゥーの儀式に参加する場合も多いため、実際には、ヴードゥーの“信徒”の実数は統計よりもはるかに多いと推定されています。

 さて、『世界の切手コレクション』11月23日号の「世界の国々」では、ベナンのヴォドゥンについてまとめた長文コラムのほか、旧ダホメ王国の事実上の最後の王・ベハンジン、世界遺産のアボメイの王宮群、国際汚職事件の舞台となった海底油田の切手などもご紹介しております。機会がありましたら、ぜひ、書店などで実物を手に取ってご覧いただけると幸いです。

 なお、「世界の国々」の僕の担当回ですが、ベナンの次は、22日に発売された11月30日号でのセントルシアの特集(2回目)になります。こちらについては、近々、このブログでもご紹介する予定です。


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